山のことあれこれ 122

【 2017年06月24日/飯豊連峰山小屋サミット/井上邦彦報告 】

 昨年に引き続いて、飯豊連峰で山小屋の維持管理を行っている面々が集まり、情報を交換し遭難事案発生時の連携強化などを話し合った。今回は特に下記の点が印象に残った。
① 今年は雪が多く転滑落に充分な注意が必要。水場の露出は相当に遅れている。
② 遅い時刻に山小屋に到着する登山者が多くなっており、遭難の危険性が心配だし小屋内の位置確保が難しくなっている。
③ バラバラに行動しパーティの体をなしていない登山グループがおり、遭難の危険性が高い。

真面目な話し合い
今年の飯豊連峰は、昨年並の感覚で入山すると大変なことになる
会議の後は打ち解けた懇親会
山小屋サミット速記録

・期日 2017年6月24日(土)17:00~
・場所 小国町天狗平ロッジ
・出席者 
 飯豊胎内の会(亀山東剛、笹川徹)、飯豊AGC(平野茂夫、渡部秀則、金子益雄)、大日杉小屋管理協力会(伊藤吉郎)、杁差小屋管理ボランティア(高沢鉄博、渡辺康人)、小国山岳会(井上邦彦、齋藤弥輔、羽田義明、小関芳寛、田巻和敏、髙橋清徳)

