バスともラクラク乗り換え





 LRTは、路線の形にもよりますが、路上を走ることが多いので、乗り降りするホームが道路などと同じ平面上にあることが多い、ということになります。この「利点」を活用しない手はありません。
 「乗り降りするホームが道路などと同じ平面上にあることが多い」ということは、LRTにした場合、バスとの乗り換えも地下鉄よりもずっと有利なのではないでしょうか。
 それはどういうことか・・・ ここでもまた現在の地下鉄南北線を引き合いに出して検討してみましょう。


 地下鉄駅のバスプール。ホームとバス乗り場の間は、上り下りしたりかなり歩かなければならないので地下鉄とバスの乗り換えは結構大変である。通勤で利用している人の大半は、「クルマが使えないから仕方なく」という人が多いのでは?

(地下鉄南北線・八乙女駅)



 上の写真は、見慣れている人は見慣れている郊外の地下鉄駅のバス乗り換え場です。この構造だと、バス乗り降り場とホームはかなり離れていて、しかも階段も上り下りしなければなりません。
 通勤や通学でバスと地下鉄を乗り継いでいる人は多いと思います。そのような皆さんは、普段はこの乗り換えは当たり前と思ってあまり気にしないと思いますが、ここで質問。休日も、家族や友達と出かけるとき、同じようにバスと地下鉄を乗り継いで行きたいと思いますか?
 恐らく大半の方は、「イヤだ。クルマに乗り換える」とお答えになるのではないでしょうか? どうしてでしょうか?
 それは「クルマよりかなり不便」だからではないでしょうか?人間だれしも、より便利な方に流れるのは世の常です。では、なぜ現在の「地下鉄+バス」の形態が不便なのでしょうか?
 どうすればより便利になるでしょうか? こう考えていかずにだた「クルマから乗り換えて下さい」のかけ声だけでは、クルマから公共交通機関に乗り換えてくれることなど、ほとんど期待できません
 そうでしょう。皆さんも「言ってることは分かるけど、不便じゃな・・・」となってしまうのではないでしょうか?
 バス・地下鉄乗り換えが不便な理由は次の二つに集約されるのではないでしょうか?
      
  1. バス・地下鉄の場所が離れているので、かなり歩かなければならないので面倒

      

  2. 運賃が割高

 (1)については、上の写真をご覧になれば一目瞭然でしょう。特に、杖をついてやっとゆっくりしか歩けない方や車椅子の方に「バス・地下鉄への乗り換えを」と言われても、そのような方々にはクルマでの移動よりかなりきついんじゃないんですか?
 (2)については、どのくらい割高なのでしょうか? ちょっと検討してみましょう。
 仙台市の場合、バスの初乗り運賃は大人170円。地下鉄運賃は、上の写真の駅と仙台間の運賃は大人290円で、途中下車はできません。(小人運賃は半額で、10円未満は切り上げ)なお、乗り継ぎ割引は乗り継ぎ指定駅でのみ有効で、割引額は大人40円、小人20円です。
 この運賃設定で、夫婦子ども2人の4人家族がバスと地下鉄を乗り継いで仙台まで往復すると、いくらになるでしょうか?
 計算すると、ざっと2560円!しかも、歩行トレーニングのオマケ付き!
 ちなみに仙台駅周辺の駐車場料金は、立地条件にもよりますが、1時間あたりだいたい200〜400円位です。家族でショッピングに出かけるのならば、これぐらい差があるとほとんどの人は、渋滞や駐車場待ちをガマンしてでもクルマで出かけようとするのではないでしょうか。
 地下鉄建設にかなりのカネがかかっているので、運賃の割引率を引き上げたり、バスと地下鉄の運賃を分けずに「通し運賃」(地下鉄とバスの乗車距離を足して、その距離を地下鉄運賃表に当てはめる方法。バスと地下鉄の運賃を別々に取るよりかなり割安。)設定はかなり難しいのは分かっています。ここでも地下鉄の「ローン効果」が生きてしまっているのでは・・・
 割安感が出なければクルマからの乗り換えはおぼつきません。一方、公共交通機関の利用を促すためにバス運賃の割引制度を行っている地域もあります。例えば、バス定期を持った人の同伴家族のバス運賃を割り引いたりして、利用を少しでも増やそうとするものです。
 少しでも割安感を出して「お客様」に乗っていただこうとする姿勢で、いい傾向だと思います。この制度が少しでも普及して欲しいものです。地下鉄などの公共交通を利用する人を少しでも増やすには、他に「地下鉄の乗車券を途中下車有効」にする事も考えられますが、いかがでしょうか?
 こう言うと「売り上げが減る」という声があると思いますが、実はそれは当てはまらないのではないでしょうか?それはこういう理屈です。
 現在の運賃制度では、途中下車するとそのキップは使えなくなりますので、また買い直さなければなりません。それではカネがかかりますので、途中下車予定の人のほとんどは、はじめから地下鉄を使わないでしょう。「1回途中下車有効」とするだけでそんな客を取り込むことができるのではないでしょうか。
 もちろん、今まで地下鉄を使っていた客はそのまま使い続けます。こう考えると、「売り上げが減る」どころか、「途中下車」を必要としている人の分だけ増える、と考えた方が自然ではないでしょうか?
 確かに「1日乗車券」はありますが、「途中下車有効」の方が客にとって割安感が出るのではないでしょうか。やろうと思えば比較的簡単にできると思われるので、交通局のみなさん、是非検討をお願いします。
 私たち利用者は、ちょっとした値段の変化にも非常に敏感なのです。このごろ、スーパーマーケットで消費税値引きセールをしたところ客が倍増した、という話が相次いでいるのをご覧になれば、その程がお分かりになるでしょう。
 話はそれましたが、LRTが平面上を動くメリットを最大限に利用すれば、バスの乗り換え場を下の図のようにできるのではないでしょうか?LRTは地下鉄などに比べてずっと安くできるので、割引率のアップや「通し運賃」もやりやすいのではないでしょうか。皆さんはどちらが便利と思いますか?


 バスターミナルの一例。
 LRTは道路と同じ平面にあるので、上の図のように同じホーム上で乗り換えするようにもできる。地下鉄とどちらが乗り換えがラクかは一目瞭然であろう。また地下鉄に比べて建設費などが安いため、バスとの通し運賃制度や大幅な乗り継ぎ割引もグンと容易になるのではないか?クルマに対する競争力が大幅にアップするだろう。
 逆をいうと、ここまで便利になってもらわないとクルマからなかなか乗り換えてくれないのでは?


 LRTと「便利」な形で結節するバスターミナルの実例。写真はフランス・ストラスブールのもの。

 LRTは道路と同じ平面に設置することもできるので、このような芸当も可能である。地下鉄とどちらが乗り換えがラクかは一目瞭然。「お客様」の身になって整備している好例のひとつと言えよう。

写真出典:建設省発行パンフレット「路面電車の活用に向けて」平成10年1月発行


 
 やはり、あえて「地下鉄」をもう一本造るメリットはないのではないでしょうか。バス乗り継ぎでもLRTの勝ち!といったところでしょうか。利用者としてはより便利な方が欲しい、と思うのは私ひとりでしょうか?




←もどる 目次へ つぎへ→