「ちゃんと」おしえてっ!!(2)
−「大きな事業」だからこそ「正しい情報」を−





 それに対して市側からは、「東西線にLRT導入は不可能」旨のお答えが返ってきました。その理由として市側が挙げているのは・・・
     
  1. 登坂勾配の制限により青葉山部分の登坂が困難であること  
  2. 連結車両長の制限により「東西線」に求められる輸送力の確保が困難であること  
  3. 路面での最高速度制限の規制により、東北地方交通審議会の答申に示す表定速度※(30km/時)の確保が困難であること
※表定速度:出発駅から到着駅までの距離を、かかった時間で割った速度の値。この値が大きければ大きいほど「速く移動できる」ということになります。
の3点を挙げ、結論として、つぎのような「国の見解」なるモノを示しておりました。
「LRTに関わる軌道法や鉄道事業法の規定について適切に運用されている旨の国の見解も最近できたことから、平成16年度着工を目標としている東西線へのLRT導入は難しい」
 つまり市側は、「LRTは規制があって、坂が登れなくて人を運べなくて遅いから『東西線』にはムリ」と言っているのです。
 でも、パート3でお話しした事項を考えれば、これらの理由でLRTの導入はムリ、というのは根拠のない話である、ということはみなさんお解りと思います。ちょっとおさらいしますと・・・
 まず、以上の項目について「東西線」で要求されているデータをまとめると、今までお話ししたことを含めて次のようになります。
     
  1. 勾配:最も急な部分で60/1000。  
  2. 1時間あたりの必要輸送力:約1万人(以上2つのデータ:高橋秀道・仙台市都市整備局総合交通政策部長:平成11年7月17日「高研」主催定例会内での発言)  
  3. 必要な表定速度:30km/時(「東北地方交通審議会」答申)
 技術的には、海外の前例を見るとこれらのハードルは全てクリアされています。それに、法的にも、LRTに関する法規の「抜け道条文」を使うことで海外のようなLRTを実現できる可能性だってあります。

→復習:技術的問題の復習は「LRTは「鉄道界の忍者」」へ、法的問題の復習は「「古い手縄」からの「縄抜け」は、できるっ!」へどうぞ。このページに戻るには、ブラウザの「戻る」ボタンをクリックして下さい。

 オマケに、「高研」の定例会で、LRT等路面電車を管轄している監督官庁のひとつである建設省都市局街路課の課長補佐の方がLRTに関する法規について講演され※、今の法規の下でのLRT導入・運営の可能性について質問も出たのですが、その中でも「今の法規ではLRTはダメ!」という趣旨の発言は一言もありませんでした。
※横山克人・建設省都市局街路課課長補佐:平成11年9月18日「仙台高速市電研究会」定例会において
 我が国でも、現段階で、技術的・法的にもLRTの導入は可能と考えられます。それなのに、市側の「LRTは規制があって坂が登れなくて人を運べなくて遅いからダメ」と結論しているのは、どういうことなのでしょう。納得できません。
 それに、市側の答えの中に、「勾配67/1000の但し書き規定は、橋りょう取付部等の特殊な箇所における勾配を対象としたものであり、短い区間を想定したものとされているので、これを一般部に適用することは難しい」旨のお話がありました。
 でもこの文章は、私の知る限りどの法規の条文にもありません。どんな資料からの引用された上でのお答えなのか、お訊きすることにしましょう。
 今までお話ししたことから、我が国でも、LRTは技術的にも法的にも導入可能と考えられることがお解りと思う。

 (左)神奈川県にある「箱根登山鉄道」。LRTやJR線などと同じ「普通のレール」だが、この路線の最大勾配は80/1000と、「東西線」の最大勾配より大きい。それでも技術的には何ら問題なく運営されている。海外のLRTにおいても然りである。

 (中)建設省パンフレット「路面電車の活用に向けて」を開くと、路面電車の1時間あたりの最大輸送力を1万5千人と広報しており、「仙台東西線」の予想需要より大きい。実際、海外でもこの程度の輸送力は実現している。

 (右)ロサンジェルスのLRT。この路線は、LRTながら表定速度が約39km/時と、仙台地下鉄南北線のそれ(約32km/時)よりも高速である実績がある。「LRTだから遅い」ということは決してないことを示す好例である。

 これらの事項があるにも関わらず仙台市側が「LRTは急坂に弱くて輸送力がなくて、遅い」と言い続けていることは、結果として「ウソの情報」を市民に流していることになる。巨額の税金を投入する「東西線」はじめ、公共事業においてこのような行為は果たして許されるのだろうか?