【齋藤(進行)】 
 昨年大日杉小屋で開催し、有意義と確認されたので今年も開催の運びになった。各小屋では準備が始まっているが、いろんな問題点を出し合いながら、今夏も連携を取り合い、協力をして小屋の管理をやっていきたい。
【井上(挨拶)】
 はるばるお出で頂きありがとうございます。ちょうど今小国町の北部小中学校で「ブナ林の狩人の会:マタギサミット」が開催されています。私も途中から抜け出してこちらに来ました。その関係で関が欠席しています。
 まず一部はシラフで話しをしていただき、二部で本音を出していただきたいと思います。
【亀山】
 飯豊胎内の会は30名の会員がいます。門内小屋と頼母木小屋の管理を胎内市から受託し、1週間の交替で入ります。7月1日から8月末日までは常駐、以後10月中旬までは土日祝に管理人が入る契約である。
 門内小屋は一昨年に屋根が破損し、昨年応急処置を行ったが、雨漏りが2箇所ある。今年その工事を行う予定であったが、今春に窓ガラスと玄関のドアが破損していたので、急遽屋根ではなく窓とドアの修繕工事を行うことになった。7月20日頃から工事を行う計画だが、宿泊者を受け入れながらの工事になる
 石室(旧門内小屋)の屋根が昨年壊れ、今年は半壊の状況となった。登山道の足元に屋根があるので防護柵の設置を関係機関にお願いしている。石室は保全資材の保管場所であり、改築が望まれる。
 今日、頼母木小屋まで水を引くことができた。梅花皮小屋の引水を参考にして直接引水管を清水に差し込んでおいたのが功を奏した。
 奥胎内ヒュッテから足の松尾根登山口までの交通規制は6月26日から解除され、7月1日から乗り合いタクシーが再開される。
 ハクサンイチゲは先日のアラレで折られたがその後に回復した。地神北峰から頼母木山は盛り、杁差岳から大石山は終わっている。ヒメサユリが咲き始めた。
【渡部】
 本山小屋は7月1日から8月末まで常駐し、その後は10月12日(体育の日)まで金土日祝の管理となる。私個人は6月27日から入る予定だ。
 本山小屋の水場は7月末まで無理のようだ。切合小屋の水も止まっており、取水口が厚い雪渓で覆われている。大日杉から登る時は御坪の先で水を組んできて欲しい。弥平四郎から登る場合や川入から登る場合も、三国小屋の手前で水をくんできて欲しい。
 今年は国外からの登山者のために洋式トイレの設置工事を行う。冬は和式、夏は和式と洋式となる。
 6月30日から7月4日までの予定で本山小屋・三国小屋・切合小屋のトイレのし尿汲み取り作業を行う。
 山の工事は採算が合わないと敬遠する業者が多く、業者がなかなか決まらず、施工時期のタイミングがうまくいかない(「こちらも落札者が決まらないで困る」との声あり)。
 なお6月30日に管理資材の空輸を行う予定だ。
【金子】
 6月4-5日と17-18日に登ってきた。三国小屋の水場(剣ヶ峰)は水が出ているものの下るルートに雪が入り付いており危険な状態だ。剣ヶ峰の登山道自体には雪はない。小屋はキレイな状態のまま使われており、ありがたかった。
【羽田】
 6月12-14日に大日杉から御西小屋の管理資材空輸のため登ってきた。今年は冬の風向きのせいなのか例年と違った雪の付き方になっている。草履塚で滑落している人がいた。御西小屋の水場は何時露出するか分からない。縦走する人は汲める所で汲んでおく必要がある。
 御西小屋は7月7日から8月末まで常駐するが9月中旬までになるかと思う。10月は金土日になる。
【高沢】
 杁差小屋は管理人常駐をしていない。トイレは臭いもなく、処理していないが増えも減りもしない。過去に一度も汲み取りをしていない。
 玄関のドアが破損している。交換部品を探すことができたので、直す方向で検討している。水場はまだ雪に覆われている。
 1階のメッセージボードに「不要な水を置いていってください」と書いておいたら、登るたびに2つのバケツに水が満タンになっており、清掃作業が助かっている。
 足の松尾根を登ってくる登山者は良いが、権内尾根を登ってくる登山者の到着時刻が遅い。16時や17時は当たり前でもっと遅い人もおり、問題だ。
 なお、稲葉さん達が昨日から登山道の刈払い作業に行っているので、今回はこの会に参加できず残念がっていた。
【伊藤】
 4月から5月にかけての低温のせいか、大日杉小屋ルートは残雪が多い。5月3週の土日でやっと大日杉小屋を開けた。
 長之助清水は使用できる。地蔵清水は水源の残雪に排便をする登山者がおり衛生上問題がある。目洗清水は7月下旬になる。
 御坪と切合小屋の間の残雪が多く、御沢コースと共にアイゼンやピッケルが必要だ。目洗清水と御坪の間の刈払い作業を明日行う予定だ。
 大日杉小屋は7月1日から8月末まで常駐し、11月始めに雪囲いを行う予定だ。
【小関】
 7月7日から8月末までは常駐し、その後は予約制になる。今年は水の便が悪く苦労したが、ようやく改善した。
 天狗平ロッジの管理人を始めて4年目になるが、客層がかわり、釣り人やバイクツーリングの利用が増えてきた。
【平野】
 三国小屋・切合小屋・本山小屋のトイレ汲み取りは7月5日までに終わらせたい。祓川山荘建て替えの予算が取れないでいるらしい。足の松尾根の登山者カウンターは先日設置されたというが、川入も間もなくだと思う。
【井上】
 梅花皮小屋は6月30日に関が入り、そのまま常駐体制となる。今年の梅花皮小屋は早い時期から水が出た。また冬期出入口を新設してからは春の管理が良くなった。
 これまで合同保全作業を行った所は良くなっているが、玄山道分岐付近のみ浸食が治まっていないので、今年は御西小屋に保全資材を空輸した。
【金子】
 弥平四郎から登ってくるコース、三国岳側の疣岩山直下にはまだ残雪が張り付いておりロープを垂らさないと通過できない。種蒔山と切合小屋の間にも残雪があり滑落や視界のない時の道迷いに注意する必要がある。
【亀山】
 去年なみの感覚で入山すると大変なことになる。
【渡部】
 私の所にも問い合わせが来るが、「今年は残雪が多い。とりあえずアイゼンは持ってきて欲しい」と言っている。特に種蒔山から切合小屋が結構危ない。
 気になっているのは、山小屋に登山者が到着する時刻がだんだん遅くなっていることだ。いろんな意味で危険だし、先に到着している登山者に迷惑がかかる。早く来いと促さないと駄目だね。管理人も困る。1人ぐらいならともかく、みんなの配置が終わった所に、5~6人も来ては一塊にはできずパーティをバラすしかない。
【齋藤】
 平気で20時頃に到着し、朝は10時頃まで寝ていて11時に出発していく登山者がいる。都会の生活時間をそのまま持ち込んでいる登山者も出てきている。
【伊藤】
 11時30分頃に大日杉から登り始める登山者もいる。地蔵岳15時、これでは切合小屋につくのは18時~19時になってしまう。
【笹川】
 パーティのようでパーティの機能がない登山者がいる。バラバラに行動して、一人用テントで寝ている。だから門内小屋の広くないテント場がさらに狭くなる。同行者がいなくなっても分からない。梶川尾根を登りふらふらになって門内小屋に到着する年配者が少なくない。涼しいうちに登ってもらいたい。
【齋藤】
 湯沢峰で13時にすれ違った登山者は8時に飯豊山荘を出発したと言っていた。それで梅花皮小屋まで行くというのだから呆れる。その高齢者は結局、本山小屋近くで救助ヘリにピックアップされた。
 石転ビ沢は今日も落石があった、例年より多いので注意して欲しい。またダイグラ尾根取付き桧山沢吊橋はワイヤーを張り替えるため今年は踏み板を掛けない。踏み板がないと空中ブランコ状態なので吊橋は絶対に渡れない。ダイグラ尾根を下らないように、各小屋で張り紙をし、声掛けをして頂きたい。
 稜線の小屋で、現在水場が利用できるのは梅花皮小屋と頼母木小屋だけということだ。
【渡部】
 今年の山は水がない、雪が多い(全員うなずく)。
【齋藤】
 来年は新潟担当で同じ時期に集まりましょう。

おわり