LRTは「安かろう・良かろう」





 これから、「一言で言い切れない」LRT「だけ」とも言える利点を、少しずつ解説していきましょう。
 まず、先項の写真をご覧頂いくとお分かりの通り、電車(乗り物ですから「LRV」といいます)は路上を走っています。ここで「なーんだ。チンチン電車か」などと言わないで下さい。お話は最後まで・・・
 まず、LRTは「路上を主に走る」という特徴があります。「これからの時代のシステム」と言えるLRTが、なぜこの「一見古風に見える」特徴をわざわざ持っているのでしょうか?
 それを今からお話ししますと、一つには建設コストの低減があります。路上を走る部分では高架にしたり地下線を建設する必要はありませんので、当然建設費は安くつきます。路上での建設費は、驚くなかれ・・・
10億〜30億円/km(諸外国実績)
 地下鉄、いや、市が「安い」と謳っているリニア地下鉄よりも6〜20分の1の建設費!!このメリットを無視するテはないでしょう! もちろん、場所によっては専用線を建設したり、地下線や高架線を組み合わせなければなりません。
 そうするとその分建設費は上がりますが、路面走行の割合を多くすることで地下鉄よりずっと安上がり!しかも建設期間もかなり短縮されるでしょう。わざわざ全線にトンネルを掘るわけではありませんから・・・
 でも、いくら「安いヨー、安いヨー」って言ったって「安かろう・悪かろう」ならば、どっかの三流スーパーと変わりません。「安かろう・良かろう」でなければならないのです。
 LRTには「良かろう」の部分がたくさんあるのです。そうでなければ、私は苦労してこんなサイトを立ち上げようとはしないわけですから・・・ では、何が「良かろう」なのかをお話しします。
 LRTは路上に乗り降り場がある場合が多いので、乗り降りが格段に楽なのです。この点は、従来の路面電車と似ています。でも、ホームと電車の間の乗り降りが大変ならば、いくら「ホームが路上にある」といっても便利とは言えません。
 乗降口にステップがあったり、ホームと乗降口の高さにかなりの差があれば、不便なだけではなく車椅子の方の乗り降りは事実上不可能です。従来の我が国の路面電車やバスの多くにはこの「欠点」がよく見られました。


 (左)よく見かけるバスのステップ。健常者には何でもないこのステップだが、足の不自由な方や車椅子の方にとってはとてつもない「壁」であり、彼らにとってこの様にステップのあるバスは事実上ほとんど使えないだろう。また健常者でも、ステップでは移動の速さが低下するので、結局乗り降りに時間がかかってしまう。

 (右)LRTではないが、道路と同じ平面を走る東京都電荒川線のドア。左のバスと違ってステップはない。
 外国のLRTのほとんどは、これと同じようにステップがなくホームとの高さがほぼ同じである。車椅子や足の不自由な方でも乗り降りはラク。車椅子の方でも行動範囲がグンと広がることが期待される。
 しかも、健常者にとっても乗り降りの時間がかからず、スムーズな乗り降りが可能。


 その点、「新」LRTはどう解決しているかと言いますと、動力装置などのメカを小型化して床の高さを低くしてしかも全面を平らにしていることが多いです。こうすることで、車椅子の方も含めて乗り降りをラクにする工夫がなされています。
 今熊本市電で新しく使用されている車両は、床の地面からの高さ35cm、平成11年6月から広島の路面電車(広島電鉄)で新しく運行をはじめた車両は33cm、ウィーンの路面電車の新型車両にいたってはなんと17.5cm! すごい!!
 熊本市交通局が新規導入したLRV。床下の部品を小さくすることで床を低くし、オールフラットになっている。だから、体の不自由な人や車椅子・ベビーカー連れの方だけでなく、一般健常者にとっても乗り降りがラク。「路上を走る電車」は決して「過去のモノ」でなく、むしろ「ハイテクの固まり」で「新たなシステム」に生まれ変わっている。

 しかし、真の「LRT」は、単に「車両が新しい」ということではなく、総合的に「利用する『人』」にとってより便利に「進化」したシステムである、ということはこれからのお話しの中でご理解下されば、と思う。

 2枚の写真:「平成10年度運輸白書」(運輸省編集) P130より抜粋

 また、東京都電荒川線やロサンゼルスのLRTのように、ホーム面を上げで電車の床をフラットにしている(ちょうどJR電車のように)のもあります。
 いずれにしても、乗り降りの便利さが徹底的に追及されている、ということですな。


 LRTのように「電車が路上を走る」ということは、「乗り降りをグンと容易にできる」ということである。
 写真は、東京都電荒川線の「路面電車」だが、電車に乗るまで通るのは、ホームにある数段のステップだけである。もちろん、車椅子・ベビーカー用のスロープも付いており、身障者や赤ちゃん連れの家族にも大変便利になっている。
 一見、「路上を電車が走るのは古くさい」と思われがちだが、この大きな利点は他の鉄軌道系交通機関ではマネできないだろう。「温故知新」である。
 外国のLRTでは、この「路上を電車が走る」利点を精一杯利用して利便性の大きな向上を図っている。中には、ホームと道路とのステップが1段だけ、というLRTもある。もちろん、ドアの出入り口の床もフラットである。
 「乗り降りのし易さ」の追求は、「お客様本位」の第一歩であろう。行くのに大変な店なんて、誰も行きたくないものだ。

(東京都電荒川線・大塚駅前電停で撮影)

 えっ? 「それじゃバスと変わらないじゃないか?」ですって? チッチッチッ! それはチョイと違うぜよ。それは何かと言いますと・・・ お次のページへ、Go!




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