仙台市長さんへの質問文(2)





 仙台市「まちづくり提案制度」に則り、「仙台東西線」計画に関する質問等を平成11年11月3日付で仙台市長さん宛に再度お送りいたしました。以下に本文を掲載します。
******** 本文 ********
仙台市長 藤井 黎 様

前略

 平成11年9月1日に小生より提出致しました「東西線」計画に関する質問に対し、市側より御回答の文章を下さったことに感謝申し上げます。しかしながら、受領致しました市側からの御回答を拝読致しましたところ、小生が市長御自身に明快で納得のいく御回答を御願いしていたにもかかわらず、御回答本文は仙台市都市整備局総合交通政策部東西線推進室(以下「推進室」と略)長の御名義であり、しかもその御回答本文中には、小生の質問に対して充分にお答えになっていない項目があり、本文中で御回答されている事項に対する疑問も幾つか抱いております。「東西線」計画は、21世紀の仙台を支える重要な施策であるだけに、大多数の利用者に支持されかつ後世の批評に十分耐えうる交通機関に仕立て上げる為には、市民への十分な情報公開・市民との十分な議論が必須であると思います。御回答に対する小生の疑問・質問につきまして、以下の通り申し上げます。

 現在公表されている建設費の根拠に関する質問に対して、「建設費2710億円は、地下鉄南北線や他都市の事業費実績等を参考に平成8年度価格で試算した2410億円をベースとし、物価上昇率等を加味したものであり、現段階では十分妥当と考えている」旨の御回答がありましたが、この御回答と同じ趣旨の文章は、仙台市が配布した資料「東西線計画の概要」にも記載されております。

 確かに、昭和62年に開業した南北線の建設費は約2400億円と、現在の相場より大分安価(約176億円/km)でした。ところが、各都市の実績を見ると、地下鉄の建設単価は年を経る毎に上昇しており、世間では小断面で建設コストが安いと言われているリニアモータ推進式地下鉄道(以下「リニア地下鉄」と略、推進室の想定機種)でも、東京都営12号線環状部(建設費約340億円/km※1))や神戸市営海岸線(建設費約300億円/km※2))のように従来型地下鉄と実質上差がないほど高騰しており、それら価格を「東西線」計画に当てはめると、それぞれ約4760億円、約4200億円となりいずれにしても現在の公表価格と大差が生じています。
※1)毎日新聞平成11年5月30日記事の掲載データより算出
※2)社団法人日本地下鉄協会「平成10年度地下鉄事業計画概要」データより算出

 「東西線計画の概要」を見ても、それら最近の実例との価格差についての疑問が解消しないために質問致したにもかかわらず、「東西線計画の概要」と同じ趣旨の御回答をされても、小生が抱く疑問の解消には至りません。第一、平成8年度建設費の算定根拠を、平成8年度時代の相場より大分安価であった時代の地下鉄の建設価格を基準に算定しているのが正当であるとは思えません。この件に関して市長御自身におかれましてはいかがお考えなのか、御見解を是非とも頂きたいと存じます。

 現在市側が公表しているルート案を採算上最善である、と市側が見解している根拠に関する質問に対して、「学術研究機能や中枢業務、商工業、文化、流通機能など沿線にかかる様々な機能の連携を高める」旨の御回答がありましたが、この御回答と同じ趣旨の文章は、仙台市配布のパンフレット「21世紀のまちを育む仙台市東西線」にも記載されております。

 前回の質問では、現ルート案は、仙台駅東側の卸町地域では人口密度の低い地域をわざわざ通過させ、JR仙石線の乗客が延長線である青葉通り沿線に行くのに仙台駅で遠距離移動を伴う乗り換えを強いており、さらに、仙台駅西側の東北大学や八木山地域でも地形の関係で駅まで歩いて利用できる人は極めて限られ、バスで結節するにも駅で遠距離移動を伴う乗り換えを強いていることから、大多数の利用者にとって利便性は極めて低いと考えられる点を問題にしており、これだけの問題点が小生の素人目でさえ指摘できるにもかかわらず、これら疑問点に対する詳しい御見解はありませんでした。この市側の姿勢は、「様々な都市機能を1本のレールで結節さえすれば、利用者側の視点から提示された諸問題については不問に付したままでも大多数の利用者からの支持が得られる」と考えている、と解釈すればよろしいのでしょうか?

