祝あけび庵竣工



平成9年3月30日楯山の未来を託した記念すべきイベントが、町長以下関係者のご参列のもとに開催されました。
楯山の各役員の皆様方大変ご苦労様でした。楯山の住民としましては、あけび庵を愛すべき施設として活用していきたいと思います。

この記念すべきイベントにおきまして、我がわがまま苦楽部では、こけら落としの出し物として、
「ふるさと楯山」と題した劇を上演させて頂きました事を光栄に存じ感謝申しあげます。

ここに「ふるさと楯山」のシナリオを写真を交えながら公開します。


あけび庵こけら落としイベント

ふるさと楯山

老人B  今日は、天気いーの。 お! ひばりだ。ひばり。

老人A  どこや どこや。

老人B  あー じさま 年ださげ見ね。 お! びっきだ ビッキ 

老人A  どこや どこ

老人B  じーさま としださげの(老人二人腰をおろす。)

老人B  春だのー 胎蔵山もあおくなってきたの。
     今年もそろそろ田植えの準備しねばねの。

老人A  んだの。・・百姓の生活は、季節といっしょだの。
     (学生服姿の洋之 スポットライトで登場 おら東京さいくだー歌いながら)

洋之   俺は楯山さ生まれて18年。今年晴れて高校卒業だ。
     あれは彼女陽子です。(舞台袖を指差して)
     陽子(手を振って呼ぶ)

陽子   待ってよー。何?こんなとこすんでんの?
     うそ!コンビニどころか店も公衆電話すらないじゃない。
     こんな所で良く生きていけるわね。
     まさか、ドングリとか熊の肉とか食べてるんじゃないでしょうね。

洋之   んだなやの。本当で、何にもねなやの。
     んださげ俺、長男だんども高校卒業したら、こんだ村出て東京さいぐでぃや

陽子   そうよ。こんなとこいたら、時代にとりのこされて
     ジャワ原人みたいになっちゃうわよ。

洋之   ジャ、ジャワ原人て おめ、ちょっと言い過ぎだんねが。

陽子   だって本当じゃない。だからぁー、一緒に東京に行ってぇ
     TVでやってる有名なお店でおいしいもの食べてぇー、
     終末はいろんなテーマパークへ行ったり、
     映画やコンサートに行ったりするの。楽しいわよー。

洋之   楽しんでろの

老人A  さっきから聞いったんども、随分だのや。おめ、なして楯山やだなやー
     俺はこの村さ生まっで85年。こんだいいどごねど思ったんども…。

洋之   ここさ、いだって 仕事ね。仕事見つけだって通勤さ時間かかんでろ。
     給料だって安んでろ

陽子   そうよ。そうよ。

老人A  時間かがんなが いなや
     仕事ねなは、楯山のせいでね。町の責任だ

町長   はい、はい。私は、平田町の町長です。
     突然出てきて申し訳ございませんが、仕事が無いのは、
     町の責任ではなく県の責任でございます。

陽子   いや! 町の責任だわ。仕事だけじゃない。町には、にぎわいが必要よ、
     にぎわいのない町なんか住んでも面白くない、ぱーと明るいにぎわい。
     やっぱし、東京は、んー素敵よ。
     修学旅行で東京に行ったけど、ネオンが明るくて楽しそうだったわ。

老人A  ネオンが明るくてわくわくしたど  おめ、東京さ何しいたなや。

陽子   だいたいねぇ、こんなとこじゃ遊べないじゃない。
     体にカビが生えちゃうわよ。(老人に近寄って)ほら、これカビじゃないの。

老人A  カビど? うるせ! さわっな

陽子  (洋之の後ろに逃げるように隠れる。)

