仙台市長さんへの質問文(3)





 仙台市「まちづくり提案制度」に則り、「仙台東西線」計画に関する質問等を平成12年1月10日付で仙台市長さん宛に3回目の質問をお送りいたしました。以下に本文を掲載します。
******** 本文 ********
仙台市長  藤井 黎 様

前略

「まちづくり提案制度」に則り、平成11年11月3日付にて市長宛に差し上げました「東西線」に関する質問に対し、同年12月17日付にて市側より回答の文章をお送り下さったことに関しまして感謝申し上げます。しかしながら、小生は、市長御自身宛に質問の文章を差し上げ、市長御自身よりのご回答を再度御願い申し上げたにも拘わらず、御回答本文は都市整備局総合交通政策部東西線推進室(以下「推進室」と略)長の御名義であり、小生の質問に対する御回答としても、小生を納得させるには程遠いものと言わざるを得ず、大変遺憾に思います。「東西線」計画は、今後の仙台の都市整備の方向性を決定する重要な施策であり、かつ現在の財政難の中莫大な建設費用を要する事業である以上、同事業に関する市民への充分な情報公開・市民との充分な議論が必要であるのは申し上げるまでもありません。市側からの回答に対する疑問点を申し上げますと共に、市長御自身に対しまして再度質問申し上げます。

小生が、「東西線」の導入機種として、費用対効果比・「実際の利用者」にとっての利便性・現在市当局が同計画に求めている輸送力・登坂性能等諸性能から判断してLRT(ライトレールトランジット)が最適として提案申し上げた点につきまして、推進室長からの御回答として「東西線にLRT導入は、法規制により輸送力・登坂能力の点で能力不足であるために不可能」旨の見解が示されており、その根拠として「ライト・レール・トランジットの国内普及に関する質問主意書」(櫻井充参議院議員提出)に対する答弁書(以下「政府答弁書」と略)が示されております。

その「政府答弁書」を拝読いたしましたところ、現行法下においても海外のLRTに劣らない輸送力・登坂性能・速度を有するLRTの導入が「東西線」はじめ我が国でも可能であることが判読できます。お送り下さいました「政府答弁書」を「別添資料1」として、以下にその詳細を申し上げます。

「東西線」へのLRT導入の際に問題として採りあげられる項目は、前回質問にて申し上げたとおり、車両長による輸送力・登坂性能・走行速度・そして軌道の導入空間です。市側は、LRTはこれら項目の問題を理由にLRT導入を不可能と見解しております。言い換えれば、これら項目に関する問題点が克服できれば、LRTを機種候補として良い、と言うことになります。

まず、LRTの輸送力を左右する要素のひとつとしての1編成あたりのLRT用車両(LRV)の長さに関して、「政府答弁書」は、「特別の事由がある場合には、軌道運転規則第2条第1項但し書きの規定により、個々の事業者からの申請に基づき、その線区の道路状況・交通量・道路交通上の安全性等を勘案し、同令の定めによらないことを許可する取扱いを行っている」という「例外規定」運用に関する見解が明記されており(別添資料1・下線部@)、しかも、同文中の「特別の事由」の定義はありません。つまり、「例外規定」を適用しても実用上問題がない旨を説明できれば「例外規定」適用を許可している、ということになります。

路上における車両長が軌道運転規則第46条による制限(30mまで)を超過しても道路交通上の安全性に問題なく運営されている実例は、海外で多数見受けられ、むしろ、欧米における車両長は30〜50mが一般的です。具体的には、ドイツ国マンハイム市では全長約40m、同国ケルン市では全長約60m、 「自動車大国」の代表と言われている米国・ロサンジェルス市においても全長約53mと、30mを大幅に超過しても何の問題もなく運行されています。 この他にも実例は多数見受けられ、国内においても、広島電鉄の新型LRT用車両(以下「LRV」と略)や京阪京津線において、「例外規定」適用の前例が既に見られます(車両長 広島電鉄:30.52m、京阪京津線:約65m)。

