山のことあれこれ 53

6月25日(土)
鶴岡市で「平成23年度朝日山地森林生態系保護地域巡視員会議(春季)」が開催された。その主な内容はと質疑は下記の通りである。
* 保護地域の標識について、今後は麻縄で結びつけることとし、従前の鉄杭は撤去する。
* 朝日山地森林生態系保護地域管理計画書が一部変更された。
 @ 保存地区と保全利用地区の両者に「生物多様性の実態と動態を把握するため各種モニタリング調査を実施」を加えた。
 A 保全利用地区に「スノーモービルノ乗り入れは自粛させる」を加えた。この点について「吊り橋の雪下ろしなど、林道にスノーモービルを乗り入れる場合など」は対象外であることが確認された。
 B 常設の管理委員会の中に「モニタリング調査」を加えた。
* モニタリング調査の報告では、「山菜を採取している方などを対象に、採取山菜の種類・量、採取時期・場所、産出傾向等について調査」について、質疑があった。
* 渓流魚調査について、2010年度は天候による沢の濁りのため、捕獲個体数が大幅に少なかったが、個体の大きさについては変化がみられないとのことであった。
* 保護地域における人工林から天然林への誘導手法調査について、説明があった。
* 「保護地域としての生物種リストは未整備・・・新たに生物種リストの整備」と「動態把握」の説明があった。ここでは「大朝日岳から西朝日岳への登山道周辺における雪田草原及びその周辺の草木群落」の調査となっていたので、同様に深刻な「以東岳から狐穴小屋の間の乾性植生及び地形の浸食」を知りたいので、必要な空中写真の提供をお願いしたところ、検討してみるとの回答であった。筆者は、前者が対応されつつあるのに対して、後者は全く放置されており、浸食が著しく進行している可能性を感じており、その実態把握と対応策を検討することは喫緊の課題であると考えている。朝日連峰保全協議会における三方境での実証試験は、その課題へのアプローチであるととらえている。
* 環境省羽黒自然保護官事務所から「以東岳直登ルートと金玉水の基本設計」について説明があった。これに対し「以東岳直下の浸食は規模が大きいので、説明のような手法ではなく岩石を空輸して対応すべき」との質疑があり、実地調査の結果の設計である旨の回答があった。筆者は、これまで朝日連峰において行われてきた「岩石を空輸して歩道をつくること」は朝日連峰の持っている原始性を壊すものであり、域外から現地への修復材料持ち込みはできる限り行わない方が良いと考えている。持ち込んだ資材で地形を整えるのではなく、現地の材料で浸食をくい止める方法が適していると思う。

 閉会後、大井沢の前田武さんが「大井沢のマタギ」について講演をされた。以下に私のメモを掲載するが、断片的であり、正確でない部分もありうることをお許しいただきたい。

 私達はマタギという言葉は使わず、狩人と言っている。熊は腕くらい太い枝も折るが、太いものは牙で穴を空けてから折る。熊は命がけだから、鉄砲を持っているからと思っては駄目で、真剣勝負だ。この画像の熊は150kg、最近は1.5mを越える大きな熊が穫れるようになった。
雪上に残された熊の足跡で、その大きさを推測するが、足跡が5寸あれば5尺の熊である。
 熊は芽が膨らんだ樹(ブナ)に登るが、黄緑ではなく茶色っぽい樹に登る。これは食べごたえのある花芽を好むからである。また熊は迷彩色になる松峰にいることが多い。
 熊棚の材料である枝に葉がついている場合は、前年の9月に作られたものであり、10月に作られたものには葉がついていない。
 山に入る時は、頑丈な杖を用いる(小国五味沢では杖はなく、小玉川では用いる。山の西斜面と東斜面の違いが関係しているかも知れないと、筆者は想像している)。
 夏の熊猟は愚の骨頂だ。視界がないので、猟師仲間を撃ってしまう危険がある。熊を自分の目で確かめることのできる時期が良い。
 私(前田)は中学を卒業して熊狩りの仲間に入ったが、当時は1週間歩いても、熊の足跡を見つけることができなかった。皮カムリした時(初めてグループで成果があった時)も、1.2m程の小さい熊だった。最近は日常的に熊が出てくる。知り合いの家では、何度も茶の間から熊を見かけた。今は熊が増え過ぎていると感じている。熊に食いつかれてから駆除をしろと言うのだろうか。
 山を歩いていて、表層雪崩で倒れた樹をみると、何年後かに出るカノコやナメコに思いを馳せる。それは大井沢の自然があるからだ。
合田計画部長の挨拶
出席者の面々
山形県山岳連盟の方々
前田さんの講演が始まりました
最初に画像を使って説明します
皮カムリも儀式です
説明する前田さん
皆さん、真剣に聞き入っています
昔では考えられない大物が、最近では珍しくありません