洋之   んだ、東京はいい。にぎわいがある。
     こんたどごさいっど、本当で体さカビ生える。俺、東京さいぐ

陽子   ハーイ 東京へ出発。

老人B  までぃ、までぃ。

老人A  まず、行ぐなとは、言わねんども。ここは、ふるさとだし、住めば都だ。
     パチンコやだってあっぞ。東京よりでっがもしんねぞ。
     ただ、あこがれて行くのはだめだ。行くには、目標をもっていげ。
     俺も東京さ出稼ぎでいたのー、何年間いたけがのー。東京は、住む所でね。

老人B  んだ んだ。

老人A  今東京さ残っている連中は、生活のため、帰ってもこれなぐで
     一生 しがみつく事さ なただげだ。

町長   はい、はい、町長です。
     東京に行くのは結構ですけど平田の人口が減るのは困ります。
     東京で成功して錦の旗をあげて、きれいな嫁さんを連れて帰ってきて下さい。

陽子   あらー 私、洋之の嫁さんになるのよ。

町長   それじゃー 平田町の人口は増えません。お婿さんを迎えなさい。
     役場としては、二人の結婚は認めません。(ふたりを引き離す)
     東京に行くのもいい経験です。平田町と見比べて、平田の良さを再発見し
     て下さい。決して東京で埋もれないで下さいねー。

老人A  まず、自分の力量をここでもためしてみろ。
     ここで通じねば、どごさいたってだめや。

老人B  んーん  楯山の良さは、住んでみねばわがね。
     おめ、若げさげわがねや。
     楯山には、いいどご、いっぺあっぞ。
     春は、山菜、夏は魚、秋にはがににキノコ。

老人A  あげび

老人B  冬には…・・んー  あけび細工もできる。

老人A  あーんだ。今年は、がにいっぺもらたけの。どこでとたなや

老人B  あだりめ、がにぶちや。あー自然がいっぺあて楽しの。自然が豊かだ。
     おめ、わがねなが。自然の良さわがねなが。

洋之   あー それって活用してねば、自然貧乏て言うあんでろ。
     観光資源さ活用して人でもくれば、金なっがしんねんでも開発しねどのー

町長   はい、平田町でも自然の利用方法は考えております。
     そのいい例が十二の滝です。
     楯山には、荒海というすばらしい景観があるということですので
     今後積極的に遊歩道の整備などを考えております。
     私は、公務が忙しいので、このへんで失礼させて頂きます。
     どうかこの平田を愛している私、
     顔の長い私、名前はあえて申し上げません。
     どうか、(陽子に押されて帰る。)

老人A  おーこら そこの若者、
     自然はこの辺では珍しくねけんども楯山の文化おべっだが

洋之   へーえ  楯山さ文化なんがあんなが。文化ー。
     田んぼの肥えの香りはすんでも文化の香りなしねぜー。

老人B  おめしらねなが。親わりの教えね親わりの
     おめ、どごだけ

洋之   石黒誠一の家だんども

老人AB あー まごべが (指差して)

洋之   あー、そういう古臭い言い方やめでくっちゃー。

老人A  由緒あるおしめ神社のいわれとか、源氏の落人や隠れキリシタンの里だとか
     最近では、荒海のそうきちの先祖の金の洞窟とか しらねのが

マドロス (ギターを弾いてマドロス姿でてくる。)
      よー 拍手、拍手。晴れた空、そよぐ風、港出船のどらのね楽し
      (一同注目)

洋之   びっくりしたー、いきなり おめー だれやー

マドロス おめ、しらねなが。この昔の写真みでみっちゃー。
     みだごどねがー。

洋之   あー知ね。見たごどねー。

マドロス 俺は、楯山の初代のスターだ。今で言うアイドルだよ

洋之   へー、そんなアイドルがいっだおんだが

マドロス おめー、ほんとにしらねなが。これなら、どーだ。
     おーお そうきち、こーい。おらだをしらねどや

旅がらす 潮来のいたろう… (潮来姿で登場 ちょっと刀を振り回して踊る)

