Part 2 「税金」は「贅金」じゃなーい!


「仙台東西線計画」ってなに?




 パート1では、仙台市をはじめ中〜大都市では、クルマ中心の都市構造にすることがいかに的外れでこれからの時代に合わないか、ということを述べました。これをお分かり下されば、このサイトにいらっしゃた方は少なくとも「化石」ではないでしょう。
・・・ということは、残るは第3案ということになります。
 中〜大都市では公共交通機関が絶対に必要なのです。
 公共交通機関といっても多種多様で、皆さんが思いつくだけで、地上鉄道(JR線のようなタイプ)、地下鉄新交通システムモノレールバス・・・などがあると思います。これらの交通機関は、当然それぞれ投資額や持っている特性が違っており、状況に応じて使い分けなければなりません
 ここで1つ1つ説明すると話が長くなってお分かりになりにくいと思いますので、差し当たってここでは、仙台市で今話題になっている「仙台東西線」問題に絞って私なりの考えを話したいと思います。
 まず、仙台市でホットな話題「仙台東西線」問題について概要を説明しましょう。
 仙台市内の方は御存知と思いますが、念のための復習です。他都市の方はまず今から説明することをご理解いただければと思います。
 仙台市は、下の図の通り鉄道路線としてJR線、そして地下鉄南北線が走っています。

 仙台市の航空写真。「仙台東西線」の路線として候補に挙がっているのは上の黄色い線。緑・青線はJR線(青線は地下線部分)で、空色線は地下鉄南北線、橙線は貨物線。各線上の黄色・桃色の点は駅のおおよその位置を示す。

 地下鉄南北線に比べ、JR線の駅の間隔は全体として長いことがお解りいただけよう。特に貨物線には旅客駅はなく都市鉄道として機能していない。ちなみに、この貨物線の所管は、旅客鉄道会社であるJR東日本である。

 JR線沿線の人口は多いにもかかわらず駅の間隔が長いため、JR線は全体的に都市内鉄道としての機能は小さいのが現状である。何ともったいない話か。

 話を本筋に戻すが、「仙台東西線」は、仙台駅(赤い点)を中心に西の青葉山(東北大学が立地)や八木山地区と東の東部地区を結んでおり、東端は仙台東部道路のインターチェンジ(図の"IC"の部分)にごく近い。これらの地区は今のところ鉄道が通っておらず、整備が急がれている。

 既にルートについて様々な異論があるが、どんな種類の鉄道になるか(機種)も重要である。このサイトでは、とりあえず後者の話題を取り上げる。なぜなら、これで毎日使う「足」の使い勝手が決まってしまうからである。

 計画時点から「リニア地下鉄」が想定され、平成12年3月に仙台市長が最適な機種として決定した。が、それはこれからの「杜の都」にとって本当に正しいのか? 費用面といい、使い勝手や拡張性といい・・・

 写真出典:「仙台市政だより」1998年11月号 P4〜5 より抜粋し、一部を加工


 ご覧頂くとお分かりの通り、仙台駅の西側と南東部〜東側には鉄道路線がありません。
 仙台駅西側には商業地域が密集し、その西側の青葉山には東北大学の広大なキャンパスが広がっており、その南側には八木山地域という住宅地が広がっています。また、南東部地域も住宅が密集しており、流通卸地域もあります。
 これらの地域の移動は今のところ、クルマまたは時間が読めなくて経路の分かりにくいバスでの移動を強いられ、不便な地域となっています。この不便さを解消しようと計画されているのが「仙台東西線」で、仙台駅を中心にして鉄軌道を東西方向に敷こう、というものです。
 仙台市の発表によると全長は約14.0km、1日あたりの予想乗客数は13万2千人、ほぼ全線が地下で総工費は約2710億円になるんだそうです。市は、建設費などを「リニア地下鉄」を想定して計算してきました。そして平成12年3月、仙台市長さんはこの想定通り「リニア地下鉄」に決定しました。
 市はこの計画を「21世紀の街づくりを先導する」※計画と謳っています。一見合理的に見える現在の計画ですが、いったい本当に「正しい」のでしょうか?
※仙台市都市整備局総合交通政策部東西線推進室パンフ「21世紀の街を育む仙台市東西線」
 すでに通過ルートの問題が挙がっていますがもう一つ大きな問題は、「どんな種類の鉄道にするか」(つまり機種)です。
 単なる鉄道趣味の問題ではありません。これで、私たち市民が毎日使う「足」の使い勝手の善し悪しが決まってしまうのです。使い勝手が悪ければ当然、使ってくれる人はグンと減ってしまい、本来の目的を果たすことはできなくなるでしょう。
 もし、「クルマを乗り捨てても使いたい」と思うくらいのモノでなければ、「使えよ」って言われたって、そんなのイヤでしょ?
 ルート同様、いや考えようによってはルート以前の問題でしょう。この議論は、一部では「鉄道マニアの遊び」「枝葉の議論」のようにとられている向きもあるようですが、決して「遊び」でも「枝葉」でもない・・・
 計画の「はじめの入口」であり、「幹」と言えるでしょう。計画者でもクルマのドライバーでも、建設工事を請け負う業者のためでもない実際に利用する「お客様」にとっての使い勝手が決まる大問題だからです。
 この「仙台東西線」の問題の場合は「はじめよければ全てよし」とは言えません。しかし、「はじめ悪けりゃ全て悪(あ)し」ということだけは言えると思います。
 「東北の中枢都市に地下鉄は当たり前」という声もあるようですが、本当にそうなのでしょうか?
 もっと良い方法があると思うのですが、それは追い追いこのサイトでお話ししたいと思います。




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