「いいお手本」は「ともだち」から学ぼう!





 えっ? 「『LRT』がどんなものかを『実際に』知りたい」ですって?確かに、海外のLRTに関する文章や表をご覧になっても、その良さを「肌を持って感じる」ことは難しいと思います。この私のサイトでも、みなさんにLRTの良さを「肌を持って感じる」効果まではないと思います。
 私も海外のLRTに実際に乗ったことはまだありませんが、地下鉄よりずっと安くできて、乗り降りがラクにできて、工夫次第でクルマより速く動けて・・・
 と大きなメリットが多いLRTがあれば便利で、しかも現在私が知っている輸送力や最大斜度を考えても「仙台東西線」へのLRTの導入は充分選択肢に入ると思っています。その詳細はパート3でお話ししたとおりです。
 LRTの良さを「肌を持って感じ」たいとおっしゃる方、そんな方法があります。それは、少々手間やお金がかかりますが、実際のLRTを見て乗ってくることです。
「百聞は一見にしかず」です。
 世界中にはたくさんのLRTが走っています(1997年現在52都市、建設・計画中を加えると約100都市※)が、仙台市関係の方には仙台市の友好姉妹都市であるダラス市(米国)のLRTが参考になるでしょう。
※路面電車活用方策検討調査報告書(平成10年3月、運輸省・建設省編)P43
 ダラス市は、米国・テキサス州にあり人口は104万人とテキサス州第2位(※1)で、人口規模が仙台市とほぼ同じの都市です。ここでもLRTが走っており、総延長は32.0km・1996年(平成8年)6月に開業した(※2)新しい路線です。
(※1)仙台市ホームページによる
(※2)路面電車活用方策検討調査報告書(平成10年3月、運輸省・建設省編)P57内データ
 郊外部は専用軌道を走っており、専用軌道での最高速度はなんと時速65マイル(約104km/時)※とかなりのスピードで走っています。「LRTはスピードが出せない」というのは、技術的にはウソです。
※「路面電車とまちづくり」RACDA編:学芸出版社刊P84より
 郊外の専用線ではそんなスピードで走っていると思ったら、街の中心地にはちゃんとトランジット・モールがあって、ラクな乗り降りで中心地のいろんな目的地に行くことができます。
 オマケはまだあります。ダラスのLRTは、クルマからも乗り換えてもらうために
P&Rだってちゃーんと用意しています。その規模は、8駅にP&Rが設置されていて約4450台分用意されています※。
※"DALLAS (TEXAS) - MOTORIST COMMUTERS LIBERATED BY LIGHT RAIL":Fact sheet No.72:LRT Association homepage より。邦訳は著者
 ダラスのLRT利用者の50%は公共交通機関を初めて利用した人であり※、このことは、LRTが便利で使いやすくてクルマに対して競争力があればクルマから乗り換えてくれる実例と言えるでしょう。
※"DALLAS (TEXAS) - MOTORIST COMMUTERS LIBERATED BY LIGHT RAIL":Fact sheet No.72:LRT Association homepage より。邦訳は著者
 ダラスでは、ヨーロッパのような厳格なTDMを行なうよりは、むしろ「クルマより便利な」LRTづくりを心がけています。「仙台市など我が国の都市では、全体的なTDMはムリ」と言うのなら、この「経営戦略」を学ぶ価値は充分にあると思います。
 「東西線にLRTは不適」という仙台市の友好都市にLRTをうまく活用している都市があり、それがダラス市なのです。「いいお手本」を持っている「ともだち」がいるじゃないですか!「杜の都」には!
 仙台市の行政関係者のみなさん、仙台市議会のみなさん、道路管制担当の警察のみなさん、地元マスコミのみなさん、そして私と同じ市民のみなさん・・・
 「ともだち」といえる友好都市にこんな「いいお手本」があることを、今まで御存知でしたか?