     昭和の戦後、20年から30年代は、いがったー。
     楯山は若っげなで いっぺだけ。おらっだは、そんどきの大スターだ。
     今のかあちゃんはその時の俺さ、ほれで嫁さきた。
     今の楯山さそれたげの男いっがー
     ( 洋之に近づいて首に刀をあてる。)
     おー、わけのー わがたがー。これが楯山の文化よー。
     わからねーと この刀のさびになってしまうぞ。

洋之   わー わ やめてくっちゃー。こんなー。

マドロス 今、文化の話をしったけんども、これも楯山の文化のひとつだ。
     いやー かがやかしい歴史の1ページだったなー

     (写真を見ながら) いまの区長もいるなー

     俺達のあと、若いもの達が続かない

     最近の夏祭は、昔の村芝居も盆踊りもねし、さみしのー。

旅がらす なー 皆さん寂しくねがー。おめも寂しくねが。

洋之   んー、それもんだのー。そーいえば、去年の夏祭は、わがまま苦楽部が、
     花火をあげだやのー。ほん時、おれも手伝いいたなやのー。
     真っ暗な闇にうかんだ、ナイアガラの滝 きれいだっけなー

マドロス お! 新しい文化だな。

洋之   んだがなー

老人A  今の若い者は、村の中で楽しむ事をしらね。だから、文化がうまれねし、
     みんな村に生きてもつまらなくなる。
     大切な事は、みんながいっしょに何かをやる事で
     みんな同じ村に住んでいると感じる
     人と人とのつながりがあってこそ、村だ。

マドロス そうだ。そうだ。

旅がらす いかにも、いかにもそうろう(みえをきる)

老人B  んだ、んだ。 昔の田植えは、村人総出で協力しあってやったもんだ。
     村人総出で、村のとうちゃんもかあちゃんも若げ嫁さんも子供連れて、
     苗代の苗とたもんだ.

老人A  んだけのー 田植の時 苗なげっど
     すぱね 顔さとんでやー つらうぢ泥だらけなたけのー。

陽子   すぱね? すぱねってなあに。

洋之   どろだ、どろ。

陽子   わー汚い。洋之 東京はきれいよ。
     私みたいにきれいよ(洋之に顔を近ずけて良く見せる)

洋之   じっちゃん。今だば、そんだごどしね。乗用田植え機だ。
     楯山も時代の流れさは逆らわねって事や。
     おらいのおやじ、年とてきたんども一人で農作業できる。
     んださげ、やっぱり東京さいぐなや。

マドロス ちゃちゃーんー。んだ んだ。おめの言う通りだ。
     んださげ、みんな、東京さいぐなやの。
     んだんども、まごべのせがれや、このギター弾いてみねが。
     このギター弾いて村のにぎわい取り戻してみねが?
     俺達は、写真の中に、村の人々の思い出の中に、戻さげ。
     じゃあな、がんばれや(ギターを渡してマドロス去る。)

旅がらす そうそ。むらの賑わいよー(みえをきる )
     (ちょんまげマントなど身に付けさせて)
     おー かっこいー、涙がでてくるじゃないか若者よー。(旅がらす去る)

老人A  若げなや、今は、みんなでやっこどねぐなたさげ、
     村で自分の存在感ねがもしんねの。

洋之   んー。さっきから聞いてっど、昔は、皆でいっしょにやった事があって
     田植えとか、村芝居とか楽しがったんがなー
     んだども、今は時代が変わってしまって何もねぐなたって事が

陽子   もーこの村には、にぎわいはないの、にぎわっていたのは、昔の話。
     こんな村捨てて都会に行きましょう。

洋之   んでものー。

老人B  はい、はい、私は、なかごぎ山の組合長のです。
     村の人たち、みんなで一緒にやる事が、まだあります。
     村の山は、みんなで一緒に管理していごで。
     これも楯山の人、みんなで支えている文化のひとつだ。
     んだがら、このあけび庵もたたなだ。
     みんないっしょ、がんばってきたから、このあけび庵もたたんだぞ。
     若げなおべでおげよ
     そうすっど、おめのとうちゃん、かあちゃん、じじ、ばば、
     御先祖様の苦労もわがっぞ。少しは楯山の人さ、なれっがもしんね。
     おめも、根がりさ、でてみねが。