 実際に現ルート案については利便性の面で多数の疑問が指摘されているにもかかわらず、本来は利用者のためにある「東西線」計画が、これら利用者の声がほとんど反映されずに進められている現状は明らかに疑問を呈さざるを得ないものであると言わざるを得ません。市長御自身におかれましては、市政の最高責任者として、それ以前に市民により選ばれた「市民の代表」としての御立場から御覧になって、現在の「東西線」計画に関する推進室側のこの姿勢についていかがお考えなのか、そして現ルートを利用者側から見て多数の問題点が指摘されながらも、それでも採算上最善と見解している具体的かつ論理的な「根拠」をお訊きしたく、今一度質問申し上げます。

 運賃設定に関する質問に対しては、「現在の南北線と同じ運賃体系と同様としており、南北線とは通算運賃としている」旨の御回答がありました。「現在の南北線と同じ運賃『体系』」とは、乗車距離に応じて運賃が増加する「従距離制運賃『体系』」を意味すると解釈できますが、設定運賃「金額」については全く御回答になっておりません。

 平成11年9月、仙台市内の市民団体「仙台高速市電研究会」(以下「高研」と略)は、リニア地下鉄における「東西線」の事業採算性について、独自に行った試算を公表しております。市側からは具体的な設定運賃額が公開されていないので、試算を現在の南北線の運賃額を基準に行っているとのことです。

それによりますと、「1日あたりの利用者数が市側の公表通りの13万2千人としても、単年度黒字化に21年、累積債務償還に38年を要する」と試算しており、市側発表の「単年度黒字化に15年、累積債務償還に27年で済む」というデータと大きな食い違いがあります。一般に事業採算性があると見なされるのは累積債務償還が30年以内と言われていることから、現在の南北線の運賃を基準に収支計画を算定したとすると採算性が全くない、ということになります。

つまり、事業採算性があると市側が試算しているということは、運賃設定額を現在の南北線より割高に算定している可能性が極めて高いと考えられます。現在の南北線の運賃は、利用者からすると割高感の否めない運賃額設定(初乗り3kmまで大人200円、以下3km毎に240円、290円、320円、350円)となっており、それに対する不満の声も少なくありません。「東西線と南北線は通算運賃」とのことですので、現在の南北線よりも割高な東西線の運賃額を当てはめるということになれば、東西線開通後は南北線の運賃値上げをも想定しているということになり、そうなれば利用者の支持は急激に低下することが懸念されます。

 設定運賃「金額」の公開は、利用者に運賃額設定の妥当性を問うのに必須であることは、今更申し上げるまでもありません。それにもかかわらず、利用者にとって最も基本的な情報の一つである利用運賃すら公開しようとしない現状は、上記ルート案の問題同様に大きな問題として採りあげられるべきと思います。市長御自身におかれましては、この現状に対していかがお考えなのか、そして、具体的かつ明瞭な形式で設定運賃「金額」をお訊きしたく、今一度質問申し上げます。

 採算性についても大きな疑問があります。「高研」による同試算によると、建設費が予定より5%上昇した場合、一日あたりの需要が予測の9割に留まった場合、建設費の財源の一つである企業債金利が現在の2.1%から3%に上昇した場合のいずれか一つが発生しただけでも事業としての採算性が認められないと試算しており、「リニア地下鉄東西線」計画は予想しうるリスクに対する弾力性が極めて乏しい計画である、と結論づけております。

 「都営12号線」のように建設費が予定より44%も上昇しその結果償還計画が破綻した前例があり、南北線の前例のように需要が予想の約半分にしか到達しないということもありました。企業債金利については、現在の超低金利時代が長期間に渡って続くことは考えにくく、むしろ長期的に見ると上昇する可能性が極めて高いと考えられます。これら事項を勘案すると、素人目にも、「リニア地下鉄東西線」計画において以上3つの「負のシナリオ」が同時に発生する可能性が極めて高いのではないかと考えられます。そうなれば、同計画の採算性は全く認められないと言うことになります。

 以上の試算が示されているにもかかわらず、市側が「リニア地下鉄」想定下の「東西線」の採算性が認められると主張しているということは、「高研」試算を覆せるだけの合理的根拠があるということになります。その根拠とは何か、是非御教示下さい。