 御存知でなければ、ぜひ一度視察なさって見てはいかがでしょう?「ともだち」からの視察とあらば、「杜の都」の「ともだち」であるダラス市はきっともろ手をあげて喜んでくれて、しかも懇切丁寧にLRTの有用性・利便性を紹介してくれるでしょう。
 特に行政関係のみなさん・市議会のみなさんには視察をぜひお勧めいたします。P&Rとは何か、トランジットモールとは何か、そしてLRTの良さとは何か・・・
 「百聞は一見にしかず」です。私たち市民だって「杜の都」にとって良い方向に向かうためならば、「公費視察」も大喜びでさせてあげますよ!
 もし視察された方がいらっしゃればお訊きします。実際に体験した御感想はいかがでした? 「杜の都にあんな乗り物があったら便利なのにな・・・」って思いませんか?
 「どうやったらあんな便利な乗り物を『東西線』はじめ『杜の都』でも実現できるんだろう」「なんであんなに便利な乗り物が『仙台東西線』の第1候補になっていないんだろう?」って考えに転じようとは思いませんか? ぜひお聴かせ下さい。
 確かに、ダラスのLRTの形態をそのまま仙台市に持ち込むことは難しい面もあると思います。例えば専用・高架軌道の割合が多いため他都市のLRTよりは建設費が割高ということもあります。
 しかし、仙台市に合った形に工夫して(「ライバル」に遠慮した発想は「杜の都」に似合いませんよ!)、「東西線」はじめこれからの路線にLRTを導入することは、低コスト・利便性・合理性で「リニア地下鉄」なんかよりずーーーっと「杜の都」のこれからのためになると思いませんか?
 「法規で決まっていて、LRTは仙台をはじめ我が国ではムリだから、皆の者は承知おくように」などと「人の先に立つ人」が言うようなことがあれば、その態度の是非はどうでしょうか?
 パート3でお話ししたとおり、「軌道法」下の規則には「抜け道条文」があるので、工夫次第でLRT導入の可能性があるのはみなさんお解りのことと思います。
 ということは、LRTが便利で合理的であることを知れば、普通の感覚の人ならば「どうやったら実現できるのか」という方に考えが及ぶと思います。実現するためにあれこれ考えをめぐらすのが普通でしょう。
 「人の『先』に立つ人」(『上』ではありません)というのは、「『市民にとって合理的な物事』をどうやったら実現できるのか」ということを「先頭に立って」考えるのが仕事であり、「『お上の決まり』によってできないから承知おけ」という「御触書」を垂れるのが仕事ではないはずです。
 もし「不合理な法規のために合理的なことが実現できない」というのなら、その法規を変えるために工夫したりして切磋琢磨するのが政治家や行政の本分ではないでしょうか?「『お上の決まり』によってできないから承知おけ」と「御触書」を垂れる前に。
 第一、我が国ニッポンは、曲がりなりにも「民主主義」の国です。法規が不合理ならば、その不合理性を指摘し、より合理的な方向に持っていくように議論して、より理にかなった形態を世の中に作って広めていくのが「民主主義国家」としてあるべき姿でしょう。
 「お上の決まりだから承知おけ」と「御触書」を垂れ続けるのはハッキリ言って「大名セリフ」、そんなセリフを聞くと、「民のために法があるのであって、法のために民があるのではない」ということを全然理解なさっていないのでは・・・なんて疑ってしまいますが、みなさんはどうお思いですか?
 「大名セリフ」は時代劇の中だけにして欲しいものです。現代の「民主主義国家」には全然ふさわしいものではありません!
 行政関係や政治家のみなさん、「民主主義」にふさわしい合理的な発想・思想を持って仕事に当たられていますか? ひょっとして「大名」になっていませんか? 胸に手を当ててもう一度お考えいただきたいと思います。このことは、LRTはじめ都市交通問題に限らないと思います。
 話を元に戻しましょう。「ともだち」の「いいお手本」をぜひ実体験されてみてはいかがでしょう?「『杜の都』のともだち」には、すでに「いいお手本」があるわけですからそれを参考にしない手はないと思います。
 えっ?「ダラスのLRTの写真を見せて!」ですって? それは、「人の先に立つ人」が「ともだち」から「いいお手本」をたくさん学んで、私たち市民にきちんと教えてくれることに市民みんなで期待しようじゃありませんか。




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