写真(左)(右):佐藤茂氏(仙台高速市電研究会)のご厚意により掲載。

 納得できないのはこれだけではありません。「東北地方交通審議会」という組織は、「東西線」に必要な条件として「表定速度は30km/時以上」を挙げています。「駅と駅の間が速く動けさえすればそれで良し」ということでしょうか?
 でも待って下さい。パート2でお話ししたとおり、「東西線」のような短距離鉄道では、いくら電車が速くても、東京などのように乗り降りに時間や手間がかかってでも「地下鉄はクルマよりずっと便利」という状況でなければ、真の「速達性」は達成できないのです。
 せっかく駅と駅の間は速く動けても、駅での乗り降りに時間を取られてしまうからです。地下鉄駅で乗り降りの時間がかかるというのは、LRT等路面電車の路上の電停で、その乗り降りの時間分だけ足踏みをしているのとちょうど同じこと、と言えるでしょう。
 「地下鉄など『全線立体型鉄道』はどの駅でも必ず乗り降りの時間がかかる」、という欠点を頭に入れないで「速達性」をどうこう言っている「東北地方交通審議会」の答申は、はたして正しいのでしょうか?
 それに、先の航空写真など市側より公表されている資料を見ると、交差点に沿った急カーブが多く見られ、ジグザグな路線になっています。当然急カーブではスピードをかなり落とさなければなりません。
 それに、急カーブが多ければ多いほどスピードを落とす回数・区間が多くなり、結果として「遅く」なってしまいます。「リニア地下鉄東西線」の表定速度は20〜25km/時程度※という試算すらあるくらいです。
※仙台高速市電研究会による
 せっかく莫大な税金をかけて「リニア地下鉄東西線」を造ったとしても、このジグザグの多いルートでは「遅く」なってしまって「リニア地下鉄」にしたのに「速く」できない・・・なんてことになってしまうでしょう。
 さらに駅での乗り降り時間も考えると、「ジグザグカーブ+駅での乗り降り時間」の2つの「副作用」で、「リニア地下鉄東西線」は「お客様」にとって「速さ」の面でも不便な路線となる可能性は極めて大きいのではないでしょうか?
 (上写真)仙台市の航空写真。「仙台東西線」の路線として候補に挙がっているのは上の黄色い線。交差点に沿ったジグザグ状の急カーブが随所に見られる。せっかく巨額の税金を投じて「リニア地下鉄」を造ったとしても、これではスピードアップは到底望めないだろう。

 (下図)地下鉄など「全線立体型鉄道」では、どの駅でも必ず乗り降りに時間がかかってしまう。この時間のロスは、LRT等路面電車の路上の電停で足踏みしているのと同じである。「地下鉄にする」ということは、この時間的ロスを利用者に負わせることである。LRTの輸送力よりずっと多い需要のある東京などではこのロスを負わせても便利である、と言えると思うが「仙台東西線」では・・・?

 この2つの事項を考え合わせずに、単に駅間の表定速度をもって「東西線」の速達性を云々している「東北地方交通審議会」の答申は、正当とは思えない。一市民の意見として、同審議会に再考をお願いする。

 (上写真)出典:「仙台市政だより」1998年11月号 P4〜5 より抜粋し、一部を加工

 今まで、LRTに関して市側から正しい情報が出されることは非常に少ない、という感じがします。いや、「抜け道条文」による可能性や海外の実例を考え合わせると、仙台市側の「LRTは坂が登れなくて人を運べなくて遅い」という「情報」は・・・
ウソの情報である
 とすら言えるのではないでしょうか? 本来、市側は交通行政を行う上で、まず限りある道路の空間を自動車に自由に浪費させている現在の交通体系の矛盾点をしっかりと把握する必要があります
→復習:パート1「クルマは「場所くい虫」だっ!」からどうぞ。
 そして、利用者・納税者の身になって、コストパフォーマンスや利用者にとっての利便性を第一に考え、市民に対して都市交通に関する正しい知識を普及させ、積極的な情報公開を行うことに努めるべきなのに、現状はどうでしょうか? 正しい情報無しには、市民は正しい判断ができないのです。
 そのためでしょうか、こちら仙台市内では「LRTとかいう電車は、遅くて人が運べなくて、そして急な坂に弱いから『東西線』にはダメなんだってね」などという「誤解」の声が聞かれることがあります。
 それに都営12号線や神戸市営海岸線のように「リニア地下鉄」でも建設費が一般地下鉄に負けないほど上がっているのに、それでも「リニア地下鉄は安くできるんだってね」などの「誤解」の声も聞かれることがあります。
 仙台市の都市整備の方向性を決定づけると言えるほど重要な「東西線計画」で、本来は正しい情報が公開されて市民に普及しているのが当然なのに、正しい情報がほとんど浸透していない現状っていったい正しいのでしょうか?
 正しいとすればその理由、正しくないとするならば今後どのように改善すべきとお考えなのか、市長さんご自身にお訊きすることにしましょう。
 今まで申し上げたことをまとめますと、コストパフォーマンス、利便性、「東西線」に求められる輸送力等各条件を満たしている、などの面から「東西線」にはLRT導入が最適であると考えられます。
 また、ルート案も大多数の人にとってかなり不便であることが考えられることから、ルート案もはじめから見直すべきと考えます。みなさんのご意見はいかがでしょう?
 これからの仙台市の方向性を決定する「東西線」計画において、正しい情報が市民に流されないまま計画が進み、もしこのまま「東西線」が今の案のまま実行されたら、次のようなシナリオが待っているのではないでしょうか?
     