 次に、「東西線」への導入機種としてLRT(ライト・レール・トランジット)が、実際の利用者にとっての利便性・予想輸送需要はじめ諸条件・建設費の面から考えて最適機種と考えた上で提案申し上げた件に対しましては、「東西線にLRT導入は不可能」旨の御回答でありました。

 その理由として市側により挙げられているのは、登坂勾配の制限により青葉山部分の登坂が困難であること、連結車両長の制限により「東西線」に求められる輸送力の確保が困難であること、路面での最高速度制限の規制により東北地方交通審議会の答申に示す表定速度(30km/時)の確保が困難であることでした。ところが、これらの理由を根拠にLRT導入は不可能とすることについては、小生は一市民ながら大いなる疑問を抱いており、その疑問点を以下の通り質問申し上げます。

「東西線」へのLRT導入の際に問題として採りあげられる項目は、勾配・車両の長さによる輸送力・走行速度・そして軌道の導入空間です。市側は、LRTはこれら項目の問題を理由にLRT導入を不可能と見解しております。言い換えれば、これら項目に関する問題点が克服できれば、LRTを機種候補として良い、と言うことになります。

御回答の文章を拝読した範囲では、御指摘の「制限」とは「技術的・物理的な制限」を意味するのか「法的な制限」を意味するのかは今ひとつ解りかねますが、法的見地からも技術的見地からも、「『東西線』へのLRT導入は不可能」と市側が見解することに対しては甚だ疑問に思います。LRTは「東西線」へも導入可能と考えられることについて、小生の意見を申し上げたいと存じます。

まず、勾配につきまして申し上げます。技術的・物理的には、海外のLRTは80〜110/1000の急勾配でも何の支障もなく運営されています。無論、勾配の途中で停止した場合の再起動性も考慮されていますので、安全性についても何ら問題なく運営されております。

LRTと同様の走行方式である普通鉄道が急勾配を克服している例は、海外にとどまらず急峻な地形を走行することが多い我が国の鉄道においても、箱根登山鉄道(最大勾配80/1000)や、旧信越本線横川〜軽井沢間(最大勾配66.7/1000)をはじめ多数見られます。無論、これら路線も安全性に何ら問題なく運営されている実績があります。

 勾配に関して法的側面から申し上げます。我が国においては、LRT等軌道路線に関し、我が国では「軌道法」下の省令「軌道建設規程」により上限値が規定されており、勾配は40/1000(1000m進んで40m昇降するだけの勾配)特殊な箇所については67/1000まで※3)、としています。
※3)軌道建設規程第16条

   しかし、「軌道建設規程」においては、第34条に、特別の事由がある場合には省令に定める規定によらないことができる旨の「例外規定」が明記されています。しかも、条文中に「特別の事由がある場合」と明記されておりますが、「特別の事由」の具体的定義はありません。

つまり、勾配が規定によらなくともその路線が安全に運用可能であることを合理的に説明できれば、LRT導入に際し勾配は障害にならない、ということになります。

「東西線」現ルート案で急勾配が問題とされる青葉山区域における勾配は、市側により60/1000※4)のデータが示されており、それは規定の但し書きの値よりも緩く、例外規定によらずに実現可能と考えられます。
  ※4)高橋秀道・仙台市都市整備局総合交通政策部長:平成11年7月17日「高研」主催の定例会内の発言

 御回答文の中に、「勾配67/1000の但し書き規定は、橋りょう取付部等の特殊な箇所における勾配を対象としたものであり、短い区間を想定したものとされている」というお話をされておりますが、この文言は小生の知る限り、どの法規の条文にも記載されておりません。この文の根拠はいかなる資料に基づいて引用されているのか、是非御教示下さい。それに、「橋りょう取付部等」という文言からは、「等」という文言から「特殊な箇所」を「橋りょう取付部」に限定しておらずかつ「短い区間」の定義もない、言い換えれば「特殊な箇所で短い区間」と判断できる路線部ならば場所を問わない、と解釈できます。

つまり、青葉山区域は「標高差が大きいと言われている特殊な箇所」であると言え、急勾配である区間は「東西線」の場合、路線全体からすると「短い区間」と解釈できます。公表されているルート案から推測しても、青葉山区域が連続して60/1000としても、先に申し上げた前例より技術的には何ら問題なく、勾配67/1000の但し書き規定は適用可能と考えられます。よって、勾配の問題はLRT導入に支障にならないと考えられます。

