「郊外分散」は大都市の「ガン」





 第1案の、大都市では中心部と郊外との連絡をクルマ中心に任せることが、一見正しいようで実は的外れなものかをお分かりいただけたのではないでしょうか?
 今まで「大都市でもクルマを動きやすくするのがベスト!」とお考えだった方、ご感想はいかがでしょう? 「いくら道路を造って(広げて)もなかなか渋滞が良くならないのはなんで?」という方、そんな疑問の答えになりましたでしょうか?
 「中心に一極集中させるから渋滞が起こるんだ。バスや電車よりもクルマは使いやすいし、この便利さは手放したくないし・・・。それならいっそ、中心に行かなくても済むようにすればいいんじゃない?」というのが第2案の趣旨です。これはどうでしょう。
 高度経済成長期、仙台市は、急激な人口増加に対応するため、市街地を郊外にまで広げて団地や宅地を造成してきました。その結果、たくさんの人が郊外に住むようになりました。
 道路拡張も盛んにおこなったのですが、郊外から中心へたくさんの人がクルマで乗り入れるようになり、そんな拡張した道路も渋滞のクルマでいっぱいになって、街中の移動はなかなかラクになっていないのは、ご存知の通りです。
 「買い物やレジャーは自分の家の近くにすれば、わざわざ遠くに行かなくて済むしラクだ。」と言う住民と、「中心地は土地代が高いし、車が渋滞するから客が来てくれない」と言う店舗との利害が一致、法律(大規模小売店舗法)による規制が緩和されるようになってから、郊外にジャンジャン大型店舗が建っています。
 郊外の広い範囲からクルマで来てもらえるように広い駐車場を造って。これはこれで便利になったとは思いますが・・・・・
 実際はどうでしょう。確かに便利な面もありますが、やっぱりここでもクルマの列・列・列・・・ 休日の日中になると、中心部に負けず劣らず道路まで「駐車場」と化してしまう光景が少なくありません。人や店だけでなく、渋滞まで郊外に引っ越してしまった感じです。

 これでも、「クルマ」=「常に便利」の公式が成り立つと言えるでしょうか?




 (左)仙台市内のある大型郊外店舗。クルマで来るのに便利なように、幹線道路沿いに設けられ、店の前には広大な駐車場が用意されている。駐車場のスペースを大きくすれば収容できる台数は増えるが、広い駐車場を目当てによりたくさんのクルマが目指すことになると周辺の渋滞が増えるのでは・・・? また駐車場が広くなると、駐車スペースを探したり駐車してから店まで歩くのが大変になる。(写真は一部加工)

 (中)(右)この店舗前の幹線道路の光景。特に右折で店舗に入ろうとする車の渋滞がひどい。休日になると良く繰り返される光景である。いくら駐車場が広くなっても、クルマが増えて渋滞がひどくなるだけなのでは・・・?

 こんな状況でも、「クルマ」=「常に便利」の公式が成り立つと言えるだろうか?



 「郊外店舗は便利だからいいじゃん」ですって?まあ、その考え方は否定はしませんが・・・
 でも、私たちが住んでいるのは「百万都市」仙台市。小さな町にはない機能・サービス・イベントなどが充実していなければ、つまりそれらの面で小さな都市より「有利」でなければ、大都市に住んでいるメリットってあるんでしょうかねー?
 大型郊外店舗は、仙台市のような大都市ばかりではなく、人口数万〜十数万人の小都市にもたくさん出来ています。その進展ぶりは、古くからの商店街の存在すら脅かしている、という話は珍しくなくなっています。
 「人口の中心」が郊外に分散したことで、たくさんの人は、「中心に行くよりは」便利な大型郊外店舗に足が向かいやすくなります。そうなると、中心部に行く客は必然的に減少して中心部の大商店街は大きな打撃を受けることになります。今各地で「空洞化現象」が深刻な問題になっています。
 中小都市だけではなく、仙台市クラスの大都市でも問題になっているといいます。大商店街にしかないような専門店も寄り集まって魅力のある中心商店街が衰退していくというのは、大都市に住む利用者として寂しい限りです。


 仙台市中心部の商店街「一番町商店街」。休日ともなると大勢の人でにぎわう。こんな大きな商店街でも、最近では出足が下降気味だとか・・・
 「空洞化現象」は、このような大都市の中心部の商店街でも問題になっていると言われている。不景気のせいもあるのかも知れないが、やはり「都市交通問題」も大きく絡んでいるのでは?・・・


 決して郊外大型店舗の経営を批判しているわけではありません。「民間企業」である以上、客の需要に反したり採算を割ったりする事業は出来ない相談ですから、そうなることはやむを得ないのです。
 むしろここで問題にしているのは、中心部と郊外間の移動の不便さが結果として郊外分散型の都市構造を生みだし、それが都市の活力を削ぐことになった、ということです。
 東京のような「巨大都市圏」では「一極集中」がよく問題になりますが、中〜大都市の場合は、中心部に店舗だけでなく多様で高度な機能を集中させ、それら「サービス」をより広範囲の人々で共有できるような都市構造にしなければ、その高度な機能は生かし切れなくなって都市機能は極度に衰退しかねません。
 郊外分散型は、極端な話「小さい街の寄せ集め」と同じようになってしまいます。これでは都市の魅力は激減です。
 そーでしょー?退屈な「杜の都」なんて、私はイヤだな。
 とゆーことで、第2案は、一見合理的に見えるようで実は都市のパワーを奪ってしまうようなトンデモない「ガン」と言えるのではないでしょうか?
 しかも、この「ガン」は仙台市内でも確実に進行しています。それを知ってか、仙台市もこの対策に乗り出しているようです。何とか早く「治療」していただきたいと思います。確実性も重要ですが、この「治療」はスピードが必要と、私は見ています。

 なんとかしましょうよ! みなさん!





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