洋之   ねがりー、蜂からささったりまむしの首かたりすんなんねー

老人AB よくおびったちゃ。

老人B  そいうあぶねこともあんども、ねがりは、楽しぞ。
     部落のピクニックだのほんでも、機械だけだして、
     人夫賃にすんのは、そろそろ止めっがの。

老人A  楯山、皆でやれることあんなやの。ねあんば、作ねばだめだなや
     昔は、田植えとか村芝居とか、皆でやったことがあった。
     みんなで、なにかやてっみでな。
     なにが ねがのー。うーん。皆さん何がねがのー

     おしめ様登場  

洋之   あっオーロラ輝子だ、

陽子   わー。素敵。きれい。

おしめ様 ちがいます、私はあそこにある神社(指差す)おしめ神社の御神体、
     おしめです。

老人AB ハ ハー (地面にひれふす)
     皆のもの頭が高い。ひかえおろー ひかえおろー。

おしめ様 私はただの村人に、すぎませんでしたけども、夫が、戦にいって
     帰ってこなくても、村の皆さんにささえられて、めくらになっても、
     待ちつづけることが出来ました。私が神社にまつられているのは、皆様の
     御先祖様が、私の一途な心とむらびと皆で、支えることが大切なことだと
     思って、後世に伝えたいために、私を御神体に祭り上げたのだと思います
     どうか皆さん、お互いささえあって、楽しく、仲良く生きて下さい。
     私を祭り上げた御先祖さまの子孫です。
     仲良く、楽しく、生きていって下さい。
     川のわきに、皆で桜植えみてください。じいさん、ばあさん、
     桜も山桜で、おいしい実のなる樹を植えて下さい。
     桜の他にグミとか桑のみ、しらくち、あけびも植えてください。
     きっと子供たちも喜んで遊ぶでしょう。
     私は、神社で皆様のご報告をお待ちしております。
     子々孫々、楯山がなくならないように、御先祖様の気持ちを忘れないように祈っております。

      (会場から去るちょっと前 イメージを変え 方言で)

     あ!そっそ 忘っでだけ、今年のたいまつの初詣、ありがどの。
     待っていさっげ、また頼むのー。しばの。

老人A  はー 夢だがな。ちょっとボケだがなー。
     んだ、んだ。川の脇さ、むらの人みんなで 桜うえよぜ。
     これから、何年かがっがしんねんでも。豊令橋からおしめ神社の麓まで
     何年かっがしんねんでも。俺は死んでしまうかもしんねんでも

老人B  んだ、おめ一番年くったさげ、つぎだばおめの番だぜ。

老人A  ほんだな、どうでもい
     桜を植えっぜ。おしめさまのおつげじゃー。
     じっじゃん、ばっちゃん、いい苗木提供してくんねがの。
     死んでも樹はのこっぞ。孫の代々までのこっぞ、

洋之   (衣装をつけギターを弾く、)チャラーン。

陽子   何してるの

洋之   俺が、にぎわいをとりもどせるなら…・・
     みんながにぎわいを取り戻すのに、手伝ってくれるのなら……
     俺一人では、この楯山に、にぎわいを取り戻せない。
     けれど、皆でやれば、この村ににぎわいを取り戻して東京にも負けない
     すばらしいところに出来るのかもしれない

     やるぞー!

全員   (若者になって集合)やるぞー 洋之がんばろー

洋之   俺は死ぬまでこの楯山に生きていく
     陽子、俺と一緒にこの村に残ってくれー

陽子   洋之・洋之どうしたの。どうしたの。東京には、行かないの。

洋之   陽子、俺と一緒にこの村に残ってくれー。
     俺がこの村をいぐすっさげー

  

それでは、チャン チャン チャン

おさわがせしました チャン チャン チャン

……

…・・

提供は楯山わがまま苦楽部でした。