一般人から見た冒険者 

 長いこと冒険者なんていう稼業を続けていると、助けに行った筈の村人から侮蔑の言葉を投げかけられた経験も少なくないだろう。
「けっ、冒険者なんて信用できるかよ!!」
 まったく、字面のとおりブルーになってしまう一言に違いない。
 命がけの覚悟で来たのに、そう言われては立つ瀬が無いというものだ。
 だからといって、一概に理解のない一般人に怒りをぶつけてはいけないよ。と、ここでは言いたい訳だ。

 まずは、一般人から見て冒険者という職業区分が、どのような認識にあるのか。ここから考えてみよう。
 現代でこそ”フリーター”という職種(?)の人間も珍しくなくなり、一般化してきた感もあるが、これが十数年前ならば「定職にも就かずブラブラしている」と白眼視されたものだ。中には夢を持って下積み生活を送っている人間がいるにも関わらず、自堕落にその日暮しを送る輩といっしょくたにみられてしまうのである。
 冒険者についても似たような状況が発生すると見て良い。この場合、「定職」とは毎日汗水流して働く事を指す。すなわち農夫や職工などの生産労働だ。
 辺境の農村に限らず、大都市以外での生活はほとんどが自給自足であり、日用雑貨でさえも物々交換で賄われている。現金を目にするということ自体稀だという土地も珍しくない。それゆえ生産に従事しない連中に対しての理解はごく少ないということが言える。
 更には素性の知れない者に対する警戒心も数えられる。特に農村など百人に満たない狭い人間関係の中で暮らしていると、その全員が顔見知りとなる。親の名前など知っていて当たり前、3代も家系を遡ればそのほとんどに血縁関係があるのが判ってくるものだ。もはや前の晩の食事のオカズなど隣近所にバレバレである。そこに見たこともない顔がぞろぞろと現れるのは彼らの警戒心を煽り立てるのに充分すぎるのもわかるだろう。最初に懐いてくるのは怖いもの知らずの子供というのも自明の理というものだ。

 もう一つは、「冒険者が何故に冒険者になったか」という動機や事情もその待遇の悪さを後押ししている。
 確かに、(本人にとっては)崇高な目的を達成するために冒険者という道を選んだ者もおり、それに該当する者であれば、それなりのマナーを心得ており品もそこそこ良いだろう。しかし、冒険者の大半はなんらかの理由で国元にいられなくなった等の食い詰め者が「元手要らず(※1)の商売に手を染めるよりはマシ」として数少ない選択肢の中から選ばざるを得なかったのだ。当然、粗野で品も悪くトラブルが発生しやすくなる。
 事は品の問題には留まらない。
 更に信頼性すら疑問視される事態がある。依頼の不履行問題がそれだ。前金の持ち逃げもある。
 金銭というものには、人の理性を狂わせ、時に悪魔を呼び起こす魔力があることは周知の事実だろう。まして冒険者の仕事というものは危険に満ち溢れ、しばしば生命の危機に直面させてくれる。依頼の際に報酬の1〜2割を前金として渡すのは、仕事に必要な装備、鋭気を整えるためだけではない。その魔力によって冒険者の恐怖を打ち払う効果をも併せ持っているのだ。
 ところが、この金銭の魔力は往々にして冒険者の悪心をも呼び覚ましてしまうものだ。特に金銭で苦労を重ねた者にとって、この手の魔力には抗し難いものなのだ。誘惑に負け、悪心に従った冒険者の末路は過酷にして悲惨に過ぎる。官憲はもちろん、冒険者としての名誉を守るためとして、かつての同業者にも追われる羽目になるのだ。
 追手が首尾良く持ち逃げ犯を討ち取ったとしても、すでに悪評は「うわさ」という風に乗って広がっている筈だ。
 身近な例を取るならば、このコラムをオンラインで読んでいる奇特な方々には判りきった事だろうが、インターネットをやっている人間がすべからく薬事法に違反するような売買を行っているわけではない。当然のことだ。ところが、一時期にはインターネットこそが犯罪の温床であるかのように言われていたものだ。バイオ○ザードや○ライトシュミレーター等もある特定の事件のお陰で同様の扱いを受けた例も記憶に新しいだろう。
 多数の中のごく一部の悪事によって、残りの全体までもが世間の冷遇を受けるのは世の常なのか。
 偏見。これこそ最も恐ろしい敵なのかも知れない。

 考え方として、前段部は情報量の少ない辺境地域においてよく見られ、後段部は逆に情報の飛び交う都市にて見られるものだという認識で良いだろう。ただし、「悪事千里をはしる」の言葉もあるとおり、辺境であってもつまらない風聞が広まっている可能性がないでもないが・・・。
 だが、悲観しても事態は好転したりはしない。多数の冒険者の中には、誠実な仕事ぶりで名を上げる者もいれば英雄として人の尊敬を一心に集める者もある。そんな彼らとて無名の時代はあった筈だ。きっと同じ苦労をしてきたと思うといい。偏見と戦うのは辛いことだが、誤解は解くことができるものだ。
 こうすれば一発で好転するような方法などはないが。信用がないのなら、それに足りるだけの仕事を見せてやるしかないのだ。
 世界に一握りの真に有能な冒険者ならば、苦難の道はごく短いだろう。そしてプレイヤーキャラクターはその一握りのうちに入る資格を持ち得る者なのだ。もし、人に称えられる冒険者になりたいのであれば、決して”志”を見失うことの無い様に精進してもらいたいものだ。


※1 仕入れに金を使わない。この場合、盗賊・追剥ぎのこと。


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