無論、これらの都市はじめ実績のある都市の道路も、仙台市の主要道路と同様に、多数の歩行者・自動車・路線バス等が往来している事例がほとんどですが、それでもそれら周囲道路交通に対して安全性を含め実用上何ら問題なく運営されております。それら前例を勘案すると、仙台市の場合は前例の都市と異なり例外的に車両編成長が30mを僅かでも超過すれば周囲道路交通に著しい支障が生じて危険、ということは考えられず、諸外国・国内の前例と同様に、30mを超過しても周囲道路交通に対して実用上問題なく運営できると考えられます。つまり、『東西線』においても、輸送力確保のために軌道運転規則第46条による規定を受けないようにすることが可能である、と言えます。

 続いて、LRTの速度に関して「政府答弁書」は、「特別の事由がある場合には、軌道運転規則第2条第1項但し書きの規定により、個々の事業者からの申請に基づき、その線区の道路状況、交通量、道路交通上の安全性を勘案した上で同令第53条による規制(路上軌道における最高速度は40km/時、表定速度の上限は30km/時まで)を受けないことを許可する取扱いを行う」旨の見解が明記されており(別添資料1下線部A)、しかも、同文中の「特別の事由」の定義はありません。

「政府答弁書」では、路上軌道における速度規制を同規則第53条にて定めることについて、「路面電車車両の制動距離が他の道路交通に対して著しく長い」ということを大前提にしています。つまり、路面電車の制動距離が「他の道路交通に対して著しく長」くなければ同規則第53条による速度規制を受けないことを許可する取扱いをする、と示していることに等しいことになります。

最近は、定員約70名程度の立席を有する大型市街路線バス(以下「バス」と略)に劣らないほどの加減速性能・走行性能を持つLRVが多く出回っており、バス並みの速度・加減速度により問題なく運営されています。仙台市を含む我が国において、バスは最高速度50〜60km/時の速度で運転されておりますが、その速度においてもバスは、周囲道路交通に対して安全上何ら問題なく運行されており、なおかつ立席を含む乗客に対する安全性も確保されています。

 つまり、LRVを路線バス並みの加減速性能で運行することで、路上軌道における最高速度を50〜60km/時に引き上げたとしても、先頭を走行するLRV・周囲道路交通及び乗客に対して安全性が確保できると説明でき、同規則第53条による速度規制を受けないことを許可する取扱いを受けることが可能である、ということになります。

 勾配に関して「政府答弁書」は、「特別の事由がある場合には、軌道建設規程第34条の規定により、その線区の道路状況及び車両の性能等を勘案し、同令の規定による設計によらないことができる」旨の「例外規定」運用に関する見解が明記されており(別添資料1・下線部C)、しかも、条文中の「特別の事由」の定義はありません。

「政府答弁書」では、勾配制限の根拠として、「車両の勾配途中において停止した場合の再起動性能、連続した勾配における登坂性能等を勘案」しているため、としています。つまり、これらの事項に関して同規定第16条による勾配制限を越えても問題がないと説明できれば制限を受けない路線設定が可能である、と示しているに等しいことになります。

登坂性能につきましては、海外のLRTは80〜110/1000と、市当局側が示している青葉山区域における最大勾配60/1000(※1)よりも急峻であるにもかかわらず、安全性に何ら問題なく運営されております。無論、勾配途中において車両が停止した場合の再起動性能も考慮された上で運営されており、LRTの登坂性能はかなり確立されております。
(※1)高橋秀道・仙台市都市整備局総合交通政策部長:平成11年7月17日「仙台高速市電研究会」主催の定例会内の発言

「政府答弁書」では、同規定第16条但し書き(特殊な箇所においては67/1000まで)について、「橋りょう取付部等の特殊な箇所における勾配を対象としたものであり、短い区間を想定したものである」という見解を示しております(別添資料1・下線部B)が、この見解は次の様に解釈が可能です。

