☆ Only One ☆
〜1週間前〜
「ごめん!大晦日会えそうにない・・・」
年末間際の慌しい街角の早朝のコーヒーショップで
彼が申し訳なさそうに切り出した。
仕事がたて込んでいたことは知っていたから
彼がそれを言い出すことは予測出来ていた。
(今日だって、仕事に行く前のほんの僅かな時間に
こうして仕事場の近くでコーヒーを飲む間だけの逢瀬だもん・・・。)
だけど実際彼の声で告げられてしまうと、やっぱり寂しくて、
隠してるつもりの心の動揺が、ほんの少し零れ出すのがわかった。
出来るだけそれを彼に悟られないようにと、
ゆっくりとコーヒーカップを口元に寄せた。
「ほんと、ごめんな・・・」
「大丈夫・・・なんとなくそう思ってたし・・・。」
つい皮肉めいた言葉尻になってしまい、自分でもハッとした。
そっと彼を見ると、やっぱり何か引っかかったらしく、
軽く唇を噛んで、何か考えを巡らしている風だった。
「わかった。なんとか仕事終わらせるようにする!」
今度は彼がムキになってしまった。
私は慌ててそれを静止しようとした。
「え?いいよ。無理しないで!そんな意味じゃないから。」
「いや。終わらせる・・・終わると思う・・・。終わら・・・ない・・・・こともない・・・かも・・・。」
ムキになりつつも、やはり相当無理らしく、
終わるんだか、終わらないんだか判らない、彼には珍しく自信のない語尾に
ふと笑いが込み上げて来て我慢できなくなった。
「あははは(*^▽^*)」
「あ!なんだよ!人が真面目に何とかしようと考えてるのに!」
「ごめんなさい・・・(^▽^;)・・・だって・・・
先生に当てられたけど、答えが判らない小学生みたいなんだもん(笑)」
「う?!ひっでぇ〜なぁ〜。(^-^;)」
「だから、ごめんなさいってばぁ〜(*^人^*)」
「もういい!やっぱ終わらない!終わらせない!」
「え〜〜!?うそ!やだ!終わらせて!」
「どっちなんだよ!(^-^;)」
「あ・・・・終わって欲しいです・・・・。待ってていい・・・かな?」
「まったく・・・。(^〜^)最初から素直にそう言えばいいじゃん。」
なんか、いつの間にか私が悪いことになってない???
でもしょうがないか・・・逢いたいのは事実だし(*^^*)。
「俺に強がることないだろ?」
彼が腕組みしてほんの少し見下ろすように私のことを見る。
「うん・・・(*・・*)・・・。でも、迷惑も掛けたくない・・・」
必然、私は上目遣いになる。彼に出会ってからの私の癖・・・。
「ひとつ言っとくけど、お前のこと迷惑だなんて思ったこと一度もないからな。」
彼がコーヒーカップを口元へ運ぶ。
「・・・こんな我儘で、泣き虫でも?」
「確かに泣かれるのは困るけど(^^;)・・・我儘は俺への愛情表現だと思ってる(^^)」
「(*・・*)・・・・。」
もう、何も言えないよぉ・・・・。
「でもマジで相当遅くにならないと無理だよ?いい?」
「うん(*^^*)・・・待ってる。」
「よし!じゃあ、終わったら連絡するから!・・・じゃ、俺行くよ?」
「あ、うん、お仕事がんばってね(^-^)」
「おう!(^^)♪」
こうして結局大晦日の夜(多分元旦になってからだけど・・・笑)
彼と会うことが決まった。
〜当日〜
少しでも早く彼に会いたい・・・。
少しでも長く彼と一緒にいたい・・・・。
大晦日、夕方、約束は真夜中だけど、
もしかしたら仕事が早く終わるかも知れないなんて
淡い期待を捨てきれなかった私は、
彼の仕事場の近くで、彼からの連絡を待つことにした。
いつものコーヒーショップの窓際に座って、
ぼんやりと通りを眺める。
テーブルの上には携帯電話。
時折意味も無く開いては、待受画面の彼の写真を見つめ、
ため息をついては、テーブルへ戻す・・・・。
そんなことをずっと繰り返しながら、ただひたすら彼からの着信を待った。
今年も後1時間・・・・・。
彼からの連絡はまだない・・・。
でももう、ここでこうしてるのも居た堪れなくなって、
私は席を立った。
帰りがけ、コーヒーを一つテイクアウトした。
熱いくらいの紙コップを両手で握り締め
足は自然に彼の仕事場へと向かっていた。
仕事場のあるビルの通用口付近・・・。
駐車場のガードに腰をかけ、紙コップを頬にあてる。
「あったかい(^-^)」
口から白い息と共に零れる、つぶやき・・・。
だけど、あれほど熱かったの嘘のように、
冷え切った空気の中で、コーヒーはあっという間に冷めてしまった。
真夜中とは言え、今日は大晦日・・・。
人通りは少なくない。
かなりの確立で、目の前をカップルが通り過ぎていく。
「ふんだ!あたしだって、もうすぐ彼に逢えるもん!」
なんだかケンカを売りたい気分になってるのは
やっぱり寒さのせいかしらね(^^;)
今年も・・・・残り5分・・・。
冷めたコーヒーは飲む気にもならず、そのままあたしの手の中に。
コートのポケットの中で、やっとケータイが鳴り出した!
