山のことあれこれ 82

2013年12月14日(土)
 大雪の中、西川町大井沢橋本荘で「平成25年度朝日連峰保全協議会幹事会」が開催された。今回の参加者は各幹事と事務局の他に、㈱復建技術コンサルタント、㈱ニュージェック、山形県みどり自然課、東北地方環境事務所の出席であった。
 渋谷代表の挨拶の後に、新しく幹事になった佐藤さんが挨拶した。今年度の活動報告は、合同保全事業(花山幹事)、各団体の活動、朝日主稜線道標整備(環境省)、登山者カウンター(環境省)、植生モニタリング(ニュージェック)であった。26年度の活動予定は、第6回会合を5月27日(火)大江町、合同保全事業を9月6日(土)-7日(日)以東岳直登コースとした。なお技術講習会は技術部会で内容と日程を検討することとした。また他団体より保全資材提供の打診があったので受入れを前提に詳細を詰めることとした。
 議題3は、みどり自然課から以東岳避難小屋の状況と今後の対応について報告と提議があり、重大事項として意見の交換に時間をかけた。次に復建技術コンサルタントから以東岳直登ルート下部測量設計について説明があった。これによると「巨石が多く、既に洗掘が激しく進んでおり、分散排水工の施工ができる個所は少ない。土留め等の工法は、土嚢および粗朶による方法を基本とする。勾配がきつく安定性が確保できない区間はアンカー(鉄筋)で補強。登山道の付け替えは谷側を基本とする。」とし、土嚢に詰める資材は大鳥池周辺で調達するとのことであった。

会議後の懇親会にて

【道標設置工事】
 設置箇所:以東岳・中先峰・狐穴小屋分岐・三方境・寒江山・竜門山分岐・西朝日岳・大朝日小屋分岐・平岩山分岐・針生平(計10個所)

三方境
中先峰 以東岳

【以東岳避難小屋について】
 12月14日西川町大井沢で開催された「平成25年度朝日連峰保全協議会幹事会」の席上、山形県環境エネルギー部みどり自然課から「以東岳避難小屋の状況、今後の対応」について議題提議がありました。
  それによると、
 「今春に外壁が破損した以東岳避難小屋(木造2階立)は、平成元年に建てられたものです。その後平成13年にトイレが火災にあい、外壁を取り替えていますが、この時の工事は外壁のみでは柱はそのまま使用しています。
 今秋、損傷した外壁を塞いで応急対応をしましたが、土台や柱の腐食が著しく、強風等による倒壊の可能性があります。そのため管理を支度している鶴岡市に使用の中止を通知しています。腐食が酷いため補強は難しい状況にあるので、来年度中に取り壊したいと考えていますが、それにも相当の費用が掛かることもあり、現在対応を検討中です。なお緊急時のことを考慮して施錠はしていない」
 とのことでした。
 なお2000年代前半の三位一体改革の時に、国立公園内の施設整備は全般に渡り環境省補助金は廃止され、公園の保護及び利用上重要な施設整備は環境省が行うことになりました。
 自然公園法ではもともと「国立公園事業は国が執行する」ことになっていましたが、同時に「地方公共団体は国立公園事業の一部を執行することができる(認可を受ければ民間も執行可能)」とも記載されており、三位一体改革の前は環境省の補助金を受けて都道府県が建設していました。法の改正後、都道府県は避難小屋の維持補修は行っていますが、建て替えは行っていないのが現状です。
 一方、環境省が老朽化した避難小屋の建て替えを行ったのは全国でも2006年に建設された平標避難小屋と今年建設された羊蹄山避難小屋の2軒だけのようです。
 環境省東北地方環境事務所からは「環境省が直轄で避難小屋を建設する場合、緊急避難が前提なので30㎡が上限となる。特別な事情があっても60㎡以上は作れない。建設後に毎年の維持管理経費を支出するのは難しい」との指摘がありました。
 以東岳避難小屋は朝日連峰の主稜線では最も小さい小屋ですが、別棟のトイレを除いて1階が30㎡、2階と合わせて60㎡ですから、基本的には現在の半分規模になります。
 これを受け、幹事からは「今回の事案は、同様に山形県が設置している国立公園内の全ての避難小屋に共通の問題である。山小屋の耐用年数は概ね20年であり、5年後には大朝日小屋が同じ問題に直面する」等の発言が相次ぎました。
 私が登山を始めた頃、梅花皮小屋は無人でした。当時の山小屋は暗く汚く、よほどの悪天候でもない限りは入りたくないしろものでした。トイレに入ると、し尿が便槽から溢れ、石を2個置いて、そこに足を乗せて用を足していました。居室の土間はトイレから侵入してきた蛆によって白く埋め尽くされていました。週末などに小屋に行き、掃除をしてきても、次回に登るともとの汚い小屋に戻っていました。ですから、テントに泊まることはごく自然なことでしたし、このような状態では、幕営を禁止する事自体が無理であると考えました。しかし、皆がテントを張った跡は、高山植物が裸地化し、ゴミが散乱していました。
 そこで、私達は山小屋に管理人を配置し、小屋を綺麗に保つと共に、管理の行き届く小屋周辺以外はテントを張らないように呼びかけました。 山小屋や登山道を放置していてはいけない。少なくとも最低限の管理はされなければならないと考えたのです。 といっても、採算がまったくあわない山小屋に詰めてくれる人はいません。まずは自分達が詰めました。 仕事をしているので、小屋から雪渓を走って下り、直接出勤することも珍しくありませんでした。
 現在、朝日連峰の主稜線には梅花皮小屋と同様に山形県が建設維持管理している避難小屋があり、夏期は管理人が常駐し清潔で快適な山小屋を登山者に提供しています。
 現在、朝日連峰主稜線では幕営を禁止しています。朝日連峰は縦走型の山塊であり、稜線での宿泊がないと登山は大変に難しい山です。それでは営業小屋を建設すれば良いのかという事になりますが、環境省が設置した登山者カウンターによると、昨年概ね110日(7月11日-11月5日)、日暮沢・泡滝・朝日鉱泉・古寺鉱泉といった主な登山口の総計で約7千人に過ぎません。従って採算は全く成立しないということになります。
 今後、どのように朝日連峰を維持管理していくか、関係機関・団体や利用者が真剣に協議を重ねてより良い方策を模索して行くことが迫られています。

おわり