「橋りょう取付部等」という文言中の「等」という文言は、「特殊な箇所」を「橋りょう取付部」に限定していないことを示しており、かつ、「短い区間を想定」とあるものの、その「短い区間」の定義もありません。つまり、「特殊な箇所で短い区間」と判断できる路線部ならば場所を問わない、と言えます。

 「東西線」計画で問題とされる青葉山区域の勾配については、青葉山区域は「機種選定時に問題とされているほどの標高差を有する特殊な箇所」であると言え、急勾配である区間は、「東西線」の場合「全線」ではなく、むしろ路線全体からすると「短い区間」である、と言えます。公表されているルート案から推測しても、青葉山区域が連続して60/1000としても、先に申し上げた海外における前例・現在のLRVの登坂性能をもって説明することにより、勾配67/1000の但し書き規定は適用可能ということになります。いずれにしても、勾配の問題はLRT導入に支障にならないと言えます。

続いて、LRTの導入空間につきまして申し上げます。「政府答弁書」には、俗に言う「27m道路説」については承知していない旨の記載がある(別添資料下線部D)ことから、同説には法的根拠がないことは明らかです。また、「LRTについては、今日においても、地下・高架等を活用することは制度的に可能である」と明記されております(別添資料1下線部E)。

以上申し上げた事項から、現行「軌道法」下においても、路上軌道・専用軌道・高架・地下線を組み合わせてLRT路線を建設し、「例外規定」という「軌道建設規程」・「軌道運転規則」内の「命令」を適用し本来のLRTの性能を発揮させることで「東西線」の費用対効果比を飛躍的に高めることは、現時点で充分に可能と考えられます。また、平成11年9月18日に行われた仙台市内の市民団体「仙台高速市電研究会」(以下「高研」と略)主催の定例会において、建設省都市局街路課課長補佐・横山克人氏は、各命令中の「例外規定」適用・各種軌道の組み合わせによるLRT実現の可能性について否定しておりませんでした。

「政府答弁書」は、LRTを含む路面電車整備のための各種補助制度を紹介しており(別添資料1下線部F)、かつ、巻末には「今後ともLRTを含む路面電車の整備の促進を図ってまいりたい」と明記されております(別添資料1下線部H)。つまり、この「政府答弁書」は、我が国の政府がLRT整備に前向きであることを示しています。

政府がLRT整備に関して前向きである見解を示している以上、「政府答弁書」内の「軌道法及び同法に基づく命令については、事案に応じた適切な運用を行っている」旨の文言(別添資料1下線部G)は、「個々の事業者から『例外規定』適用の申請がなされた場合は、『例外規定』という『軌道法下の命令』を事案に応じて柔軟に対処する」と示しているに等しいと言えます。

それにも関わらず、市当局が「法的規制によりLRTの『東西線』への導入は不可能」と見解することは、LRT整備に前向きである政府の見解及び方針に逆行し、LRT想定下における「東西線」計画の是非を国に問うこともなく市当局自らが「規制の殻」に留まることに他ならないと言えます。また、LRT整備に前向きである旨を示している「政府答弁書」内の文言を引用して「LRT導入は不可能」と公言することは、政府のLRTに対する前向きな姿勢を歪曲して広報することに等しい言えます。

費用対効果比・「実際の利用者」にとっての利便性・現在市当局が「東西線」計画に求めている輸送力・登坂性能等諸性能から判断して「東西線」への導入機種はLRTが最適と考えられ、以上申し上げたとおり、政府によりLRT整備に関して前向きである見解及び方針が示されている以上、「東西線」へLRT導入すべく再考すべきと思案いたしますが、この点につきまして市長御自身の御見解を賜りたいと存じます。

また、「政府答弁書」が官報号外にて一般に公表された日は平成11年10月12日であります。一方、前々回の小生の質問(同年9月1日付)に対する推進室長の御回答において「政府答弁書」が引用されておりましたが、その御回答は同年10月8日付でありました。つまり、市当局は一般に公表される以前より「政府答弁書」について承知していることになります。いかなる情報源により我々市民に先駆けて「政府答弁書」について市当局が承知したのか、是非御教示下さい。

