地下鉄・増えりゃいいってもんじゃない





 今までの話を聞くと、中には「やっぱり地下鉄が一本だけだからお客は増えないんだ。東西にも敷けば相乗効果でお客は増えるんじゃないの?」と言う方もいらっしゃるかと思います。
 『地下鉄南北線や「東西線」の波及力を検証・評価し、トータルな効果を市民に提示して・・・』※と、仙台市長さんも南北線と「東西線」とのネットワーク効果を検証したい、とおっしゃっています。
※藤井 黎(ふじい はじむ)・仙台市長の発言:河北新報H12.2.29記事より
 地下鉄が東西・南北の2本になれば、確かに乗客は増えることは増えるでしょう。しかし、今までくどくどと申し上げたことから、乗客の増加分を相殺する程の負担が増えることが予想されます。
 え?「それだけでは信用できない」ですって? では、ここでも「先輩」の実績を見てみましょう。「先輩」の一例として、仙台市よりも人口が多く、複数の地下鉄「ネットワーク」を持っている札幌市地下鉄を見てみましょう。
 札幌市の人口は約180万人で、仙台市の約100万人よりかなり多いです。地下鉄路線は3路線で、それぞれの路線は乗換駅でつながっており、乗り換えもできます。また、JR線以外には競合したり郊外から乗り入れてくる私鉄線がないのは、仙台市と共通しています。
 札幌市地下鉄は、人口が多くて、路線数も多くて、さぞかしたくさんの人が乗って儲かってそうだな、と思ったら・・・
 
赤字額は1年で約256億円!!(平成10年度札幌市交通局決算)
 しかも、私が知っているだけでも、昭和58年以降一度も黒字を出した年がない※のです。路線数が多い分乗客が多いとはいえ、やはり多額の建設費や減価償却費の負担からは逃れられないのです。
※札幌市交通局発表
 3本の「地下鉄ネットワーク」を持つ札幌市交通局の平成10年度の収支決算。札幌市交通局は、地下鉄の他に、路面電車・バスも運営している。

 赤字額が支払利息とほぼ同額であることが明記されている。つまり、地下鉄建設に伴う負担が経営を大きく圧迫してしていることである。

 「地下鉄ネットワーク」ができたからといっても、建設費の巨大な負担からは逃れられず厳しい経営を強いられていることを示す実例である。「東西線」計画の段階で既に6000億円を越える市債を抱える仙台市には、「リニア地下鉄建設によるネットワーク効果」を得るための莫大な負担を支えるだけの財政力があるのだろうか?

資料出典:札幌市交通局発行「さっぽろ市営交通NOL」より

 地下鉄も、需要に応じて路線を延伸・新設する必要もあるでしょう。そうなると、更に多額の建設費をつぎ込まなければなりません。たとえ補助金が出るとしても多額の資金をやはり借金でまかなわなければなりません。
 そうすると、借金の返済額は当然増え、それが新たな負担となります。せっかく返しかけていた借金がまた増えてそれが財政を圧迫したのでは大問題でしょう。
 仙台市が2本目の地下鉄を持てば債務が更に膨らみ、「先輩」達の悪い例の仲間入りになることが予想されるのではないでしょうか。しかも、仙台市の台所事情は決して芳しい状態ではないだろう、ということは前項でお話ししたとおりです。
 この苦しい家計の中、どこまで膨らむか分からない建設費をかけて「東西線」に「リニア地下鉄」を造ったとしたら、先の「都営12号線」の二の舞になる・・・ なーんてことにはならないんでしょうか? 心配だなー
 仙台市長さん、いかがでしょうか。以上の「前例」を考えると、「リニア地下鉄東西線」に大金を投資しても、ネットワーク効果によるメリットよりも、大きな負担の「副作用」の方で市民が苦しむことになる可能性の方がはるかに大きいのではないでしょうか? 
 それに、「地下鉄ネットワーク効果」というものは、どれだけ見込めるのでしょうか?「地下鉄ネットワーク効果」を検証、と一言で言うのは簡単かも知れませんが、実際に評価するのはかなり難しいのではないでしょうか?
 「地下鉄ネットワーク効果」の見込みすら出ていないのに、それでも、「リニア地下鉄東西線」を、ムリにでも今の案のままで進める必要があるのでしょうか?「仙台市の発展に必要」とか言って。
 私は、仙台市民の一人として申し上げますと、「杜の都」を「借金御殿」にしてしまうのはゴメンです。莫大な借金を税金で負担するのは私たち市民です。このことは忘れてはいけないと思います。みなさんのご意見はいかがでしょうか?
 しかも、「地下を走る鉄道」が「杜の都」仙台にとって不利なのはなにも「ふところ具合」だけではありません。「地下を走る鉄道」には、普段は気が付かなくて当たり前と思っていることにも、実は大きな「ハンデ」があるのです。
 


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