Part 1 「クルマ中心主義」・・・もう「おわり」だよっ!


   クルマは「場所くい虫」だっ!



 まず1の案について考えてみましょう。なるほど、もっとも考えつきやすい案だと思います。しかし、仙台市のような大都市ではこの案を中心にすることはできるのでしょうか?
 朝夕の通勤時間帯、休日の昼下がり。2車線の「せまい」道路は言うに及ばず、場所によっては6車線の「広い」道路でもクルマでビッシリ、延々と続く赤ランプの列に「こんなにたくさんの人、どこから湧いて出たんだー?」とボヤいた経験のある人は多いと思います。


 (左)休日・昼の仙台駅前の通り。片側3車線の広い道路もクルマでビッシリ。延々と続く赤ランプの列にウンザリした経験を持つ方は少なくないはず。
 ところで、こんなに「たくさんの」クルマの中にはいったい全部で何人がいるのだろう、と考えをめぐらすと・・・


 ところで、「こんなにたくさんの人」とはいったい「どれだけたくさん」なのでしょうか?
 考えたことあります?ない? じゃ、一緒に考えてみましょう。



 上の写真は、私たちが一般に使っている普通乗用車(a)(いわゆる「5ナンバーサイズ」)、軽乗用車(b)でそれぞれの車種の最大寸法が書かれています。これだけのスペースを乗車人員だけで占有しているわけです。
 しかも朝の通勤なんかでは1人で。
 普段は当たり前と思っていても、こう言われただけで「結構場所くいなんだ」って思いません? えっ?ピンとこない? じゃ、「場所くい」の程度について、もう少し説明を加えましょう。
 もし、このスペースに人を立たせたら何人立てるのでしょう?この状況は、ちょうど通勤電車やバスの立席に似ています。1人で40cm四方のマスに立つ、として計算すると次のようになります。
     
  • 普通乗用車:44人  
  • 軽乗用車:24人
 (左)大人ひとりが立つのに、40cm四方のスペースが必要として計算している。このスペースは、バスなどの立席定員などを計算するときに使う。実際は、ほとんどの人にとってはこのスペースではかなり余裕がある。

 (右)40cm四方の「タイル」をクルマのスペース内に並べた状態。クルマのスペースにはこれだけの数のタイルが並べられる。つまり、クルマのスペースにはこれだけの人が立てるということである。しかも、1人あたり40cm四方のスペースはかなり余裕があるので、もう少し「きつく」立たせたら、もっとたくさんの人が立てる。
 言い換えれば、電車やバスの立席ではこれだけの人を余裕を持って運べるスペースを、クルマではわずか1〜数人で占拠している、ということである。

 なんと!「小さいサイズ」がウリの軽自動車でさえ電車なんかよりずーっと
「場所くい」だ。
次は、言い換えてバスや電車が動かなくなったとき、それらの乗客を全てクルマで運ぼうとしたらどうなるでしょうか?もっと、すごい数字が出そうな気が・・・・
 仙台市営地下鉄南北線で走っている電車は、1編成4両の定員が約570人、バス1台で約70人として、定員通りの乗客を運んでいるとして計算してみましょう。
 朝のラッシュ時、通勤・通学客1人1人がみなドライバーとして普通乗用車に乗せて、縦1列に並べる(クルマの車間は1.3mとします。)と(以下、このサイトでは、渋滞計算は「普通乗用車で車間距離は1.3m」の条件で計算していきます)、下の長さになります。
     
  • 地下鉄電車1本=クルマ約3.4km  
  • 路線バス1台=クルマ約420m

 電車なんか、1本分だけの乗客でも1列に並べて約3.4km、片側3車線の道路に並べたても約1.1kmの渋滞!仙台市内だったら、渋滞の最後尾に付いたら先頭が見えるところなんかほとんどありません。言い換えれば、それだけ長い渋滞も、クルマの中の人全部を電車にギュッと押し込めば、たったの1本で済む、ということです。
 (上)は、長さ約84m、定員約570人の地下鉄電車(仙台市営地下鉄南北線)。この電車1本分の乗客が全員ドライバーだとして車に分乗させて1列に並べると、(下)のように約3.4kmと、ずっと長くなってしまう。
 言い換えれば、これだけ長い渋滞も、乗員全員を電車に乗せればずっとコンパクトにできる、ということである。

 クルマが、道路上でいかに「場所喰い」であるかがお分かりいただけるかと思う。これから、クルマに乗る「人の数」が少し増えただけでも、その「人」がクルマに乗ることでとる「スペース」はかなり増えてしまい、道路をいくら広げても「いたちごっこ」の状態になるのは、容易にご想像いただけよう。 

 えっ?「高校生やお年寄りはほとんど運転しないからそれはヘンじゃないか?」ですって? まあ、都市交通ではクルマはいかに「場所くい虫」か、をお分かり頂きたかったのでして・・・
 では、仙台市内の一台あたりの平均乗車人数は1.25人※と言われているので、この数字を採用して渋滞の長さを計算し直すと・・・
※桂 久男・東北工業大学教授:平成10.10.21河北新報夕刊「東西交通軸緊急対談」中の発言より
   それでも渋滞は1列で約2.7km! 3列にしても約900m!
 それでもやっぱり、クルマが「場所喰い」であることには変わりないっしょ?
 また、ラッシュピーク時には約3分に1本の割合で運転されるので、1時間ストップしたら大幹線の片側3車線道路でさえ18kmの渋滞・・・
 電車は絶対に止まって欲しくないモンですなあ・・・
 クルマの「場所くい」パワーをお分かりいただけたしょうか? 道路を、いくら大金をかけても、それだけではクルマをさばくには早く限界が来るだろうと言うのは、想像に難くないでしょう。


   (写真左)仙台駅前の大道路。こんな(仙台の中では)広い道路もクルマであふれている。「いっぱいの人出だなあ」と思っても、この写真の範囲内のクルマの中の人は、高々数十人〜百人強だろう。
 「いっぱいいるなあ」と思っても、実は、たった1本の電車(写真右・仙台市営地下鉄南北線)の中に楽々収まるんだ。しかも、人によってはシートで居眠りしていてもオツリがくるくらい「ガラガラ」。

 クルマの「場所くいパワーぞここにあり」って感じだな! 





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