リニアモータ推進式地下鉄道(以下「リニア地下鉄」と略)想定下における「東西線」の建設費を、市当局が他都市の最近の実例より大幅に安価に見積もっていることに関する小生の疑問・質問に対しては、推進室長より「仙台市では、地下鉄南北線の実績により『東西線』も他都市の実例より安価にて完成可能と考えられるので、現在の市当局の公表額(2710億円・約190億円/km)は妥当である」旨の御回答がありましたが、この御回答が正当であるためには次に申し上げる質問に対して合理的な説明がなされなければなりません。

推進室長は御回答の中で、「地下鉄南北線を建設した当時、他都市の標準地下鉄が約200億円を超えていたときに、仙台市では約160億円/kmで出来た実績がある」とお話しされております。つまり、当時の他都市の標準地下鉄の建設費を約200億円/kmとすると仙台市ではその80%の建設費で完成できた、ということになります。

リニア地下鉄の最近の前例は東京都営12号線や神戸市営海岸線がありますが、建設費は、前者(環状部)は約340億円/km(※2)、後者については約300億円/km(※3)となっており、現在の「東西線」の公表額と大幅な差が生じています。
(※2) 毎日新聞平成11年5月30日記事の掲載データより算出
(※3) 社団法人日本地下鉄協会「平成10年度地下鉄事業計画概要」データより算出

 地下鉄南北線の実績通りにこれら前例の80%で完成させるとすると、リニア地下鉄想定下の「東西線」の価格は、東京都営12号線の建設費の80%とすると約272億円/km、神戸市営海岸線の建設費の80%とすると約240億円/kmとなり、総工費はそれぞれ約3810億円、約3360億円となります。つまり、例え「南北線の実績」通りに建設費が圧縮できたとしても、それでも現在の「東西線」の公表額である2710億円と大幅な価格差が生じることになります。

言い換えれば、リニア地下鉄想定下の「南北線」を市当局の公表通りの190億円/kmに収めることが可能であるということは、東京都営12号線の建設費の約56%、神戸市営海岸線の建設費の約63%にまで圧縮することが可能である、ということになり、「南北線の実績」よりも大幅な建設費の圧縮が可能であることになります。これだけの建設費の圧縮が可能である合理的な根拠とは何か、是非御教示下さい。

運賃に関する質問に対しては、「初乗りがいくらかということについては、地下鉄南北線と同等であり、現時点においては開業時期も公表しておらず、南北線の運賃改定との関連もある」とのことで、具体的な運賃額についてはお答え下さいませんでした。それに対し、以下に質問申し上げます。

市当局は、広報資料「東西線の概要」において、リニア地下鉄想定下の「東西線」の採算性について「単年度黒字化に15年、累積債務償還に27年」と公表しております。一般に事業採算性があると見なされるのは累積債務償還が30年以内と言われていることから、市当局は「採算性が認められる」と見解していることになります。そのように市当局が公表している以上、「採算性が認められる」根拠となる運賃額が具体的に設定されていなければなりません。その運賃額の設定につきまして、具体的かつ明瞭な形式で御教示下さい。

リニア地下鉄想定下における「東西線」の採算性に関して、「高研」は独自に行った試算を公表しております(別添資料2)。市側からは具体的な設定運賃額が公開されていないので、試算を現在の南北線の運賃額を基準に行っているとのことです。

それによりますと、「1日あたりの利用者数が市側の公表通りの13万2千人としても、単年度黒字化に21年、累積債務償還に38年を要する」と試算しております。つまり、現在の南北線の運賃を基準に収支計画を算定したとすると採算性が全くない、ということになります。

