ACT.1

「すっかり春だね〜♪」
あたしはベランダで洗濯物を干しながらつぶやいた。
「ん?」
あたしのつぶやきに釣られて(笑)、
ソファに寝転がり、雑誌を読んでいた彼もベランダへと出てきた。
「ほら、見てみて♪あの桜並木、もう半分くらい咲いてるんじゃない?」
あたしはベランダから見渡した先にある、小さな丘を指差した。
「ほんとだ。そろそろ花見によさそうだね(^^)」
「また飲むこと考えてる(笑)。」
「はははっ。ばれた?・・・(^▽^;)。」

最後に、シーツを干して終わり!
「はぁ〜〜、やっと終わった(^^;)。こんなにためないでよね(−−;)」
やっと空なったカゴを抱えて、彼を上目遣いに軽く睨んだ。
「ごめん、ごめん(^^;)。だけどお前、こうでもしないと、
  この部屋に来てくれないじゃないか〜!(^△^)」
彼は自分のせいじゃないといいたげである・・・・。
「だって・・・・。ここに来ると、帰りたくなくなっちゃうんだもん(*・ ・*)」
ふっと、いつも誤魔化している自分の気持ちが口をついて出てしまった。
後悔しても、後の祭り・・・・。
彼はいつにもまして優しい瞳で答える・・・。
「帰んなきゃ、いいじゃん(^^)。」
「もう・・・簡単に言わないで!」
あたしは、視線をそらした。

出来ることなら、あたしだってそうしたい・・・。
片時だって、彼と離れてなんか居たくない・・・。
だけど・・・・・。
「・・・だからってため過ぎよっ!(^^;)わかった?」
自分の思いを断ち切るように、持っていたカゴを彼に押し付け、
急いで中へ戻った。

あたしはいつも、彼の優しさに甘えて、だめになりそうな自分を感じていた。
いつからか彼という存在があたしの全てになった時から
強がりでない強さを、身に付けなければと思っていた・・・・。
でも、まだ、あたしのそれは、単なる強がりに過ぎない・・・・。

テーブルの向こうの彼の微笑みをみていると、本当に幸せな気分になる。
この瞬間に、このまま「時」が止まってしまえばいいのにとさえ思う。
人は、儘ならないことがあるからこそ、ほんのわずかな幸せを心の支えにして、
生きていけるのかもしれない・・・。
きっと儘ならない時間が大きければ大きいほど、
僅かな幸せをとても大切に、とても大きく感じることが出来るのだろう・・・。

あたしは、彼といられるこの瞬間のために、ここに存在する。


ACT.2

「ねえ、せっかくのおやすみだし、お天気もいいから出かけない?」
「ん?そうだな〜、どこ行きたいの?」
「さっきの桜並木♪お花見に行きたい♪」
「おっ♪いいね〜♪」
彼の笑顔・・・まるで子供みたい(*^^*)。そんなところも大好き・・・・。
「じゃあ、決まりね♪桜の下でお弁当にしようよ(^^)」
「はははっ。花見らしいじゃん(^▽^)!でも今から作るの?」
「えへへ(^^)、もう作ってきてあったりして、ほら♪」
実はあたし、最初から彼を引っ張り出すつもりで、お弁当持参(笑)。
「はははっ!!なんだ、はじめっからそのつもりだったんだ(^^)!」
「じゃあ、早速出かけますか(笑)、車で行っても停めるとこないだろうしな〜
  電車でいくのが無難だろうね・・・。」
「自転車で行こうよ!」
あたしの台詞を聞いて、彼の目が点(・ ・;)になった。
「自転車って・・・俺はいいけど・・・お前、持ってたっけ???」
「んふふ、買っちゃった♪」
「何?ママチャリ?いつ買ったんだよ〜、なんにも行ってなかったジャン!」
彼のびっくりした顔をながめつつ、お弁当を入れたナップザックを背負う。
「今日持って(?)きたんだよ♪あなたの自転車の隣りに止めてきた♪」
「・・・持って?(^^;)???」
一瞬、不思議そうな顔をした彼と、ふたりで駐輪場へと向かった。

「・・・マジ?お前、ちゃんと乗れんの?」
彼はあたしの自転車を見ると、ものすごく心配そうな顔をした。
彼の自転車の隣りには、あたしの真新しい、マウンテンバイク・・・。
「どういう意味よ!(−−;)あたしだって自転車くらい乗れますっ!」
「なら・・・・いいけど・・・・(^^;)なぁ・・・なんで持ってきた、なの?」
「え?ああ、ここまで来るのに上り坂多かったし、人ごみ怖かったから
  ほとんど押してきたから♪」
「オイオイ・・・(−▽−;)」
まだなにか言いたそうにしていたが、とりあえず出発(笑)。

