「誰のための東西線」なの?





 ・・・と、ここまで、これからの「杜の都」の街づくりを決めるほどの重要な施策「仙台東西線」について、リニア地下鉄にしたときに考えられるいろいろな問題点があることをお話ししてきました。
 建設費は今発表している金額ではとても収まらなくてずっと高くなるだろうし、そうなると採算だってとれなくなって「借金の雪だるま」がふくらんで、それがモトでタダでさえ危ない今の仙台市の財政に「トドメ」を刺すことにもなりかねません。
 オマケに、乗り降りは大変だし、JR線に乗り入れできないからいちいち乗り換えなきゃならないし、急カーブが多いから、せっかく地下鉄にしたとしても、あっちこっちでスピードを落とさなきゃならないから結果的に「遅い」鉄道になってしまうだろうし・・・
 「東西線」が今の計画のまま実行したとしたら、文字通り「安物買いの銭失い」となってしまう可能性が極めて高いので、計画を全面的に見直してください、ということをこれまで、「まちづくり提案制度」を通じて仙台市長さんに申し上げて来ました。
 今現在仙台市が計画している「リニア地下鉄仙台東西線」に対して疑問の声を上げているのはなにも私一人ではありません。新聞投稿で、多くの市民の方々から多くの疑問の声が出されました。
 市民だけでなく、仙台市議会の中からも、採算面・建設費・需要予測・利便性という「東西線」を成功させるために必要な「根っこ」の部分で、多くの疑問や質問が出されました。
 それらの声に対し、平成12年3月23日、仙台市長さんは・・・
「機種はリニア地下鉄に決定、ルートも原案のまま」
 ・・・えっ? 「今の機種、今のルート」で多くの問題点が言われているのに、きちんとした答えを出されないまま「今の機種、今のルートで行きます」というのはいったいどういうことなのでしょうか?
 今の仙台市の財政がどんな状態なのか、市長さんご自身が一番よくご存じと思います。そんな中、建設費が今の予想より高くなったり需要が予測よりも落ち込んだら、採算がとれなくなって仙台市の「ふところ」を直撃してしまうことは、ほぼ確実と言えるでしょう。それなのに、なぜ指摘されている多くの問題点に対して、きちんとしたお答えをされないのでしょうか?
 「もし見込み違いがでたらどう対処しますか?」と言うたぐいの質問に対しては合理的な回答はほとんどなされていません。それは、「仙台市が今立てている予測は少したりとも狂ったりすることはない」と言っていることと同じでしょう。本当にそんな「見込み違い」は起きない、と言えるのでしょうか?
 いや、建設費については、今までお話ししたことから、大幅な「見込み違い」が起こることが充分に起こりうることは、もうお解りのここと思います。そうなれば、仙台市の財政にもモロに打撃が行くのは間違いありません。
 しかも、採算が悪くなる状況証拠のオマケはまだあります。市議会の中で、「東西線」沿線の人口が今の段階ですでに、市のはじめの計画よりも少なくなっていることが指摘されているのです。
 それはこういうことです。仙台市は、平成22年までに「東西線」沿線の人口が平成4年のときよりも約6万人増える、と予測しています。
 ところが、平成4年から平成11年ではわずか3800人しか増えませんでした※。今まで8年もかけて3800人しか増えなかったのに、どうやってあと10年で5万6千人も増やそうというのでしょうか?
※読売新聞H12.2.10記事より
 沿線の人口が予想より悪くなれば、当然利用者数も予想より悪くなります。「建設費が高くなってお客さんが減った」ということになればどうなるかは、「専門家」ではない私でさえ予想がつきます。
 仙台市長さん、市長さんは市議会の最中、「リニア地下鉄東西線」計画の実現を国の各省庁にお願いに行かれましたが、いろいろな問題が市民や市議会から指摘されている今の段階では、それらの問題にお答えになるのが先ではないでしょうか?
 国のお役人のための鉄道ではなく、私たち市民のための鉄道計画であるはずです。そのことをわきまえていれば、「市民よりも国のお役所の方を向く」ということはないと思います。
 「仙台東西線」に関する新聞記事。「リニア地下鉄東西線」は、財政面など計画の「根幹部分」で、市議会・市民より多くの問題が示された。また、「東西線」にはLRTにてコスト低減・利便性向上を図るべきという提案も示された。

 それにもかかわらず仙台市長は、平成12年3月、機種を「リニア地下鉄」、ルートも、利便性の問題が多く指摘されている市の計画案のままで事業を進めると発表した。また仙台市長は、市議会の最中、「リニア地下鉄東西線」計画について国の関係省庁の理解を求めるために、関係省庁を訪れたという。

 「東西線」が「市民のための計画」である以上、国よりも先に市民に対し、これら示されている問題点に明確な解答を示すべきであろう。第一、これら問題点に明確な答えも出せないまま、どうやって国から事業許可を得られると言うのだろうか?

 数千億円もの「巨大事業」と言える「仙台東西線」では、本来は「主役」である私たち市民の目から見て、解らないことが多すぎます。それなのに計画だけはドンドン進んでいるというのは、どういうことなのでしょうか?理解できません。
 ・・・ごめんなさい。このサイトは本来、都市の中においてクルマに過度に依存する交通の体系がいかに非効率で公共交通に置き換えた方が「街中の動き」が良くなるか、ということや、その手段のひとつとしてのLRTを紹介するためのものでしたね。
 でも、後半では「仙台東西線」計画で現在考えられる問題点をお話しする形になってしまいました。本当は話の筋として正しくない、ということは解りますが、「市民にとって疑問が多くてその疑問の声すら反映されない公共交通計画が進められている」現実を問題提起としてお話ししたいのです。
 「市民に多く支持される公共交通」でなければ、「住みやすい街づくり」につながることはなく巨額の税金だけが消えてしまうことにもなってしまうでしょう。このような事態は、正しいと言えるのでしょうか?
 「仙台東西線」計画の問題点を掘り下げてお話しするのは、今回はこのくらいにします。また別の機会にでもお話ししましょう。それにしても、「杜の都」はこれから、どうなっていくのでしょうか。心配です。
 みなさんにこれはお話ししたいと思います。「計画のやり直しが利くのは、工事が始まる前の『今』だけ」です。




←もどる 目次へ エピローグへ→