 今度は、LRTの輸送力について申し上げたいと思います。輸送力を左右する要素の一つは、しばしば問題とされている1運行列車あたりの編成長です。我が国では、「軌道運転規則」第46条により、1編成あたりの車両長は30mまでと定められておりますが、同規則第2条第1項但し書きの「例外規定」により、安全性が説明できる範囲において同規則第46条による制限を受けないようにすることが可能と考えられます。

海外では、LRT用電車(以下「LRV」と略)の車両長が30mを大きく超過した状態においても、周囲道路交通に対して安全に運行されている実例が多数見受けられ、むしろ、欧米では車両長は30〜50mが一般的です。具体的には、ドイツ国マンハイム市では全長約40m、同国ケルン市では全長約60m、 「自動車大国」の代表と言われている米国・ロサンジェルス市においても全長約53mと、30mを大幅に超過しても何の問題もなく運行されています。 この他にも実例は海外に多数見受けられます。

無論、これらの都市はじめ実績のある都市の道路も、仙台市の主要道路と同様に、多数の歩行者・自動車・路線バス等が往来している事例がほとんどですが、それでもそれら周囲道路交通に対して実用上何ら問題なく運営されております。それら前例を勘案すると、仙台市の場合は前例の都市と異なり例外的に車両編成長を30mを僅かでも超過すれば周囲道路交通に著しい支障が生ずる、ということは考えられず、諸外国の前例と同様に、30mを超過しても周囲道路交通に対して実用上問題なく運営できると考えられます。つまり、「『東西線』においては、輸送力確保のために30mを超過する必要がある」を「特別な事由」として例外規定を適用できうると考えられます。

 諸外国では、LRTで1万数千人/時程度の輸送力は既に実現されており、建設省もLRTの輸送力を最大で1万5千人/時と広報※5)しています。一方、『東西線』に求められる輸送能力は、1時間あたり1万人※6)というデータが市側より示されております。つまり、市側の「輸送力不足のために『東西線』にLRT導入は不可能」旨の広報は、今お話しした諸外国の前例や建設省の広報と明らかに矛盾している、と言うことができます。
※5)建設省発行パンフレット「路面電車の活用に向けて」(平成10年1月発行)内のデータより。同資料では、LRTを「路面電車」として掲載。
※6)高橋秀道・仙台市都市整備局総合交通政策部長:平成11年7月17日「高研」主催の定例会内の発言

 結論として、「車両長最大30mという法的制限のためにLRTの輸送力は不足で『東西線』導入には不可能」という論は成立し得ず、以上事項を勘案することで「東西線」の需要はLRTにおいても充分に対処可能と考えられますが、いかがでしょうか。

 続いて、LRTの速達性についてはどうでしょうか。我が国においては「軌道運転規則」第53条により、路上軌道における最高速度は40km/時、表定速度(起点終点間の距離を所要時間で除した速度値)の上限は30km/時と定められておりますが、同規則規則第2条第1項但し書きの「例外規定」により、安全性が説明できる範囲内において同規則第53条による制限を受けないようにすることが可能と考えられます。

 最高速度・表定速度の制限を合理的たらしめる理由は、車両の制動距離を周囲道路交通・先頭を走る電車に対して安全上問題ない範囲に留まらせることにあります。つまり、路上における最高速度が40km/時を超過しても安全性が確保可能である旨を説明できれば、「例外規定」が適用可能と考えられる、ということです。

 最近は、定員約70名程度の立席を有する大型市街路線バス(以下「バス」と略)に劣らないほどの加減速性能・走行性能を持つLRVが多く出回っており、バス並みの速度・加減速度により問題なく運営されています。仙台市を含む我が国において、バスは最高速度50〜60km/時の速度で運転されています。その速度においてもバスは、周囲道路交通に対して安全上問題なく運行されており、なおかつ立席を含む乗客に対する安全性も確保されています。

 つまり、LRVを路線バス並みの加減速性能で運行することで、路上軌道における最高速度を50〜60km/時に引き上げたとしても、周囲道路交通及び乗客に対して安全性が確保できると説明でき、「例外規定」が適用可能と考えられます。つまり、現行法下においてもLRTの高速性の実現の可能性があると言えます。