ピッ♪
「もしもし?・・・うん・・・。もう近くにいるよ(^^)・・・うん・・・うん・・・。
出口で待ってる♪・・・うん(^^)♪じゃ♪」
ピッ♪
ガードレールから立ち上がると、寒さとずっと座ってたせいで
足先がジンジンと痺れていた。
その場で少し足踏みして、感覚が戻るのを待つ。
急いで歩くと痛みさえ走りそうで、そっと、ゆっくりと、
彼の出てくる通用口へと歩みを進めた。
彼が出てくるのと、あたしが到着するのとは、ほとんど同時だった(^^)。
「ごめん!やっぱり遅くなっちゃったな(^^;)」
「ううん(^^)まだ1分あるよ。いっしょに年越し、出来るね(*^^*)」
「ああ(^-^)。じゃ・・・とりあえず、暖かいものでも飲もうか。ん?」
「?」
「コーヒー、買って来てくれたの?サンキュ〜♪」
「え?あ・・これは・・・・。(^▽^;)」
あたしの手の中にあったコーヒーショップの紙コップを見つけた彼は
あたしが止める間もなく、そのカップを手に取り、口に運んだ・・・。
「!!?・・・・こ・・これ・・・」
「えへへ・・・アイスコーヒー買ってきた(^-^;)・・・・」
「んな訳ないだろ!ずっと外で待ってたのか?」
「・・・・うん・・・。だって・・・少しでも早く会いたかったんだもん!」
彼の少しあきれたような表情に、涙が出そうになった。
「バカ!風邪でもひいたら、どうすんだよ!それに真夜中だぞ!
女の子一人で外に居るなんて・・・・」
「・・・ごめんなさい・・・(_ _)・・・・」
思わず俯いてしまう・・・・。
「はぁ〜〜〜」
彼は、大きなため息を一つつくと、急にあたしのことを抱きしめた。
「!!!」
「・・・ったく・・・。悪いのは俺だよな・・・。いつも、待たせちまう。
いつも、お前に無茶させちまう・・・。ごめん・・・ごめんな。」
彼のささやきの優しさと、彼の腕の中の暖かさとで
心の中で凍っていた淋しさが溶け出して、涙になって溢れ出した・・・。
「こんなに冷たくなって・・・。大丈夫か?・・・ん?(^-^)」
「・・・うん・・・平気だよ。こうして逢えたから・・・。
あたし、あなたに逢うためだったら、どんなことだって平気・・・・。」
「本当か?じゃ、いっしょに昆虫採集しよう♪(笑)」
「それは嫌!」
「なんでだよ!なんでも平気っていったじゃん!(笑)」
「虫は嫌い!!!」
「知ってる♪」
「意地悪!(><)」
「クククッ・・・・。あ!ほら!もう年越しちゃったよぉ〜!」
「あ・・・・。本当だ・・・・(^^;)」
「俺達、こんな寒空の、ビルの通用口で何やってんだろうな?(苦笑)」
「ね?・・・・(苦笑)」
なんだか、また今年1年、先が思いやられるような気もしたけど、
彼と過ごす時間なら、どんな時間でもきっと、楽しくて優しいに違いない・・・・。
「HAPPY NEW YEAR♪ 今年もよろしくな(^-^)!」
「明けましておめでと♪今年もずっと大好きだよ(*^^*)」
「おう!(*^-^*)」
また新しい、彼との1年が始まった・・・・。
〜END〜