山中における救急法
2008年1月26日
飯豊朝日山岳遭難対策委員会山岳救助隊長 井上邦彦

=通常の救急法とは異なる条件を踏まえること!=

【完全固定して静かに搬送することはできない】
ヘリコプターは極めて有効であるが、同時に使用条件が限定されている
→航空基地の天候、現場の天候、雲がある場合は上空から入るのが原則、沢を遡るのは高度な熟練とリスクが必要、性能によって異なる手法、樹林帯の危険性
パイロットを含む航空隊と信頼関係はあるか
→航空隊が望むことを言われなくても理解し行動する地上部隊

【可能な限り本人の自力を活用する】
難路において長時間人間を担ぐことは、体力的に至難の業である
始めに担いで、担ぐ人が動けなくなったから遭難者に歩いてもらう→論外である
症状の悪化は最小限に食い止める努力はするが、効率とのバランスに配慮すること

【可動できる固定法を使う】
骨折は2箇所固定
傷は圧迫した状態で長時間可動でき、濡れにも対応できること

【入院後の措置を考慮する】
傷を処置しやすくする
感染を回避する

【二次被害を防ぐ】
危険地帯からの脱出を優先させる
救助者感染の予防→プラスチック手袋+軍手
テーピングテープの危険性
ビニールテープの特性→濡れに強く、簡単に剥がれ、伸縮性がある、かぶれない
パンストの利用→全身をカバーできる伸縮包帯

【遭難者の精神的支援を怠るな】
遭難者を責めるのは救助隊の役割ではない
苦しく辛いのは遭難者、明るく楽しく救助する
常識のない登山者には、マスコミと接する直前に指導する
呆れる遭難事案→偉ぶる遭難者
私の嬉しいこと→怪我が直り、また登りに来ました

【無責任なマスコミ、責任回避を優先させる行政機関、すがり付く家族、高慢な山岳団体】
自分が偉いと勘違いしているマスコミ、始めに結論ありきのマスコミ→対応者を決めておく
マスコミや上部機関の反応に敏感すぎる警察→警察に助言できる信頼関係がポイント
救助計画を、理論的に整理し毅然として説明する責務→家族の理解→捜索打ち切りのポイント
実力に裏打ちされた行動計画→冷静な危険性の判断
現場に血縁者や友人を連れて行くな→適切な判断が崩れやすい
昔取った杵柄→邪魔になるだけ

【遺体の搬送】
顔を隠す→三角巾が良い
遺体であることを念頭からなくす→荷物である
マスコミ・家族と対面する直前に雰囲気を一変させる

背負い搬送の実際

【負傷の多くは背負い搬送で対応する】
狭く急峻な登山道を複数人で搬送することは極めて困難である
牽引方法は寒くて痛い→体験してみれば分かる

【負傷者・搬送者ともに苦痛のない搬送】
眠ってしまった遭難者→女性遭難者のトイレ
あるものだけで作る搬送用具
太腿の処理がポイント→長時間可能か
横のサイズに配慮→搬送中にトラブル発生の原因
様々なカッパ搬送法→使用するザックによって採用
画期的なガムテープ搬送法→ザックと腰の距離がポイント
理論が分かれば自由に応用→ハーネスを着けたまま固定する

【流れるような搬送】
搬送者は負傷者を降ろさずに交替する→両側から抱える
しっかりとした杖→状況に応じて支援者が持つ
日帰りでも大き目のザックを使用する習慣→ダブルザック
足場を指示する者
浮石や支障木を除去する者→ルート工作
次に担ぐ者、確保する者→自主的に動けるか、必要によってリーダーが指示
危険度・体力の限界域での行動→隊員の同意
現場に居合わせた協力者の取扱

【搬送者にストレスを与えない確保】
ロープを止めることのない連続した確保→声を出せ
立木に直接巻きつける
柴にスリングでグリップビレイ
スタンディングアクスビレイ
スワミベルト→後ろからの確保

【現場への急行】
遭難者が待つ時間は果てしなく長く感じる
ヘリからの降下
履物を替える
急行隊と二次隊・三次隊