 御回答の中に、「LRTでは、東北地方交通審議会の答申で示されている表定速度30km/時の確保が困難であるため導入は不可能」旨の御見解がありましたが、LRTにおいて表定速度30km/時を充分に確保している前例があります。中には、米国・ロサンゼルスのLRTのように、表定速度が約39km/時と、仙台市営地下鉄南北線の表定速度である約32km/時よりも高速で運行している実例まであります。

 一方、「東西線」現ルート案においては、ルート内に交差点に沿った急カーブが随所に見られ、これらの箇所においては減速を余儀なくされることが充分に考えられることから、例え機種をリニア地下鉄にしたとしても、東北地方交通審議会が示しているという表定速度30km/時の確保は可能なのか、甚だ疑問に思います。「東西線」の表定速度はリニア地下鉄で20〜25km/時程度という「高研」の試算があるほどです。それに、駅内における乗降の所要時間を勘案すると所要時間に関してはLRTよりも不利になると考えられます。

 それにも拘わらず、リニア地下鉄では高速性の確保が可能でLRTより利便性が高いと見解しているのはいかなる合理的・科学的根拠によるものか、東北地方交通審議会は「答申」の中で、「機種条件は表定速度は30km/時以上」としていますが、「東西線」のような短距離市街鉄道においては、速達性すなわち所要時間の短縮には、表定速度だけでなく駅構内における乗降に要する時間も大きな影響を与えると考えられます。その乗降時間を勘案せずに、駅間の表定速度のみをもって速達性を云々している同審議会の答申は正当とは思えません。

また、同審議会はLRTに関する評価について、諸外国等の実績及び我が国における軌道法下の省令「軌道建設規程」・「軌道運転規則」内の「例外規定」の適用の可能性を充分考慮した上で正当な評価をすべきと思うのですが、現状はそれが実行されている状態であるとは到底思えません。これらの点を踏まえた上で、同省令内の例外規定を適用することによりLRT導入の可能性を再検討すべきと思案しておりますが、市長御自身におかれましてはこれら事項に関していかがお考えなのか、御見解を是非とも賜りたいと存じます。

続いて、LRTの導入空間について申し上げたいと思います。前回質問でも申し上げましたが、俗に言う「27m道路説」は法的根拠がなく、むしろ、「軌道建設規程」第8・9条からは道路条件により幅10m程度の道路でも導入可能と解釈でき、前例もあります(例:広島電鉄線等)。また、「軌道法」は道路上の空間・地下を走行する鉄軌道線にも適用されていることがあり(例:大阪市営地下鉄、各都市モノレール等)、なおかつ道路以外の専用軌道を走行している例もあります(例:都電荒川線、東急世田谷線等)。これらの前例から、現行「軌道法」下においても路上軌道・専用軌道・高架・地下線を組み合わせてLRT路線を建設し、「軌道建設規程」・「軌道運転規則」の「例外規定」を適用し本来のLRTの性能を発揮させることで「東西線」の費用対効果比を飛躍的に高めることは、現時点で充分に可能と考えられます。また、平成11年9月18日に行われた「高研」主催の定例会において、建設省都市局街路課課長補佐・横山克人氏は、現行法規下においても、これら各種軌道を組み合わせたLRTの実現の可能性について否定していませんでした。よって、導入空間の面からも、LRTは導入可能と考えられますが、いかがでしょうか。

 以上から、「東西線」へのLRT導入の際に問題として採りあげられる4項目はいずれも、「軌道建設規程」・「軌道運転規則」による規制を受けなくとも実用上問題がないことが説明可能であることから、同省令の規制によらないLRT建設は現段階でも可能であると考えられますが、この件につきまして市長の御見解を賜りたいと存じます。

 続いて、「東西線」へのLRT導入の意義について申し上げます。LRTは、高走行性能、乗降の容易性、交差点における優先信号、軌道の占有、状況により部分的な立体交差・高架・地下線の導入等により、低運賃にて速達性・利便性を利用者に提供することにより利用を促進させ、その結果公共交通機関より空間利用効率がはるかに良くない乗用車からの乗り換えが進みその結果自動車交通量を減少せしめる効果があり、欧米ではこの考え方を「基本」としてLRT導入・整備を進めています。

