「目立たぬ火種」も「大火事の元」





 今の我が国には一般市民から見て理解できない公共事業があることが、しばしば報道されています。みなさんの近くでもそんな類の公共事業を見かけたことがあるかと思います。
 必要性があるかどうか疑わしい場所に豪華なコンサートホールを建ててみたり、減反政策が強力に推し進められている一方で新しい農地造成をしてみたり・・・
 規模の大小はありますが、このテの矛盾を含んだ公共投資が見られることが少なくありません。その中で、「開発の矛盾」がだれにでも分かる「目立つ矛盾」である場合は大きな注目を浴びることがあります。
 最近では、「ムツゴロウのギロチン」と大きく報道された長崎・諫早湾干拓事業などが代表的な例でしょう。減反政策が行われている一方で貴重な自然環境を破壊してまで農地開拓を行おうとするのは、農地政策には全くの素人である私でも大きな矛盾を感じてしまいます。
 「目立つ矛盾」として報道された問題は、他に「神戸空港建設問題」も挙げられるでしょう。私は、神戸のことはよく分かりませんが、すぐ近くに伊丹空港や関西国際空港があるのになぜもうひとつ巨費をかけて大空港を造らなければならないのか、疑問です。
 これらのように、よその地方から公共事業の素人が見ても矛盾が「目立つ」公共事業はマスコミにもしばしば登場して議論の的となることがあります。
 その一方、「リニア地下鉄仙台東西線」計画の「矛盾の目立ち度」はどうでしょう? ここまでお読みになったみなさんは、「リニア地下鉄仙台東西線」計画の「矛盾の大きさ」をおぼろげながらもお解りになったかと思います。
 でも、このサイトへいらっしゃる前は、この「矛盾の大きさ」に気づくことがなかった方は決して少なくないのではないでしょうか? 「仙台の東西にも地下鉄ができるんだって? いいんじゃないの」なんて感じで。
 仙台市などの中〜大都市では都市鉄軌道整備が必要であるというのは、私とて同感です。この点ではみなさんも異論がないと思います。
 しかし、世間では、都市鉄軌道整備「自体」が「必要なもので何が何でも造らなければならない」という「事業の必要性」だけが前面に出てしまい、「お客様」にとっての利便性の問題や導入することによる大きな財政負荷など「本当は目立って議論されなければならない部分」が目立たなくなっている傾向があるのは事実でしょう。
 みなさんお解りの通り、「お客様」にとっての利便性の問題や大きな財政負荷などの問題がきちんと取り上げられ、議論され、改善されない限り、「必要なもの」といえども「不便な割に維持運営に大きな負担がかかりすぎるお荷物」になってしまうでしょう。
 ところが、これら一番スポットライトが当てられなければならない部分が目立っていない事が多いのです。報道を見ても、これら問題点に「深く」掘り下げた記事・番組は、私が見る限りはまだまだ目立っておらず、少ないと思います。
 「事業の必要性」が目立つあまりその裏でその問題・矛盾点が目立たず、あまり注目してもらえないという事情があるかも知れません。しかし、問題・矛盾点の議論をうやむやにしたまま「リニア地下鉄」案が実行されたら、「目立たなかった大きな矛盾点」が何年後にも吹き出してくる可能性は極めて高いと思います。
 今までの事象を見ると、公共事業が一度実行されてしまったら、あとでどんな大きな矛盾が指摘されても、中止・変更の必要性が叫ばれても、最初の計画が変更される可能性はまず無いと言っていいほど小さいでしょう。「リニア地下鉄東西線」も実行に移されれば、その例外とならない可能性は極めて大でしょう。
 「もうはじめてしまった以上止めるわけには行きません。今までの投資がムダになるから・・・」と言われて、不採算になるほど建設費が大幅に上昇しても、建設期間が大幅に延長しても、ズルズルと建設が実行されてしまう事になるでしょう。
 「都営12号線」の前例がありますので、「こんな風には決してならない」とは決して言えないというのは私の考えです。今の段階ですでに財政危機が言われている仙台市で、このシナリオが現実になったらどうなるでしょうか?
 後になって、「目立たない大きな矛盾」がだれの目にも明らかになり、マスコミをはじめ市民が「なぜ計画の段階でだれも問題点を指摘しなかったのか」「この計画は正しかったのか」と騒ぎ立てても
「後の祭り」
 でしょう。「問題の火種」は、早いうちに気づいて消しておかないと、「火種」が後になって「大火事」になってからでは遅いのです。
 「あの時オレはこうなると気づいてたんだ」という方、「火種」に気づいているんだったら、火種を消すのは今です! 後になって「あの時・・・」なんて言っても、何にもなりません。「気づいていたんだったら、なんで行動しなかったんだ?!」と叩かれるのがオチでしょう。
 特にマスコミのみなさん、「リニア地下鉄仙台東西線」問題の「目立たない大きな矛盾」をお解りでしたら、早いうちに一般世間に目立つようにして、「火種」が小さいうちに消す努力をお願いします。
 上のような「大火事のシナリオ」になってからでは遅いのです。しかも、「大火事のシナリオ」に燃え広がるのは、そう遠い将来の話ではありません。
 長崎・諫早湾干拓事業のように、素人から見ても矛盾が「目立つ」事業でさえ完成してしまっているのです。矛盾が「目立つ」のですから、地元でもこの事業の問題点を早い段階から大声で主張されていた方は少なくなかったはずです。
 それでも事業が中止・変更されずに完成してしまっているのですから、ましてや「事業の必要性」の陰に隠れて「矛盾点が目立たない」リニア地下鉄東西線計画は、このままでは多くの人に矛盾点が気づかれないまま実行されて進行してしまう可能性が大です。
 多くの人に「リニア地下鉄東西線」計画の矛盾に気づいてもらうのは大変なこととは思いますが、「明日の『杜の都』」のためにもどうか宜しくお願い致します!
 長崎・諫早湾干拓事業の事件によって我が国でも公共事業に対する関心が高まり、「この事件を反省した環境庁が異議を述べて愛知県の藤前干潟の埋め立てを中止させた」※という動きもみられるようになってきました。
※「図解・公共事業のしくみ」(五十嵐敬喜・小川明雄著、東洋経済新報社刊)P20
 そんな動きが世の中にある一方で、「事業の必要性」の陰に隠れて「矛盾の大きさ」があまり気付かれない公共事業のひとつが、「リニア地下鉄仙台東西線」計画だと思うのですがいかがでしょうか?
 こちら「杜の都」では、公共事業の問題の一つとしてこの「リニア地下鉄東西線問題」を挙げましたが、みなさんの周りには「目立たないが大きな問題・矛盾」を抱えた事業等はありませんか? よーく確認された方が良いかと思います。
 「気が付いたときには大火事」というのではもう遅い、「後の祭り」なのですから。




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