言い換えれば、事業採算性があると市側が試算しているということは、運賃設定額を現在の南北線より割高に算定している可能性が極めて高いと考えられます。現在の南北線の運賃は、利用者からすると割高感の否めない運賃額設定(初乗り3kmまで大人200円、以下3km毎に240円、290円、320円、350円)となっており、それに対する不満の声も少なくありません。もし、現在の南北線よりも割高な東西線の運賃額を当てはめるということになれば、東西線開通後は南北線の運賃値上げをも想定しているということになり、そうなれば利用者の支持は急激に低下することが懸念されます。

また、「高研」による同試算によると、建設費が予定より5%上昇した場合、一日あたりの需要が予測の9割に留まった場合、建設費の財源の一つである企業債金利が現在の2.1%から3%に上昇した場合のいずれか一つが発生しただけでも事業としての採算性が認められないと試算しております。

 「都営12号線」のように建設費が予定より44%も上昇しその結果償還計画が破綻した前例があり、南北線の前例のように需要が予想の約半分にしか到達しないということもありました。企業債金利については、現在の超低金利時代が長期間に渡って続くことは考えにくく、むしろ長期的に見ると上昇する可能性が極めて高いと考えられます。これら事項を勘案すると、素人目にも、「リニア地下鉄東西線」計画において以上3つの「負のシナリオ」が同時に発生する可能性が極めて高いのではないかと考えられます。そうなれば、同計画の採算性は全く認められないことになります。

 この試算が示されているにもかかわらず、市側が「リニア地下鉄」想定下の「東西線」の採算性が認められると主張しているということは、同試算を覆せるだけの合理的根拠があるということになります。その根拠とは何か、是非御教示下さい。

現在市当局により公表されているルート案に関する質問に対し、現ルート案を合理的としている根拠として推進室長は、「新たな東西の都市軸の形成を目指すことや、本市の東部や南西部の鉄道空白域の交通需要に対応すること等の観点から、現状及び将来の土地利用、他交通機関との連携、導入空間の確保の容易性、環境への影響、軌道系交通機関としての望ましい線形、利用者の利便性、採算性からみた事業化の可能性等を総合的に判断した」と御回答されておりますが、これに対し、以下に質問申し上げます。

小生は前回の質問において、「利用者の立場」から見た現ルート案について、「仙台駅東側の卸町地域では人口密度の低い地域をわざわざ通過させ、JR仙石線の乗客が延長線である青葉通り沿線に行くのに仙台駅で遠距離移動を伴う乗り換えを強いており、さらに、仙台駅西側の東北大学や八木山地域でも地形の関係で駅まで歩いて利用できる人は極めて限られ、バスで結節するにも駅で遠距離移動を伴う乗り換えを強いており、ルート内には交差点に沿った急カーブが随所に見られるために速度低下を強いられることで速達性の確保が困難であることから、大多数の利用者にとって利便性は極めて低いと考えられる」ことを問題点として申し上げました。つまり、現ルート案が各種見地から合理的である、と断言するためには、これら問題点の各々に対して合理的な説明がなされていなければなりません。

それにもかかわらず、上記の推進室長の御回答は、小生が申し上げた問題点に全くと言って良いほどお答えになっていないと言わざるを得ません。

現ルート案の問題点につきまして更に付言致しますと、南西部側の終点である八木山動物園付近は、地形上八木山地域の「頂上」となっており、八木山地域の利用者が利用するためには駅まで「登ってくる」形となり、実用的にも心理的にも不便であると言えます。

また、本年3月にはJR仙石線の地下線が開業しますが、同線の開業後には、利便性向上のために青葉通り沿線への延伸の要望が高まることが充分に予想されます。もし、現ルート案のままリニア地下鉄で建設すれば、リニア地下鉄の軌道形態がJR線と異なるために仙石線の延伸が阻害されることとなり、従来の交通機関である仙石線との連携が不便となるだけでなく、仙石線の利便性をも損なうことが懸念されます。