 しばしば「LRTは自動車交通と競合するために導入は困難」という声がありますが、それら発言は、上記「基本」を全く考慮に入れていないことの現れと思います。

 3m幅(道路幅1車線分)の空間にて1時間あたりの輸送可能な人数は、乗用車では620人※7)とLRTの1万5千人※8)と比べてはるかに少ないのです。言い換えれば、同じ方向へまとまった人数の移動需要がある状況においては、自動車のために1車線分を開放したところで移動需要を満たすことはままならず、LRT等の公共交通機関の利便性を確保するために1車線を占有させる方に合理性がある、ということです。
※7)天野光三:「都市交通のはなしT」技報堂出版
※8)建設省発行パンフレット「路面電車の活用に向けて」(平成10年1月発行)内のデータより。同資料では、LRTを「路面電車」として掲載。

 つまり、「東西線」計画のようにリニア地下鉄ほどの輸送力(2〜4万人/時※9))が見込めない中であえてリニア地下鉄を導入することは、1時間あたり高々数百人の自動車による移動需要に応えるために、建設費がLRTよりはるかに高額である上に利用者に乗降の不便を強いていることに等しいと言え、費用対効果比の面で明らかに問題があると考えられます。
※9)新谷 洋二「まちづくりとLRT」都市地下空間活用研究1998年4月号より

 交通行政を行う上では、有限である道路空間を自動車に事実上自由に浪費させている現在の交通体系の矛盾点をしっかり把握し、利用者・納税者の身になった上で、費用対効果比、利用者にとっての利便性を第一に考え、市民に対して都市交通に関する正しい知識を啓蒙し、積極的な情報公開を行うことに努めるべきと思います。正しい情報無しには、市民は正しい判断ができません。

 小生が見る範囲では、LRTに関して市側から正しい情報が発せられることが極めて少ないという感が否めません。否、今まで申し上げたとおり、「LRTは速度・輸送力・登坂力不足」旨の市側の広報については、海外の実例・各規則「例外規定」の適用の可能性等を勘案すると虚偽の情報であるとすら言えると思います。そのためか、巷では「LRTという交通手段は速度が遅くて輸送量がなく、坂が登れない」旨の「誤解」と言える発言が少なくない、という現状を市長御自身は御存知でしょうか? 都営12号線や神戸市営海岸線のように「リニア地下鉄」と言えども建設費が一般地下鉄に匹敵するほど建設費が高騰している前例があるにもかかわらず、それでも「リニア地下鉄は安くできる」旨の「誤解」と言える発言も聞かれることがある現状を、市長御自身は御存知でしょうか?

 仙台市の都市整備の方向性を決定づけると言える程重要な「東西線計画」で、本来は正しい情報が公開されて市民に浸透していて然るべきであるにもかかわらず、以上のような事項が巷で散見されており正しい情報がほとんど浸透していない現状が見られるということについて、この現状は正当な状態であるか否か、正当であるとすればその理由、正当でないとするならば今後どのように改善すべきとお考えなのか、市長御自身の御見解を賜りたいと存じます。

 「東西線」計画では、需要の面から見てリニア地下鉄ほどの大量輸送交通機関を導入する意義はなく、むしろ高橋氏から公表された需要・最大斜度、さらに実際の利用者にとっての利便性、採算性、費用対効果比から判断するとLRTが最適と考えられ、諸外国実績も踏まえての導入・利便性向上の研究や市民への「正しい」情報の啓蒙が急がれるべきであり、現ルート案も大多数の利用者にとって利便性が極めて低いと考えられるため、抜本的に見直す必要があると思われます。

 「軌道法」下の省令「軌道建設規程」及び「軌道運転規則」中の「例外規定」がある以上、単に「法的規制を根拠にLRT導入は不可能」なる見解には根拠がなく、むしろLRTに関する技術の進歩・諸外国における前例等と説明することによって例外規定の適用が可能と考えられることから、「東西線」へのLRT導入は充分可能と思われます。LRTに対する運輸省・建設省等国の見解及び方針は、「平成10年度運輸白書」や建設省発行パンフレット「路面電車の活用に向けて」で示しているとおり前向きです。東北地方交通審議会や推進室の「LRT導入は不可能」旨の見解は、これら国の見解及び方針と相反することになると思いますがいかがでしょうか。

