山のことあれこれ 57

2011年12月17日(土)-18日(日)
 福島県裏磐梯で、平成23年度飯豊連峰保全連絡会幹事会が開催された。翌日は民宿桧原で技術部会準備会が開催された。その中で出された課題は次の通り。
≪飯豊連峰保全連絡会≫
【補修が必要な登山道】
・駒形山と飯豊山の東斜面が豪雨により大きな石下の侵食が進んでいる。これに対処するには、測量・設計を行った上で対応を行うべきで、24年度の事業としては難しい。
・頼母木山周辺の登山道については、荒廃の程度がまだ深刻には至っていないので、大人数ではなく少人数で対応策を検討する。
・御坪上部ダケカンバ林内の侵食が進行している。木ダム等で対応するのが良いが、材料の入手に課題がある。
・24年度は丸森尾根の木ダム補修と梶川尾根の仕上げを行うことを検討する。
【その他の課題】
・大日杉ルート最上部の雪渓トラバースで6月23日に道を失った登山者の件が報告された。
・バイオトイレの自転車ペダル破損の修繕について課題が報告された。
・梅花皮沢梶川出合の左岸崩壊が進み、今年も登山道がなくなり、新しい巻き道を余儀なくされた。
≪技術部会準備会≫
【モニタリング結果の考察】
・全体として著しい効果を上げているが、課題も存在している。
・草原において従来行われてきた溝を掘って排水を行う工法は、草原に出る部分の侵食や草原に拡散された土砂の問題がある。段差が生じる場合は水叩き石を配置する等の工夫が必要である。また、溝を掘らずに登山道にダムを作ることによって水だけを排出させ土砂はそのまま堆積させることが有効である。
・周囲の植生に接している所は、種の供給があり植生回復が早いが、裸地が広い場合は蒔種をしないと回復がなかなか進まない。
・石ダムの効果は明らかであるが、これまでの活動の結果、材料を確保することが困難になって来ている。
・これまで朝日連峰で行って来た椰子繊維を間詰め等に使う方法は有効である。また椰子繊維を椰子土嚢袋に入れると、中に土砂が浸潤して石の替わりとして使用も可能である。材料調達が難しい所ではかなり使い道があると考えられる。
・歩行路の固定については、登りと降りの違いや登山者の歩幅の違い等から難しい。岩にペンキで印をつける方法が一般的であるが、地面に緑の細いロープを這わせることも一方法として検討材料になる。
・土を積めた麻製土嚢は経年によって消失するが、小石を詰めた場合は土嚢が消失しても石ダムとして機能している。
・草原と登山道に段差を生じている場所で緑化ネットを張る場合、これまでのように端末が草原を覆う方法では、ネットの下に空間が生じ、相当早くネットが消失する。段差の抉られている中にネットを押し込んで地面に密着させる方法が良い。
・水が通る水道(みずみち)は湿度があり種の供給も行われやすいので、他の場所に比べて植生の回復は早い。
・池塘を復元させるために掘り出した土砂に植物が含まれている場合、その植物は別の場所でも容易に根付いていた。
・標高差のある場所では直線でなく曲りを使うことによって侵食しにくい登山道となる。通常の道刈りで蛇行の工夫は可能か?
・登山道のルート付け替えは現在の道路から1m程度しか動かせない。従って旧道と新道の間の間隔が不十分となることが多い。
・同じような環境下においても、傾斜の大小によって求められる工法が異なる。
・一度の施工で完成するのではなく、長い期間のメンテナンスが必要である。この時、適正な工法と法的な課題を把握していないと、逆効果となる恐れもある。
・木ダムは細い枝と枯葉が間詰めの重要な要素になって効果を発揮していた。一方、滝壷の中に木ダムを作るのは水勢を殺す効果が少なく、狭まっている所に作るのが良い。また石ダムと同じく、ダムの間隔に配慮することによってより良い効果が期待できる。
・木ダムの材料である枝の変形した形状を利用することにより、アーチ型や水衝型など工夫すべきである。むやみに作ると侵食を促進する場合がある。
・小雨の場合と大雨の場合では水の動きが異なることを理解する必要がある。
・植物が育つためには、石の間に土砂が安定して溜まっていることが必要である。
・施工したら必ず撮影し、同じ場所を通る都度に撮影して比較することが大事である。さらに大水が出ている時の画像は参考になる。
・侵食に対しては、上部から押えて行くのが基本である。上部から土砂の供給が続いていると植物は発芽できない。

幹事会にて

2011年12月10日(土)
 小国町の民宿ふもとにおいて、平成23年度朝日連峰保全協議会幹事会が開催された。議題は23年度の活動報告と24年度の活動計画である。また大朝日岳を中心に食害が発生しているマツノクロホシハバチについても報告がなされた。
 施工現場において保全作業の石がなくなりつつあることに対し、土嚢袋に入れたヤシ繊維が砂を含んで石の役目を果たすことが報告され、ヤシ繊維の積極的な活用方法が話題となった。ヤシ繊維を貼りつけた箇所では植物は発芽しないが、ヤシ繊維をダム作りに使用し、土砂が堆積した所では植物の生育が見られることから、応用範囲は広いようである。
 また施工して数年後に爆発的に植物が生育する原因については、施工により植物が発芽しても冬の凍上現象(霜柱)によって根が切断されて、翌年にはなくなること。それが数回繰り返されているうちに、凍上現象に耐えて生き残った植物が完全に根付くという考え方が披露された。

熱心に打ち合わせる幹事の方々
夜は懇親を深めました