以上申し上げた問題点にも関わらず、それでも現ルート案を最善と見解しているということは、以上の各問題点に対して合理的な説明が可能であることになります。以上質問に関しまして、市長御自身の御回答を賜りたいと存じます。

「東西線」計画においては、費用対効果比・「実際の利用者」にとっての利便性・現在市当局が同計画に求めている輸送力・登坂性能等諸性能から判断してLRTが最適であり、現在の政府の前向きな見解及び方針を勘案すると導入の実現の可能性が高いと思われます。

また、市当局により公表されている現ルート案は「東北地方交通審議会」からの答申を受けているとありましたが、同答申には法的拘束力がありませんので、同答申を根拠に現ルート案の変更は不可能、とは言えません。現ルート案は大多数の利用者にとって利便性が極めて低いと考えられることから、抜本的に見直す必要があると思われ、また、見直しは法的に可能であると思われます。

いわんや、各種状況からLRTが最善と判断できる状況にもかかわらず、国にLRT想定下の「東西線」計画の是非を問うこともなく「法規制により不可能」と市当局が見解することは、政府のLRTに対する前向き見解及び方針に反することに等しいとも言えます。
以上申し上げた点につきまして市長御自身の御見解を賜りたいと存じます。

「東西線」計画は、巨額の費用を投じ、かつ、これからの仙台の都市整備の方向性を決定付ける重要な施策であります。この事業が成功を収めるためには、「実際の利用者」の立場に立った上で費用対効果比が最大となるように計画を立案しなければなりません。財政状況が極めて厳しい状況下にある現在の仙台市においては、その必要性はなおさらのことであります。

機種選定は財政上の見地から重要な項目であり、機種について、正しい情報が広く公開され、かつ、機種に関して正しい情報・知識に基づき合理的根拠の上において選定されなければなりません。これが実現するためには、市行政側が機種について正しく理解する必要があるのは、申し上げるまでもありません。

仙台市都市整備局総合交通政策部長・高橋秀道氏は新聞投書において、「東西線」へのLRT導入について否定的な見解を示されております(平成11年12月14日河北新報「論壇」、別添資料3)。その理由として、@「路面を走る電車」の法律の規制による速度・輸送力・登坂能力の不足、ALRTの特性を活かすためには広幅員道路が必要であり、道路整備に多大な時間と費用を要するため、BLRTが走る道路では大規模な交通規制が必要となり、自動車交通量が仙台市電廃止時より大幅に増大している現在では市民生活に多大な影響を及ぼすため、の3点を挙げております。しかしながら、この3点を理由にLRTの「東西線」への導入を否定していることに対して大いなる疑問を抱いておりますので、仙台市政の最高監督者である市長に対し次の通り申し上げます。

先に申し上げたとおり、「政府答弁書」に記載されている事項により現行法規制によらないLRT導入が可能と考えられることから、理由@は根拠がないと言えます。

「LRTの特性」とは、路上軌道の他に、状況に応じて専用軌道・高架線・地下線を組み合わせ、交差点においてはLRT優先信号を設定すること等で、乗降の容易性・速達性を確保することで利便性を向上させていることであり、「LRT」とはその特性を有する「システム」を意味します。高橋氏が示されている「LRTとは車両性能を向上させた新しいタイプの路面電車」旨の説明は、正論とは言えません。

利便性の向上により利用を促すことで自動車交通量を減少させることで道路空間の有効利用を図るのがLRTの効果であり、欧米ではこの考え方に基づいてLRT導入・整備を進めています。つまり、高橋氏が示されている理由Aは、LRTの特性・効果を充分理解されていないことの現れであると言えます。

LRT路線が都市間バイパスや市街地の中心部など、LRTの流れと無関係な交通が集中する箇所と大幅に干渉する部分では、地下線・高架線の立体交差にすることで大幅に解決できます。また、交通量が比較的少ない横丁(表通りから横へ入った通り)との交差点においてLRT優先信号を設定しても、LRV通過による横丁の交通遮断は高々数分に一度程度であるため、実用上問題ないと考えられます。実例は欧米に多数あり、それらを勘案すると高橋氏が示す「LRT導入には大規模な交通規制が必要」なる発言には合理的根拠がありません。従って、理由Bも合理性はありません。

