日本の古い言葉に「起きて半畳寝て一畳」というのがある。つまり、人ひとりが暮らすのに最低限それだけのスペースがあれば十分だという、華美な生活を求める人々への戒めの言葉であろう。それはそれでいい。ならば、冒険者が剣を振るうのに必要なスペースについて少し考察してみようかと思う。
さて、その前に「半畳とか一畳って、実際どれくらいのスペースなのか」と疑問の方も居るかもしれないので、少し尺貫法を交えて説明しておこう。
まず、半畳とか一畳とか言うからには当然タタミ(畳)に由来する寸法であることはお察しのとおりである。メートル法に換算すればタタミ一畳のサイズは約1.82m×0.91mになり、半畳とすれば約0.91m×0.91mだ。このタタミの長さ1.82mを指して尺貫法では一間(イッケン)というのである。さらに加えるならば一間=六尺で、一尺=30.3cmとなる。
| 換算表(尺貫法⇔メートル法) | |
| 一寸 | 3.03cm |
| 一尺 | 30.3cm |
| 一間 | 約1.82m |
この尺貫法は、現在でも住宅の間取りの単位として使用されている。稀にメートル法のものも見かけるが、まだまだ尺貫法が主流であることは否定できないだろう。
つまり、我々日本人にとって部屋や廊下のサイズは尺貫法に換算して考えた方がイメージしやすい部分もあるのだ。多少せせこましいイメージになってしまいそうな気もするが、我々のキャラクターやモンスターの動き回る空間を把握する、と言う点では有用であると思う(少なくともP96は)。
では早速考察を始めよう。
まず、急激に冒険を始めると足がつったり、酷いときにはアキレス腱が切れてしまう。前もって準備運動としてラジオ体操をすることにしよう(笑)。・・・ま、それは冗談として。お互いがぶつからない範囲を確保するためには、両手を広げて間隔を取るのが一般的なものと思うが、この両手を広げた長さは自分の身長にほぼ等しいということをご存知だろうか?(そりゃ個人差は確かに存在する。左右で腕の長さの違う人間だって多く存在するが、それはそれとしてだ。)そうすると、平均的な身長であるとするならば1.82m内に収まってしまうのでないか。ほら、タタミ1枚分だ。前後左右に取るとして2枚分1.82m×1.82m、この面積を世の中では一坪(約3.3u)というのである。タタミ2枚で一坪だ。
こう言い換えても良い。「素手の状態でぶつかることなく活動するには、自分を中心とした正方形で一坪(約3.3u)は必要」と。(なぜ、正方形かって?別に「自分を中心とした直径1.82mの円」でも良いけど、それだと一坪にならないんだ(笑)。それに単に面積だと、三角形とか前方後円とかいろんな形があるからね)
更に、その手に武器を持ったとしよう。剣や鎚矛などの振るタイプならばその利き手側と前方に、槍などの突くタイプなら前方と後方にその分の長さは伸びる。剣を例にとってみると、腰までの高さのものとして1m前後。握りの部分を差し引けばうまい具合に3尺(0.91m)程か。その分が剣士の立っている畳2枚の前方と右脇に増加する。図にしてみたので、参照あれ(下図)。
図の説明をするならば、長方形の枠一つが1畳になる。「必要素手面積」となる白畳が2枚で1坪。右手に1m程度の武器を持って振りまわすとした場合の増加分が「武器使用時増加面積」でグレーの畳になり。剣士は白畳の中心に立っているものとする。
多少、恣意的に作った部分もあるが、四畳半の間取りができあがった(笑)。
つまり剣士ひとりが戦闘を行う空間に必要とされる面積は四畳半、約7.45uとなるのである。無論これには戦闘の相手(敵)の必要とする分は含まれていない。部屋の中でひとりで素振りをしている状態だ(笑)。
剣士二人が接敵状態であれば、およそ互いの前方のグレー畳は共有することになるので7畳半、約12.4uがたった二人によって占有されてしまうことになるのだ。更に付け加えるならば、これは足を止めて斬り合った場合に限定される。
余談だが、ソードワールドにおいて接敵状態とされる距離は3mだそうであるが、縦に並べた畳2枚の長さが3.64mであることを考えれば、互いに畳の端(縁ではない)に立った位の距離であることがわかる。
我々、日本人の個室として8畳間といえば、そこそこ立派なものであろう。しかし、そこでいざ戦闘を行うとなるといかに狭いかがわかる。部屋に調度品があるとするならば、その狭さはなおさらである。もしその場にパーティが集合していたならば、剣士の援護どころではない。味方の刃にかからないようにすることが優先事項となるであろう。
幸いそこまで厳密に規定しているシステムをP96は知らないが、GMであれば戦闘における各種判定の目安として、プレイヤーであればビジュアルイメージの一助となることを信じたい。
ここまで考察したことを踏まえて、もう少し実用的な方向に話を持っていこう。
例えばダンジョンや屋敷の廊下における隊列だ。最近の傾向ではあまり重視されないかもしれないが、幅2mしかない通路で2人も3人も並んで戦闘を始めては、余りにも不自然過ぎるというものだ。
基本的に前方にしか武器を振らないといっても、やはり1人2mは必要だろう。両腕を広げた分+αだ。2人なら4m。これでも幾分窮屈に感じるに違いない。
5m×5mの部屋に4人パーティ全員で戦闘?15畳とするなら4人で一杯だ。仲間割れでもしたのでなければ他に戦う相手はいないことになってしまう。
こんな場合でも、GMとしてみれば何人が部屋に入って近接戦闘を行えるかが判断でき、後方支援は室外からしかできないことがわかる訳だ。もっとも、賢い冒険者は敵を部屋の入り口へ誘き出して、取り囲むように戦うことだろうが(笑)。
最後に人間のサイズについてだが、ここまで基準として使用してきた畳の1.82m×0.91mは現代の日本人を例とした場合のサイズである。ファンタジー世界で体力勝負の冒険者になるような人間なら、体格だってもっと大きい筈だ。プロレスラーでも身長180cm超はザラじゃないかと考えるようならば、2m×1mを基準とすれば良いだろう。キリも良いことだし。
是非、GMの方にはマップ作成の際には参考にして頂きたいものだ。