  • 建設費が予想より大幅にかさむ。  
  • そのために運賃が高くなってしまう。「値上げ」は今の「南北線」にも及ぶ。  
  • オマケに「リニア地下鉄東西線」は乗り降りやルートが不便なので、利用者が予想より大幅に落ち込む。  
  • そのため、収支が悪化する。  
  • 仙台市の財政が「重症」である中、上の「新たな負担」が重くのしかかる。  
  • その結果仙台市の財政は破綻。その上「リニア地下鉄東西線」の効果が薄いということが世間に知れ渡る。
 そうなれば、極端な話、私たちの子や孫の世代から・・・
 「お父さんやおじいさん達の世代は、なんて重い負担を僕たちに押しつけてくれたんだ!!?」
 などと痛烈な批判を浴びることになるでしょう。そうなれば、ウソと言える情報が流されていると言える現状にほとんど手を打たず、情報公開・市民との議論・対話を積極的に進めていないと言える現状に関して・・・
仙台市政の最高責任者である仙台市長さんご自身の責任は免れ得ないと思います。
 「まちづくり提案制度」において、重要な政策に関する質問に対しては市長ご自身がご回答になっていると聞いております。それなのに、ご回答は市長さん御自身の御見解ではない、ということはどういうことなのでしょうか?
 それに、ご回答の内容文も一市民である私の疑問を解消するには遠く及ばないものと判断せざるを得ませんので、今回市側よりお送り下さったご回答につきましてはお受け取りできません。
 推進室長さん、お忙しい中わざわざご回答下さったのに誠に申し訳ありませんが、私へお送り下さいました御回答文を返却申し上げます。
 市長さんご自身が「東西線」計画を21世紀の仙台を支える重要な施策のひとつとお考えになっているのでしたら、以上各質問に対して市長さんご自身より明快で納得のいくご回答を下さるものと強く期待しております。
 これからの仙台のためにも、「仙台東西線」計画が「大プロジェクト」であるからこそ、情報公開を積極的に行い、市民から出される意見・提案に対して真摯に耳を傾け、合理的思考を持って政策に反映させることが不可欠なのではないでしょうか?
 市長さん、「釈迦に説法」のような発言で誠に恐縮なのですが、いかがでしょうか? このことは市長さんご自身が一番よくご存知のことと思います。市長さんご自身の真摯なご対応を期待しております。
(具体的質問文はこちらをクリック!)
 「東西線」計画に関する質問を、仙台市「まちづくり提案制度」(左)に則って市長さん宛にお送りしたが、その答え(中)は、残念ながら明快で納得の行くものと言うには遠く及ばない内容であると言わざるを得ない。しかも、実際に回答された方は市長さんではなく「推進室長」さんであった。

 この「まちづくり提案制度」は、重要案件については市長さんご自身がご回答になると聞いている。「市民と市政の最高責任者である市長の橋渡し」という重要な役割を果たして初めて、この制度の存在意義があると言えるのではないか? せっかくのこの制度を活かすためにも、市長ご自身の真摯なご対応を期待したい。

 「推進室長」さんにはせっかくご回答下さったところを誠に恐縮ですが、今回のご回答はお受け取りできませんのでお返ししますと共に、今まで挙げた質問を再度市長さんにお出しします。「配達証明」により無事市長さんまで届いたことが確認できました(右)。

 市長さんご自身が「東西線」計画を重要な施策のひとつと位置付けておいででしたら、今まで挙げた質問に対して今度こそは、明快で納得の行くご回答を下さることでしょう。宜しくお願い申し上げます。





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