「LRTのお手本」は意外に「難産」




 我が国で、「LRTのお手本」として良く登場するフランス・ストラスブールのLRT。建設省も「世界のライトレールトランジット」としてその特長を紹介している。我が国ではあまり知られていないが、この「LRTのお手本」は意外に「難産」だったという。

 このLRT導入案が示されたとき、商店街をはじめ市民から「クルマが不便になる」「19世紀の乗り物を今更なぜ?」という疑問や反発の声も強く、特に商店街は、開業直前までLRT反対運動を盛んに行っていたという。

 ところがいざ開業してみると、それら市民はLRTの有用性・利便性に気付き、大半の人はLRTを受け入れ、現在は路線延長も行われているという。この「街の装置」を実現させたのは、LRTの有用性・利便性を市民に何度も説得に説得を重ねた市長はじめ行政の熱意と先見性によるところが大きいと言えよう。

 我が国では「LRTなどクルマのジャマになるものの話をしても市民は受け入れてくれない」と言う声を耳にすることが少なくない。LRT導入に難儀したのは欧米とて同じことである。「なぜLRTなのか」ということを懇切ていねいに、論理的に説明すれば我が国でも受け入れられる道は開けるだろう。私たち日本人は、欧米人に比べ理解力に乏しいということは決してないと思うからだ。

 我が国においても、LRT導入においては、行政が熱意と先見性を発揮することが期待される。

資料出典:建設省パンフレット「路面電車の活用に向けて」平成10年1月発行