山のことあれこれ 117

【 2017年02月23日/飯豊連峰を囲む三県合同遭難対策会議/井上邦彦報告 】

 今年の合同会議は関川村村民会館で開催された。平田関川村長と本田村上警察署長の挨拶の後、新潟県警本部地域課の玉木大二朗氏が「新潟県内の山岳遭難発生状況と過去の事例について」講演が行われたので、その時のメモを掲載する。
・ 平成27年以後、スキー場におけるコース外滑降の事故も山岳遭難に分類されることとなった。
・ 様態別では道迷いが最も多くなっているが、転ぶことにより発生する滑落・転落・転倒を合わせると、こちらの方が多くなる。
・ 過去の発生件数は、バブルが弾けた時期から中高年層の登山者が多くなり、事故も増加している。
・ 夜間の藪の中では、ライトが水平方向に照らすことになるのでたいへん見えにくくなる。
・ 30年前から「後遺症なき社会復帰」を目指し適切な救助方法が求められるようになった。FA(ファーストエイド)が重要である。
・ 最近は外国籍者のBC(バックカントリー)事故が増加している。しかし彼らは登山届を提出する習慣がない。
・ 欧州では登山保険が充実しており、国外での事故であってもヘリによる救助が行われている。
・ 県境付近における山岳救助も課題である。北アルプスでは県を跨いで同じ周波数の業務無線を山小屋も含めて活用している。消防や警察はアマハムの活用が難しく、今後は業務用無線の導入も必要ではないか。
・ 警察は2~3年で異動するので、後継者の育成が追いつかない。また地区遭対は高齢化が進行している。
・ 山の技術は教えることができるが、山の体力は自分で登って作ってもらうしかない。
 講演に続いて、村上警察署・喜多方地方広域圏消防本部・飯豊朝日山岳遭難対策委員会から事例発表があった。この中で飯豊朝日の齋藤弥輔中央班長からの報告のメモは下記の通りであった。
・ 梅花皮小屋と御西小屋の管理はNPO法人飯豊朝日を愛する会が受託しており、常に登山者の移動情報を交換している。私が御西小屋の管理をしていた時、小屋で昼食休憩をして梅花皮小屋に泊まると出発した登山者が梅花皮小屋に到着せず、その後に通過して梅花皮小屋に着いた登山者は「誰も追い抜いていない」と話したので、梅花皮小屋の管理人が小国警察署に連絡し、翌日捜索に向かった私達が滑落していた彼を発見したものである。
 その他では私が発言し、現在各組織ばらばらの様式で配布されている1年間の遭難事案について、統一した様式を用いて事案の有無も含めたデータを作成することになった。
 また次回の合同会議は喜多方市で行うこととなった。
 会議終了後は会場を高瀬温泉あらかわ荘に移した。あらかわ荘は光兎山をテーマにした旅館で館内の至る所に可愛らしいウサギが配置されていた。一汗流した後の懇親会は会議だけでは得ることのできない大事な情報交換の場となった。
 翌朝は飯豊の山の案内人の会の皆さん達と一緒に、藤島玄氏所蔵の書籍が保管展示されている廃校に行き、平田大六さんから経緯や保管されている書籍の説明を受けた。
開会の挨拶
玉木大二朗氏の講演
齋藤弥輔氏の報告
懇親会の乾杯発声も弥輔氏でした
藤島玄氏の書籍に囲まれて

おわり