確かにマウンテンバイクは、前傾姿勢になって怖いの。
足も地面にやっと届くかどうかだし・・・。
最近、ママチャリにすら乗ってなかったあたしには、
確かにちょっとハードだったかもしれない。
でも、彼と同じものに乗ってみたいという、欲求に勝てなかったんだ・・・。
もちろん、彼には言えないけどね(笑)。

そして、こうして同じ風の中を走ってみたかった・・・。
春色の街の中を、颯爽と走る彼の背中を、あたしは夢中で追いつづけた。


ACT.3

「大丈夫か?もう疲れたんちゃう?」
「平気だよぉ〜(^^;)。」
そういいながら、あたしは汗だくだった(苦笑)。
何しろ信号なんかで停まっても、足が上手くつけないので、ふらふらしてしまう。
停まってると、走ってるより疲れちゃう感じ(^^;)。
と・・・・・。
「お前・・・さっきからずっとそうやってたの?(−−;)」
彼があたしをみてつぶやた・・・・。
「え?なにが???なんのこと?」
意味がわからず、あたしは自分の足元や手元を見回した・・・。
「クククッ・・・お前、しんどかったやろ・・・足・・・。(笑)」
彼は一生懸命笑いをかみ殺している・・・。足?そう確かに、辛かったんだけど・・・。
「停まってる時は、サドルからおしりずらして立つんだよ!」
「え?」
彼を見ると、確かに・・・・(−−;)。
「・・・・(*・・*)」
「クククッ。お疲れさん。」
最低・・・・・。そんなん知らんもん・・・・(泣)。もっと早く教えてよぉ〜(T▽T)。

そこからは、とても順調に進むことが出来た。
だいぶ疲れなくなったし(爆)。
もちろん、後ろからついてくるあたしに合わせて彼が、
時々スピードを緩めたり立ち止まったりしてくれていたから、
というのもあるんだけどね(^^)。

街の雑踏を抜け、少し長い坂道を登りきると、あの桜並木がある公園。
そこは丘全体が公園になっていて、展望台からは海も見えるし、
今走り抜けてきた街並みも一望出来る絶好のロケーション。
その上、桜は今が見頃って感じで、公園はたくさんの人で賑わっていた。

「うわ〜、みんな考えること、おんなじってやつ?(^^;)」
「だな〜(^^;)。自転車停められるかな〜?」
駐輪所で、なんとかわずかな隙間に二人分の自転車をチェーンでつなぎ
彼と並んで桜の花のアーチをくぐった。

「やっぱりこのくらいが一番きれいかもな〜。」
「まだ満開じゃないのにね〜(^^)」
「いやいや、満開になっちゃうとさ、もう散り始めるやつとかもあるし、
  若葉も育っちゃうから、この位が一番いいんだってさ♪」
「へえ〜、そう言われれば、そうだね〜。」
二人で桜の花の下を展望台へ向かって歩いた。
露店もたくさん出てて、あっちこちからいいにおいがしてくる(笑)。
「露店もたくさんあるね・・・。」
「クククッ・・・。花よりだんご?」
「別に食べたいわけじゃないよっ(><)」

公園の一番高台にある展望台からは、公園中の桜の木を上から見ることが出来た。
「うわ〜〜♪ピンクのじゅうたん敷き詰めたみたいだね(^^)。」
澄み切った青空と、桜のピンクのコントラストがとてもきれいだった。
遊歩道を進み、広場に下りると、そこはもう大宴会場さながらだった(笑)。
お昼を過ぎ、気温も上がってきて、ビールが美味しそうだった(爆)。

「ビール・・・いいな〜(笑)」
「飲みたいの〜?売店で買ってこようか?」
「いや・・・今日はやめとく。自転車だし、お前が・・・。」
「どういう意味よ(−−;)」
「はははっ、別に・・・。さあ、俺らもどっかで弁当にしようぜ♪」
「もう・・・誤魔化してぇ〜(^^;)」

広場はあまりにすごい人だったので、もう少し遊歩道を進んだところにある
噴水まで行ってみると、運良くベンチが空いたところだった。
「ここでいいよね?」
「ああ。桜もちゃんと見えるしな(^^)。そこの自販機でなんか買ってくる。」