 御回答文中に、「LRTに関わる軌道法や鉄道事業法の規定について適切に運用されている旨の国の見解も最近できたことから、平成16年度着工を目標としている東西線へのLRT導入は難しい」旨の御指摘がありますが、先に申し上げた通り国がLRTに関して前向きである旨の資料は承知しておりますが、「軌道法等について適切に運用されているのでLRT導入は困難」と解釈できる国の見解なるものは、小生は承知しておりません。いかなる資料に基づく御回答によるのか、是非御教示下さい。それに、「軌道法の規定について適切に運用されている」という発言は、同規定中に含まれる「例外規定」も適切に運用されている、と解釈でき、現在の国の前向きな姿勢からするとむしろLRT導入は可能、と解釈できると思いますが、いかがでしょうか。

 今まで申し上げた事項にもかかわらず、「LRT導入は不可能」という情報を具体的・合理的根拠もなく一方的に市民に広報し続けることは、虚偽の情報を市民に流布し続けることになるのではないかと思案致しておりますが、いかがでしょうか。

 また、LRT導入を自動車交通との競合を理由に否定することは、有限である道路空間を過剰の自動車に浪費させている現状の矛盾点・LRTがその矛盾点を改善せしめる効果・その結果としてのLRTの特長を充分考慮に入れていないことの現れであり、交通行政においては、道路空間を過剰の自動車に浪費させている現状の矛盾点・LRTがその矛盾点を改善せしめる効果を考慮に入れた上で費用対効果比が最大となるように計画を進めることが、市民の先頭に立つ行政として採るべき姿勢と思われますが、市長御自身におかれましてはいかがお考えでしょうか。これら事項に関しましては前回質問致したにも拘わらず御回答下さらなかったので、今一度質問申し上げます。

 さらに、当計画に関する情報公開は未だに進んでいないと言わざるを得ず、「利用者」「納税者」である市民に知らせるべき基本的事項に関する質問に対する回答もほとんどなく、あまつさえ、仙台市政の「看板」と言える「まちづくり提案制度」においても市長御自身の御見解が示されないという現状は、甚だ理解しがたいものがあります。

 仙台の方向性を決定する「東西線」計画において、正しい情報が市民に流布されないまま計画が進み、もしこのまま「東西線」が現案のまま実行され、現在の危機的な市財政の中で建設費が予想よりさらにかさみ、それ故高運賃となり乗降・ルートの不便性と相まって利用が落ち込んで収支が悪化し、建設費上昇・収支悪化により市財政が壊滅的状況に陥った上に効果が薄いという結果になって後世から痛烈な批判を浴びることになったとすれば、虚偽と言える情報が流布されていると言える現状にほとんど手を打たず、かつ情報公開・市民との議論・対話を積極的に進めていないと言える現状に関して、市政の最高責任者である市長御自身の責任は免れ得ないと思います。

 「まちづくり提案制度」において、重要案件に関する質問に対しては市長御自身が御回答になっていると聞いております。それにも関わらず、御回答は市長御自身の御見解ではない、ということについてはどのように解釈すればよろしいのでしょうか。それに、御回答の内容文も小生の疑問を解消するには遠く及ばないものと判断せざるを得ず、今回お送り下さった御回答につきましてはお受け取り出来かねます。つきましては、推進室長におかれまして御多忙の中わざわざ御回答下さったところを誠に恐縮ではございますが、小生へお送り下さいました御回答文を返却申し上げます。

 市長御自身が「東西線」計画を21世紀の仙台を支える重要な施策のひとつとお考えになっているのでしたら、以上質問に対して市長御自身より明快で納得のいく御回答を下さるものと強く期待しております。以上各質問に対し、市長御自身の真摯な御対応を期待しております。宜しく御願い申し上げます。


草々

高井 憲司

******** 以上本文 ********
 以上質問文に対し、市長御自身よりどのような御回答を下さるのかお待ちしたいと思います。仙台市の財政が苦しい中これからの仙台を左右する、と言える「東西線」計画についてきちんとした考えをお持ちでしたら、市政の最高責任者としてきっと明快で納得のいく説明を下さることでしょう。今後動きがあれば、随時アップしたいと考えております。御注目下さい。