「杜の都」にふさわしい「シンデレラ」は?






 前の項では地下鉄の「悪口」を言ってしまいましたが、何も地下鉄の存在意義を否定しているわけではありません。例えば、東京の営団地下鉄などではちゃんと大量の乗客を輸送して採算も比較的うまくいっているのです。
 つまり東京などでは必要なアイテムなのです。建設費が高くて乗り降りが不便なのになぜなのでしょうか。
 「(クルマが事実上使えなくて)クルマよりずっと便利」という他に挙げられる理由は、「地下鉄にするだけの需要がある」からです。
 地下鉄で運べる人数は、1時間あたり約2〜10万人、リニア地下鉄は約2〜4万人です※。実際、時間帯や路線によってはその持てる輸送能力をフルに発揮しています。
※新谷 洋二「まちづくりとLRT」都市地下空間活用研究1998年4月号より
 陸上でこれだけの輸送性能を持てるのは、百数十mもの長い編成を組めて交差点も無く完全に優先通行できる地下鉄やJR線などの鉄道だけです。
 地下鉄のメリットは「輸送能力の大きさ」であることは今お話ししました。では、「仙台東西線」ではいったいどれくらいの輸送能力が必要なのでしょうか。
 現在の目標利用者数は先にお話ししたように1日あたり13万人で、1時間あたりの平均利用者数は、稼働時間帯を朝6時〜夜12時までと仮定すると約7200人です。
 しかし、実際はこんなに平均化するはずはありません。朝一番の電車と朝のラッシュ時の電車は、当然乗車している人の数が違うのは、みなさんもお分かりでしょう。
 ですから、普通の日(ごく一時的に急激な需要が発生する日(たとえばイベントなど)ではないごくありふれた日)の一番混雑する時にでも対応できるようにしなければなりません。
 ですから、1日あたりの利用者数よりも、むしろ1時間あたりの最大輸送量の方が重要な検討対象となります。これはどうでしょう。ちなみに、現在の仙台地下鉄南北線のダイヤでは定員で1万人強です。
 しかし、当然の事ながら、実際は定員通りではありません。一般に、電車の乗車率180%(定員の1.8倍の乗車人数)では、「混み合いながらも雑誌が辛うじて読める程度の混雑」と言われていますから、実際の仙台地下鉄南北線の輸送力は1万8千人/時位でしょう。
 ちなみに、これだけの人をクルマだけで運ぼうとしたら、必要な車線はどのくらいかを計算すると・・・
片側29車線!!!
 ・・・もうクルマだけで人を運ぼう、なんて考えは捨てましょう。おっと、話が脱線してしまった。話を元に戻して先に進みましょう。
 「東西線」の輸送力に関しては、市担当者の方から「東西線の需要見込みは、仙台駅の東側で1時間で約1万人」(※1)旨のお話がされています。
 また、以前は、新聞で市担当者の方の「地下鉄は1時間で1万2,3千人」旨(※2)のコメント記事もありました。
(※1)高橋秀道・仙台市都市整備局総合交通政策部長:平成11年7月17日「仙台高速市電研究会」定例会内での発言
(※2)谷沢 晋・仙台市都市整備局長:河北新報夕刊平成10.10.19「東西交通軸緊急対談」中の発言より
 いずれの数字を見ても、現在の仙台地下鉄南北線程の輸送力は必要ない、ということが分かります。つまり、どう多く見積もっても1時間で1万2〜3千人運べれば「基幹」としての「東西線」に採用する資格はある、とも取れるのではないでしょうか。
 「東西線」に(リニア)地下鉄ほどの輸送力すなわち2〜4万人/時は必要でない、ということはもう分かりました。それならばいっそ、他の機種で置き換えるのはどうでしょうか。
 仙台市に「地下を走る鉄道」をこれ以上造ることは、今お話しした通り、2〜10万人/時もの需要がないであろうことが分かりましたので、今まで長々とお話ししたとおりカネがかかり過ぎる割には効果が期待できないだろう、ということはもうお分かりと思います。
 こう考えていくと、単に「百万都市だから」とか「基幹鉄道だから」と言う「言葉」だけでは、「(リニア)地下鉄がふさわしい」と単純に言うわけには行かない、と言えるのではないでしょうか。
 では、「東西線」ではどんな交通機関がふさわしいのか、それを見回してみましょう。輸送力が足りて、安くて、乗り降りがしやすくてバスなんかと乗り換えやすくて・・・それがここでは「勝者」なのだ!
★バス
 1分に1本出るとしても約4200人/時、しかも乗り慣れている人以外には経路が分かりにくい。大都市の基幹交通ならば、誰にでも分かりやすくなければならない。渋滞や信号待ちに巻き込まれることが多く時間が「読めない」。基幹交通としては・・・×
写真:仙台市営バス
★新交通システム
 輸送能力は5000〜1万6千人強/時※。これは「ハードル」を越えているが、高架にする必要あり。ゴムタイヤは特殊な機構。建設費は60〜160億円/km※と高くつく。高架だからやはり乗り降りや乗り換えが大変。高架構造は、臨海地域など橋が多くなる場所では有利だが、仙台市などの都市の中心部〜郊外部間の鉄道としてはコストパフォーマンスを考えると・・・×
写真:ゆりかもめ
★モノレール
 輸送能力は新交通システムよりはやや多く(5000〜2万人/時※)建設費も割高(80〜190億円/km※)。やはり高架であり利点・欠点は新交通システムとほぼ同じ。新交通システムとほぼ同じように・・・×
写真:東京モノレール
※印のデータ:新谷 洋二「まちづくりとLRT」都市地下空間活用研究1998年4月号より


 一応一通り見回しましたが、うーーん、私はいま「ガラスの靴に合うシンデレラ」を探している王子様の気分なのだが、この面々の中には「シンデレラ」はなさそうだ・・・
 んっ? 「輸送力」が足りてるんだから、「モノレール」だって「新交通システム」だって、輸送力だけを見るなら・・・

コトが足りる

じゃないですかーー! 「東西線」に、何で「地下鉄」程のモノが必要なんだ?? よく分からないなー

 リニア地下鉄より「安い」新交通システムやモノレールでさえ×なのですから、もしリニア地下鉄が「ガラスの靴」に足を入れようものならその瞬間・・・
 えーい おのれーー 余を愚弄(ぐろう)する気かー!?
 者ども、ひったてーーい!!
・・・ 
 となるのではないでしょうか。みなさん。
 (口調が日本風なのはなぜ?・・・ 「シンデレラ」って日本の童話ではないはずなのに・・・ ま、いいか)
 だから、リニア地下鉄は、この表に入れて比べるとしたらもう1個オマケをつけて・・・ ××
といえるのではないでしょうか?
 困った。「シンデレラ」は本当にないんだろうか?
 おお・・・「シンデレラ」よ。どこに・・・
 あ、忘れていた。さっきから「便利なシステムがある」と一生懸命引っぱっておきながら・・・   私としたことが、何てこった。日本にはまだ正式採用している都市はありませんが、全国の都市で導入が検討されている、これからの注目株・・・
 発表です。お待たせしました。ではそのベールがついにはがされるときが来ました。・・・
(「もったいぶらずに早く行け」という方は下の「パート3へ」をクリック!!)



←もどる 目次へ パート3へ→