「優れた忍者」にかかる「古い手縄」とは?






 いやあ、LRTが「シンデレラ」になってみたり「忍者」になってみたり、ちょっと目まぐるしいとは思いますが、そこんとこはご愛敬でよろしくお願いします。
 さて話を元に戻しましょう。ヨーロッパや米国などで活躍している「忍者」LRTですが、いますぐ日本に上陸させようとすると、彼らの手に「古い手縄」がかかってしまう、と言う声がよく聞かれます。
 その「古い手縄」とはどんなモノなのか、今からお話ししましょう。みなさんはこれを読んでいると、この分野でも「古い規制」があることに、「えーっ!? ここでも!?」と言いたくなるでしょう。
 その「古い手縄」では、まず最高速度が限られています。クルマと同じ? いやいや。一律40km/h!!※ 広ーい道路でクルマがビュンビュン走っていても「電車が路面を走っている」というだけで40km/h以上は出せないとしています。
※軌道運転規則第53条
 「法律があるから『合理的な』スピードが出せない」などということがあるとしたら、「規制のための規制」の弊害にしか見えません。もしこのままこの「手縄」がはまったままとしたら、いつまで経っても、我が国ではこの分野の発展は望めません。
 私の知る限りでは、外国で「LRTがクルマ並みのスピードで走るのは危険で、存続の是非が問題になった」などという話は聞いたことがありません。路上では、せめてクルマの法定速度と同じ速度まで引き上げられないものでしょうか?
 つぎに、最高斜度も制限があります。原則的にはあまり急な坂は許されていません(最高で40/1000)、実はこの規制には但し書きがあって、それでは結構急な坂(67/1000)まで許しています※。
※軌道建設規程第16条
 「我が国では、法規があるからLRTの坂を急にできない」という声がありますが、これを読んだだけでも、実はそんなことはないということがお解りかと思います。
 先にお話ししたように、外国では、LRT等はもっと急な坂(80〜110/1000)を問題なく登れて「リニア地下鉄」に負けていません。
 ところが、一部では「LRTでは登坂能力が不足」旨の主張があるのです。そのような主張をされている方はどんな急坂を想定なさっているのでしょうか。まさかリニアモーターカーでロッククライミングをするつもりじゃないでしょうな?
 そうだとしたら、私は念のためご質問申し上げます。いくら「急坂に強い」リニアモーターでもロッククライミングはできないとは存じますが・・・
 この「急坂問題」に関して、こんな実話があります。平成11年7月17日、仙台の市民団体「仙台高速市電研究会」主催の定例会がありました。
 この会の中で、「仙台東西線」の計画を担当している仙台市都市整備局総合交通政策部長さんが、「東西線計画では、一番急なところで 60/1000というデータをお話になっていました。
 「但し書き」を適用できる条件は、規則では「特殊ノ箇所ニ於デハ」としか書いてありません※。「特殊ノ箇所」の定義は、具体的にはなされていないのです。
※軌道建設規程第16条
 つまり、「但し書き」を使うことでLRT導入は「仙台東西線」にも充分可能と言えるのではないでしょうか? 誰だって「安くて良いモノ」ならばそれに越したことはなく、「安くて良いモノ」を手に入れるためにあれこれ工夫したり努力するのが当然でしょう。
 特にモノの値段が高額ならば、常識的に考えれば、その工夫や努力の程はなおさらでしょう。ところが、「仙台東西線」計画の場合は今のところはそんな工夫の跡すら見えず、市側は「急坂が登れないのでLRTはムリ」を繰り返しています。なぜなのでしょう?
 3つ目に、電車の長さの制限があります。長さは30mを越えてはならない※のだそうです。これが短かったら輸送力の増強はおぼつきません。(外国のLRTや日本の路面電車では、「電車の直後に電車」という「ピストン輸送」で輸送力を補っているケースもあります。)
※軌道運転規則第46条


 LRTに関する主な「古い手縄」一覧。諸外国ではこれより規制がずっと緩くとも問題なく運営している。これらの規制を続けていたとしたら、いつまで経ってもLRTの性能はフルに発揮されることはないだろう。

 しかし、LRTに関わる法規をよく読んでみると、一見がんじがらめに見えるこれら法規には、実はしっかりと「抜け道」があった。それは何かと言うと・・・

 ここまで読んだだけで、ここでも「時代に合わない理不尽な規制」が都市交通の発展の分野で悪い方に作用しているんだなぁ、とお思いのことと思います。中には「我が国ではLRTはできないのか・・・」とここであきらめている方もいらっしゃるかも知れません。
 しかーし、LRTに関わる法規をよく読んでみますと、一見がんじがらめに見えるこれら法規には、実はしっかりと「抜け道」があるんですっ! それは何かと言いますと・・・
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