エピローグ


このサイトで私が目指したもの



 皆さんお察しの通り、私は昔から鉄道、特に我が国の鉄道が好きでした。いわゆる巷で言う「鉄ちゃん」というたぐいでしょうか。しかし、その好きな我が国の鉄道でも、昔から興味のない分野が2つありました。1つは蒸気機関車(SL)、そしてもう一つは路面電車でした。
 この2つは、私の中ではどうしても前時代的な感じが強く、親近感の持てない分野でした。
 SLは、イベントでもなければ見ることができず、路面電車はあるところに行かなければ乗れないので、私に言わせれば「日常の蚊帳の外」という感じで、あまり興味がありませんでした。
 路面電車を見ても、「へえ、まだ残っているんだ。こんな時代に」と以前は思っていました。「なんで新交通システムや地下鉄にしないんだろう?」とも思っていました。
 ところが、鉄道雑誌などを見ていると、海の向こうではLRTというものがあって、現代のニーズに合わせた新型路上鉄道システムとして増殖中で・・・ というような記事が数年前よりよく見られるようになったのです。
 私は、はじめ「旧東欧や発展途上国でだろう?クルマが少ないんだから。LRTなんてものは・・・」と思っていました。しかし、LRTが「増殖」していたのは、ドイツ、フランス、英国などヨーロッパの先進国だけでなく、米国・カナダも然りだったのです。皆さんご存知の通り、これらの国は、我が国同様「自動車大国」と呼ばれる国です。
 「なんで自動車大国でLRTなんてものが受け入れられるんだろう?」どうしても、私にはその「自動車大国でのLRT増殖現象」が理解できませんでした。
 普通、世の中では不便なものは受け入れられたり、ましてや増殖なんてしません。欧米の人たちは税に対する「目」が非常に厳しいので、我が国と違って税金を使って不便なもの・無意味なものが増える、ということは考えられません。
 だから、「これはもしかしたら大きなメリットがあるのか?LRTって。」と考えるようになりました。そう考えなければ、「LRT増殖現象」は私のアタマの中で理解できないからでした。
 それでいろいろ調べ、人から話を聞き、考えているうちに、今までお話ししたLRTの大きなメリット、いかにこれからの交通手段としてふさわしいものか、ということがだんだんとアタマの中で理解できるようになってきました。
 と同時に、今まで当たり前と思っていた地下鉄などは、実は、「クルマより明らかに便利」と大多数の利用者に支持される状況になくて大量の需要もない場合、「カネがかかって利点が小さいだけ」ということも分かるようになりました。
 そして、「実は、仙台東西線をはじめ、仙台市などの我が国の都市でもLRTは充分メリットがあるのではないか?」と思うようになりました。
 そう思って仙台市当局に「仙台東西線」へのLRT導入を質問してみたことがあるのですが、その答えや市側のLRTに関する考え方、「東西線」計画に対する取り組み方は、今までお話ししたとおり私たち市民を納得させるには程遠いものであると言わざるを得ません。
 確かに、我が国でLRTを導入しようとする場合、今までは、諸外国よりはるかに法的制約が多いと言われていたので、そのことが未だに「見解のずれ」に絡んでいるのかも知れません。
 でも、今までお話ししたとおり、「古い」と言われている法規には実は「抜け道」があり、国もLRTについては前向きな方向に向かっているのに、市側からはこれらの情報は提供されていません。
 そのためか、市民の間には未だに「LRTは、遅くて坂を上がれない。広い道路でないとできない」という「誤解」の声が、少なからず聞かれます。
 本来は、「街づくり」の生命線とも言える公共交通整備についてきちんとした情報が提供されなければならないのに、仙台市内ではそれが実現されている状況にあるとは、私にはとても思えません。
 しかし、みんながみんな「誤解だらけ」と言うわけでもありません。市側の以上のような見解がある一方で、『輸送力・地形・速度を考えても「仙台東西線」にLRT導入は充分可能。ルート案も抜本的に見直すべき』※旨の意見もあるのです。
※「仙台高速市電研究会」による
 私もそう思っています。ここまでお読みになったみなさんのお考えはいかがでしょうか? いきなり「LRT導入は無理」と決めつけずに更に議論を重ねる必要がある、ということはお分かりと思います。
 LRTについては、官民レベルで少しづつ認められている動きがある一方で、世間ではまだまだ「誤解」がたくさん見受けられます。本当にふさわしいと思うものが世間に知られないままでいるのは・・・ せめて、ひとりでも多くの人に事実を知って欲しい・・・ そう思って立ち上げたのがこのサイトです。
 確かに、都市交通問題やLRTについては、専門家の方や詳しい方が開設されている優れたサイトや書物がたくさんありますが、普段それらの問題についてあまり関心のない方にとっては、どうしても「しきい」が高く感じてしまうものが多いのではないでしょうか。簡単な問題ではないので、それは仕方ないと思いますが・・・
 それらの優れたサイトなどに比べたら、このサイトは情報量といい、知識量といい、足元にも及ばないでしょう。しかし、私なりにこのサイトで目指しているもの、それは・・・
「しきい」の低さ日本一!!
 少しでも、普段はこの問題に関心が薄い方でも、「難しくてわからない」とシリ込みをする方でも、「少しでも取っつきやすかった」「クルマ中心が当たり前、という洗脳から解き放たれた」などの声があれば、私にとってこのサイトを苦労して立ち上げた甲斐があります。
 「でも、交通問題があるのは分かったが、LRTってホントにできるの?」「まだよく分からない」という方もいらっしゃると思いますが、それはムリもありません。LRTは路上を走って便利な電車ですだの、地下鉄やクルマは実は不便だの・・・
 ここではじめて聞いたことで、しかも今までの既成概念とは大分違うことも言っているワケですから、「すぐ理解せよ」と言ってもそれは土台ムリでしょう。
 人より「少しは」鉄道に詳しい、との自負を持つ私ですら、はじめは皆さんと同じだったのですから。その気持ち、よく分かります。
 ここまでお読み下さったみなさんは、今のところ仙台市が出すLRTに関する情報はこのサイトで取り上げたLRTの情報と今のところかなり食い違っている、ということはもうお分かりと思います。どちらがどのように正しいかは、みなさんの御判断にお任せします。
 先に述べましたが、世の中は少しづつ「LRT賛成」の方向に動いています。繰り返すようですが、合理的なものを造り上げる「大きな原動力」を、「杜の都」は持っているのです。
 それは、LRTを今現在最も必要とする環境がそろっている大都市のひとつなのですから・・・

 「この原動力」を活かすのは、私たち市民一人一人でしょう。

 これからの時代、公共交通を整備するには、「過剰投資・過小効果」とならないように、そして、一番重要な視点「どうすれば大多数の『実際の利用者』が本心で喜んでくれるか」から計画がそれないようにすることが必要です。私たち市民もこの問題にまだまだ目を光らせ、議論しなければなりません。
 もちろん、LRTだって「ただ敷けばいい」というモノではありません。郊外と中心部を移動する需要が高く、多くの人が便利になるような使い方をされなければなりません。
 その他、本文でお話ししたように、「営利事業」でなく「都市の中の装置」という考え方の普及、そして何よりも、多くの人が未だに持っている「電車が路上を走るのは時代遅れ」という誤ったイメージの一掃・・・
 「LRTによる真に便利な街」の実現のハードルは、今のところはまだ低くないでしょう。でも私たち日本人は、物事の理解が一旦進むと物事があっと言う間に進展する、という傾向が強いですから、「ハードル」を越えるのはそう遠い将来でないと思いますが・・・ みなさんはどう思いますか?




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