彼と並んでお弁当を食べる。
こんななんでもないようなことが、やたらうれしかったりする。
彼も、そう感じてくれているのだろうか・・・・。


ACT.4

「あ〜おいしかった♪ごちそうさま(^^)」
「お粗末さまでした(^^)ふふふっ」
「何?」
「ううん、たまにはこういうのもいいよね?」
「ああ・・・のんびりするよな〜。」
彼はベンチの背もたれに寄りかかり、空を仰いだ。
そのまま大きくのびをすると、降ろした右手であたしの肩を軽く抱いた。
春物の薄手のブラウス越しに彼の体温を感じる・・・・。
それは、今日の春の日差しより暖かく、
桜の枝を揺らす風よりもやさしいものだった。

しばらく黙って、そのぬくもりを自分の中に刻み込んだ。
ううん、それは、自然に、あたしの中へ刻み込まれていくのだ。
いつだってそう・・・。
彼の仕草、行動、仕業、ささやき、微笑み、ぬくもり・・・、
すべてが当たり前のようにあたしの中に流れ込み、消えない刻印になる。

「あっ・・・・」
黙って空と桜を眺めていた彼が突然、何かを思い出したように声をあげた。
「どうしたの?」
「カメラ・・・忘れた(^^;)。写真撮りたかったな〜。」
「そうだね・・・(^^)。でも、あたしはこの目に焼き付けたから、それでいいや♪」
「・・・そっか・・・。じゃあ俺も、そうしよう!!!」
彼はそういうと、肩に置いた手に力を込めて、あたしを自分のほうへ向かわせた。
「(*・・*)?なに?」
「桜と、青空と、今日の君を、俺の瞳に焼き付けるの!(笑)」
そういうと、彼はあたしの顔をじっと見つめた・・・・。
あたしの大好きな茶色の瞳・・・・見つめられたら、動けないよ・・・。
あたし・・・あなたが・・・・好き・・・・・。

「!!!どうした?」
「・・・・えっ?あっ・・・・(*・・*)」
あたしの目からは、知らないうちに大粒の涙が零れ落ちていた。
急いで涙を拭おうとした・・・・・とそれより早く、
彼があたしの頬を両手で包み、親指で涙を拭ってくれた・・・。
「どうした?どっか痛いの?」
「ううん・・・・桜があんまりきれいだから、感極まっちゃったみたい・・・。」
「・・・ああ、そうだな。今日ここに来れて、よかったよな〜!」
「うん♪」
それ以上彼は何も聞かなかった。
あんな言い訳不自然だよね・・・。
だってあの時、あたしは彼を見つめていたんだもの。

もう、彼と離れることは考えられない。
これからも、ずっとずっと、彼といっしょに歩いて行きたい。
たとえ、いつもいつも逢えなくても、
たとえ、いっしょにいられるのがほんの僅かな時間だとしても、
その中に、寂しさや悲しさが存在していたとしても、、
彼を愛しているという、この気持ちのほうが
何倍も大きく、強く、あたしの心の中に存在している限り
あたしは、ずっと彼を追いつづける・・・・。

「っくゅん・・・(><)」
突然くしゃみが止まらなくなった・・・。
「大丈夫か〜(笑)・・・くしゃんっ!」
???
「ねえ・・・今思い出したんだけど・・・・。」
「なに?・・・くしゃんっ」
「っくしゅん・・・あたし・・・花粉症だった(^^;)・・・っくしゅん」
「あっ・・・俺も・・・・・っくしゃん(><)」
気持ちいい春風が、どこからか花粉を運んできたらしく・・・・。
二人ともくしゃみが止まらなくなってしまった(笑)。

「帰ろっか?・・・・ぐすぐす・・・。」
「ああっ・・・その前にティッシュある?・・・ぐす・・・」
「もちろん!忘れてたけど、準備はしてきたのよ・・・ぐすん・・・。はい!」
あたしはナップザックから、箱ティッシュを取り出して彼に差し出した。
「箱ごと持ってきたんか(^^;)さすが・・・。」
「これがなくっちゃ、今の季節生きていけないもの(^-^)」
「はははっ、そりゃそうだ!」

お花見に箱ティッシュ持参なんて、かっこ悪いけど
彼といっしょなら、なんだかそれもアリのような気がする(笑)。
そして、彼とおそろいなら、花粉症も辛くない・・・・かもね・・・・(爆)。

〜END〜