また同投書では、「東西線」へのLRT導入を不可能としている根拠として「政府答弁書」内の文言を引用しています。LRT整備に前向きである旨を示している「政府答弁書」内の文言を引用して「LRT導入は不可能」と公言することは、結果的に政府のLRTに対する前向きな姿勢を歪曲して広報していることになるとすら言えます。

以上申し上げた事項を総合しますと、高橋氏の同投書は、LRTについて結果的に虚偽の情報を世間に流布していることとなり、LRTに対する誤解が市民に広まる恐れすら懸念されます。LRT等機種に関しても、当局による正しい理解・正しい情報に基づいた上で公言するのが、市行政のあるべき姿勢であるのは申し上げるまでもありません。正しい情報なしには、市民は正しい判断が出来ないのです。当局の正しい理解に基づいた上で正しい情報が啓蒙され、「東西線」計画に関して市民が正しい判断を可能とするよう、仙台市政の最高責任者である市長御自身におかれましては、当局に対する厳重な監督を宜しく御願い申し上げます。

市当局からの回答の中で、市民局市民部公聴相談課(以下「相談課」と略)長は、小生からの手紙も市長が御覧になり、御回答についても市長の御決済を受けた上で御回答されている旨の御指摘をされておりました。それにもかかわらず、今回の御回答も市長御自身によるものではなく、かつ、御回答内容に納得致しかねると前回質問に同封して返却致しました市当局からの御回答文も、今回そのまま同封されてきました。市政に対する質問・意見に対する市長等行政からの真摯なる御対応を大前提とする「まちづくり提案制度」においてこのようなことが行われたことに対し、大変遺憾に思います。

以上の行為は、市長御自身に御回答頂きたい旨の小生の願いを市長御自身が御覧になったにもかかわらずその願いを無視され、その上小生の質問に充分回答されていない回答文の発行を御決済・御承認されていることになります。無論、そのような行為は社会通念上容認されません。従って、市長御自身の御意志によりそのような行動をお採りになったとは、にわかには信じ難いものがあります。

また、相談課長は「場合によっては市長が直接はがきにて御回答になっている」とも御指摘されております。財政難の中、これからの仙台の都市整備の方向性を決定付ける程重要であると言える「東西線」計画について現計画が合理的である、と市長御自身がお考えになっているのでしたら、市長御自身から納得の行く御回答があって然るべきと思います。また、御回答の方法として、はがきに限る合理性はありません。

今回お送り下さった御回答も、小生の現「東西線」計画に対する疑問を解消させるに程遠いものであると言わざるを得ず、かつ、返却致しました前回の御回答文も何の修正もなくそのままお送り下さったことに対しましては、大変遺憾に思います。つきましては、御多忙の中御回答下さった関係各位には誠に恐縮ではございますが、お送り下さった今回及び前回の御回答文を返却申し上げます。

この質問文を市長御自身が実際に御覧になっているのでしたら、市側も重要な施策と位置付けている「東西線」計画に関する以上の質問・意見に対して市長御自身におかれまして明快で納得の行く御回答・真摯なる御対応を下さることで、市長御自身が実際にこの質問文を御覧になっていることの証とされます様、何卒宜しく御願い申し上げます。

草々

平成12年1月10日

高井 憲司

******** 以上本文 ********
 以上質問文に対し、市長御自身よりどのような御回答を下さるのかお待ちしたいと思います。仙台市の財政が苦しい中これからの仙台を左右する、と言える「東西線」計画についてきちんとした考えをお持ちでしたら、市政の最高責任者として「3度目の正直」、きっと明快で納得のいく説明を下さることでしょう。今後動きがあれば、随時アップしたいと考えております。御注目下さい。